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第46話 宿敵との邂逅

こちらは本日2話目です。

前話は12時の更新となります。

未読の方は是非ご覧になってください。

本能的に感じ取っていた。



――()()()()()()()



紛れもなく殺意と呼べる感情が心の奥底から湧き上がる。

自分でも理由がわからないほど、抑えきれない強烈な想いだ。



……ああ、いや違うな。

抱いてしまった理由がわかった。



木々の奥から現れたソレの様相が次第に明らかになっていく。


およそ自分など及びもしない巨大な体躯。

何者も阻まんとする極太の黒毛に覆われた肌。

刀身と見間違わんばかりの研ぎ澄まされた爪。

幾たびと屠ってきた敵を噛み砕いたであろう牙。


別にこいつのことを見たことがあるわけではない。

その存在も今ここで初めて知ったのだ。

この異世界に来てから遭遇したことのある魔物にはいなかった。



だが、分かる。

少なくともその存在が何に系しているのかは。



「よお、ここで会うとはな。」


おそらく俺の思い描いている相手とはまるっきりの別個体であろう。

相手からしてみれば、人違い、いや獣違いもいいところだ。

そもそも住んでいる世界が違うのだから。


「……テ、テンペストグリズリー…」


近くにいるはずのレインの呟く声が微かにだが聞き取れた。

いつもより声が遠く聞こえる。

どうやら自分の五感はほとんど奴と相対するためにリソースが費やされている……いや、今はそんなこと分析している暇はない。



熊。



正しくは熊型の魔物だ。

しかし、自分にとってはその差はさしたる問題ではない。


俺の平穏を打ち砕いた災い。

親しい者の命を奪い去った理不尽。

それらを体現した獣が今、目の前にいる。


八つ当たりに過ぎないことはわかってる。

だが、それでも、心から、心の底から屠りたいと願ってしまう。

敵討ちをしてしまいたいと願ってしまう。


ふっ、どうやら自分が思っていた以上にあの事件は俺の心に深く楔を穿ったらしい。


奴に対する怒りが限界以上まで高まり、我を忘れるどころか、逆に冷静になる。

落ち着くんだ。

頭に血が上っていては対処できない。

焦って良いことなんて1つもないんだから。



「レイン、リメ、下がっていてくれ。こいつは俺がやりたい、やらなきゃいけない奴なんだ。」


肩越しに一瞬だけ目をやる。

レインは複雑そうな顔をしながらも、頷き距離を取ってくれた。

リメは奴の退路を断つように背後へと回って距離を取った。

それで十分。


先ほどのレインの呟きから、相手がテンペストグリズリーということは理解できた。

正体が分かったからと言って油断はできない。

俺は改めて《情報分解》を行使する。



名前:名無し

種族:テンペストグリズリー

立場:[敵]一帯の魔物の主

能力:《暴威》《孤高》《空間攻撃》

   《領域感知》Lv7《身体強化》Lv8


《暴威》

  自身の格下相手に対して、威圧するスキル。

  威圧された対象は固有スキル及びスキルの使用

  が不可となる。

  また、対象の行動速度を制限する。


《孤高》

  自身以外からの能力干渉を阻害するスキル。

  有利・不利問わず、固有スキル及びスキルによ

  る、他者からの自身への能力干渉を無効化す

  る。

  無効化する程度は、自身との実力差が考慮さ

  れ、弱者ほど無効化するレベルは高くなる。


《空間攻撃》

  空間自体を1つの物体とみなし、攻撃対象とす

  るスキル。


《身体強化》

  戦闘時、恒常的に身体能力が上昇するスキル。

  魔法使用不可能時にも発動可能。



……正直言って強敵だ。

後半2つは高レベルではあるものの、恐るるに足りない。

《空間攻撃》に関してはよく分からない。

しかし、《暴威》と《孤高》に関しては要注意すべき能力だと言える。


仮に俺が持たざる者で奴より格下であった場合、徹底的に蹂躙されるであろう。

平和な日本出身なこともあり、戦闘の機会というものに恵まれなかった。

多少武道をかじってはいるものの、言葉通りかじった程度だ。

殺戮の権化たるテンペストグリズリーに勝てる道理などないのだ。


ほんと【分解】の権能を授けてもらっていて良かった。

ただ、格下であると《魔糸操作》が使用不可になるという事実は変わらない。

圧倒的に戦闘が困難になる。

攻撃手段が己の手のみに委ねられ、武器を持たなくてはならない。

そして、肝心の武器である異刀:不抗はリメが持っている。




口は災いの元とはよく言ったもの。

案の定だが、《魔糸操作》は使えなくなっていた。

攻撃手段がかなり制限された。

……これはかなり悔しいな…


ガアァァァァ!


気付いたら奴の前脚が振り下ろされるところだった。

先に装備した爪が陽の光を反射する。


これはまさか走馬灯か?

周りの流れも遅く感じてしまう。

いや、まさかそんなはずはない。

《分解結界》に包まれた俺を害することなどできるわけがない。


ブワッ。


な!

吹き飛ばされただと?

《分解結界》の効果で俺にかかる作用は無効化されるはずだ。

どうして攻撃が届かないはずの俺を飛ばせたんだ?


……まさか、俺を包む空気ごと飛ばしたのか。

直接攻撃を加えられない俺に

なんという戦闘センスだ。


「ご主人様!」


レインの叫び声が聞こえる。

そんな悲しそうな顔しないでくれよ。

今にも近寄って来そうな、レインを目で制す。


相手の追撃は終わらない。


攻撃の瞬間まで知覚することができない。

そして一方的にぶっ飛ばされる。

直接的なダメージはないものの、追い詰められている気がしてならない。

何か手を考えなくては…


俺は綿毛のように空間を漂いながら、頭を働かせる。



永遠とも一瞬とも思える思考の中、()()()が来た。


よし、思いついたぞ。

これならなんとかなるかもしれない。

そのためには仕込みが必要だな。


俺はすぐに行動に移す。

可能な限りその場から移動する。

そして身体を奴の正面ではなく、半身ずらした状態で攻撃を受ける。


うぐっ!

ダメージがないはずだが、やはりどうしても視覚的には痛ぶられているようにしか見えないな。

だが、これで吹き飛ばされる指向性はある程度絞れるぞ。


その後、何度も攻撃を受けながらも場を整える。

左右に後ろにステップを可能な限り踏む。

攻めの選択肢を捨て、ひたすら受けに徹する。


今か?

いやまだだ、まだ待ちだ。

そうだ、その調子だ。


そのまま俺の思い描いた筋書きに沿って動いてくれ…




待ちに待ったぞ。



これ以上ない完璧な位置取りが成立した。

俺は奴の姿が見えなくなった瞬間、動いた。

それまで決して踏み出さなかった前へ!


果たして奴が面をくらったのかは俺には分からない。

散々攻めあぐねていたのだ、獣畜生に理性があるとは思えない。

だが、それまでの戦闘で最長ともいえる距離を吹き飛ばされることになった。

その威力もその日ベストであろう、大きな土埃が巻き起こる。



どこかの独特なタッチの少年漫画で出て来たセリフが頭を過ぎる。


そうだ、これが俺の逃走経路だ!


俺は狙い通りの方向へと飛んでいく。

決して見当違いでもなく、寸分の狂いなく。


――俺の武器を持つリメの元へ。


「リメ、武器を寄越せ!」


言い終わるや否や、リメは《ストッカー》のスキルを使い、異刀:不抗を出現させる。

俺は一目散にそれを受け取り、抜刀する。

同時に《分解結界》を展開させる。


さあ、これで均衡は崩れるぞ。


俺は意気揚々と振り返り、奴に向き合おうとする。

先ほどの一撃のせいなのか、大きな土埃が立っていて視界は悪い。

戦闘に影響で、身体が逸って仕方がない。


リメに頼み、風魔法で風邪を起こす。




()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

次回更新日は9/5(土)です。


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