Different Sides(3)
こちらは本日2話目です。
前話は12時の更新となります。
未読の方は是非ご覧になってください。
◇幼馴染み・清水めぐりの状況
はっ、今起きてはならないことが起きた気がする。
まるで自分のモノになるはずだったモノが、他の人に奪われたような?
あるきっかけがない限りは100%手元に入るはずだった気がする。
「どうしたの、めぐり?そんな驚いたような表情して。」
「……なにかあったの?」
そう心配そうに声を掛けてきたのは、今組んでいるパーティーメンバーだ。
先に話しかけてきたのはネコ系獣人族である双剣士のシェーナ、もう1人がエルフである魔術師のクラリーである。
いけないいけない、とりあえず弁解しないとね。
「ううん、なんでもないの。心配してくれてありがとね。」
「そんな顔して何もないわけないだろう。クズみたいな男にでもナンパされたか?ほらお姉さんに話してみな。」
私が誤魔化そうとすると、それは叶わず先の2人ではない方向から声がかかる。
その声の主は、パーティーリーダーを務める、ヒューマンである剣士のアマザナだ。
回復術師の私を含めた4人が、今が組んでいるパーティーメンバーである。
ここ〈スウィーセファンド〉を中心に活躍しており、私以外のメンバーはBランクの冒険者だ。
ちなみに私はCランクだ。
冒険者ギルドに属して3ヶ月でこのランクとなると、かなりの出世頭らしい。
まあ運良く今のパーティーメンバーに巡り合えたおかげでトントン拍子でランクが上がっていった。
メンバー同士の仲も良く、非常に居心地が良い。
「ほんとに大丈夫よ。そこらへんの男に襲われるほど柔じゃないわ。」
「そうね。たしかにあんたを襲える男なんていないだろうしね。そんなことできたら、それこそ勇者だよ。」
そう、アマザナが言うと、他の2人も笑い出す。
リブネ様から貰ったネックレスにより、私に危害が加わることはないのだ。
まあ真実を話すわけにはいかないから、自分のスキルの一端だということにしている。
なんにせよ、私が襲われることがないことは彼女らも知っているのだ。
「そろそろ〈イルガシャーシ公国〉へ行こうと思う。」
皆で夕食を取っている中、アマザナがそう切り出してきた。
ついにこの時がやってきたんだ。
こちらの世界に来て、およそ2ヶ月ちょっと。
ようやく目的に向けて一歩前進できそう。
元々私がこのパーティーに入る前から、将来的には〈イルガシャーシ公国〉へ行くことを目標としていたらしい。
東の国境線沿いにある〈クロージャーゼン山脈〉での魔物討伐は冒険者の中での一種のステータスになっているからだ。
まあ私としては、その山脈向こうの〈不抜の樹海〉って所に用があるんだけどね。
本来ならもう少し時間がかかる予定であったが、私がパーティー加入したおかげで、パーティーとしてのレベルが上がり、行くことができる目処が立ったと聞いた。
勿論、そのアマザナの提案に対して、反対するパーティーメンバーはいなかった。
ふふっ、つい嬉しくて頬が緩んでしまう。
そんな顔をシェーナに見られてしまった。
「めぐりはかなり嬉しそうね。ああ、そうだったわね。想い人と会わないといけないんだもんね。」
「……ほんと彼の話が出ると、決まって惚けた顔になる。フラれていった男達が可哀想になるぐらいにトロットロ。」
「ハハハ、よほどいい男なんだろうな。あたい達にも紹介してよ。」
シェーナだけでなく、続け様にクラリー、アマザナからも弄られる。
丈がいい男であることなんて当たり前よ。
向こうの世界でもこっちの世界でも様々な異性と出会ったけど、彼よりいい人なんていなかった。
なんというか、男って下心丸見えなのよね。
その点、丈は変な目で見てこないから気が楽ね。
……まあ、恋愛対象として見られてない可能性もあるんだけど。
けど、男として紹介するのはダメ。
みんな綺麗だから取られちゃう気がする。
乙女的には絶対ノー。
止めないと延々と弄られちゃうから、そろそろ止めないと。
ほんと女の子は恋話が好きなんだから。
「はいはい、無事に向こうで活動できるようになったらね。」
「ああ、そうだな。諸々準備することも考えて、うーん、1ヶ月後にここを立つことにする。それまでにしっかりと備えておけよ。」
「それで大丈夫。」
「……問題ない。」
「ええ構わないわ。」
思考を切り替えたアマザナがそう言って話を締め括る。
特に問題もないので、その期限に肯定の意を示す。
……いや、これは早く私を弄り直したいだけね。
待っててね、丈。
きっともうすぐ会えるから。
お願いだから、他の所へなんて行かないでよね。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◇???の状況
「おお、まったく余に余計な手間をかけさせおって。直系の者でなければ、すでに頭と胴は永遠の離別となっておったぞ。」
なんとも感じの悪い、見知らぬ壮年の男性が声を掛けてくる。
全身がその存在に対して、嫌悪感を示す。
いや、その男性の正体を知らないわけではない。
知識、そして記憶としてある。
ここは〈アークザイ魔国連邦〉の首都にある難攻不落の堅城の1室。
そこで自分はベットに横にさせられている。
手元を見ると、痛々しい包帯が左手首に巻かれている。
「申し訳ございません、父上。今後このようなことがないよう、留意いたします。」
先ほど声を掛けてきた者は、この身体の父親にあたる男。
この〈アークザイ魔国連邦〉の国主である、ギャラム=ヴィルデイッドである。
そして、この身体はその三女にあたる。
セーエ=ヴィルデイッド、これが今の名。
この男の行いに絶望し命を絶った所を依代として、貰い受けたのだ。
だから、本当の自分の名前ではない。
狙っていたわけではないが、限りなく元の身体に近いようだ。
強いて言うなら、髪色が真っ白になってしまったことくらいか。
まあ、目的を達するに問題にはならないだろう。
身体を譲渡してもらうにあたり、元の持ち主から、彼女が輪廻の輪に戻るまでの間、様々なことを聞いた。
この世界のこと、これまでの人生、そして自死を選んだ原因。
どうやら、ギャラムという男が悪逆の限りを尽くす暴君であること。
自国や近隣の民はその圧政に苦しんでいること。
タチが悪いことに、圧倒的な武を誇り誰も対抗できず、従わざるを得ない状況であること。
そんな現状を嘆き、自ら…
ふーん。
これがそれを聞いての感想だ。
色々知識を得ることができたが、正直自分にとってはどれも些事だった。
元々無関係であったこともあり、実感もなくどうでも良い。
ここの民が苦しもうが、元の持ち主が辛かろうが自分の前では全て障害物でしかない。
自分はある目的のみを果たしたい。
そのため、他の全ては邪魔でしかない。
元姫様からの情報では、目的につながる情報を得ることは不可能だった。
確かに存在しているはずなのだが…
未だ名が出ていないと言うことは、敢えて目立たないように生活しているのか。
……たしかスローライフ願望があった気がする。
まあいい、とりあえず今は情報が必要だ。
幸い、身分にも能力にも恵まれている。
現状を利用するだけ利用して、時期を見て行方を晦ますことにしよう。
この地位を捨てることに躊躇いなどない。
目的を邪魔するなら、知り合いでも容赦するつもりは毛頭ない。
全ては、ある人に会うために。
世界を越えていってしまった、愛しい人に会うために。
ああ、早くこの目でその姿を見たい。
伝えられなかった想いを伝えたい。
――黄道千景、これが本当のあたしの名前。
次回更新日は8/30(日)です。
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