第4話 相応しくなるためには…
しばらくは更新日に2話投稿します。
1話目が12時に、2話目が18時に更新となります。
お読みになる際はご注意ください!
こちらは本日1話目です。
「まあ、これで一応仮だけど恋人同士になったんだ。本来の口調で話して欲しい。」
「あら、気付いていたのですね。私が喋り方を変えていたことに。」
「焦った時に崩れてたからね、そんな気がしたんだ。まぁ、だから素のままで接して欲しい。」
「ええ、そうですね。ん、んん、これでいいかしら?」
「じゃあ俺もこのまま普通に話ささせてもらっていいかな?女神様?」
「さっきからアインネスって本名で呼んでるでしょ?そのまま呼んでくれていいわよ。」
なんだ、余裕が戻ってきたのか。
慌ててる様子もなかなかグッときてたんだけどな。
そしたら…
「わかった。じゃあ、アインネ……いや、アイネっと呼んでいいかな?その方が恋人っぽいだろ?」
「え、ええ、いいわよ。それで構わないわ。私もジ、ジョーって呼ばせてもらうわ。」
耳まで赤くなって、ほんと可愛いなこの女神様は。
てか、俺名前名乗ったっけ?
「言いたいことはわかるわ、ジョー。心を読むついでにあなたのこれまでの記憶も読ませてもらったわ。それにしても、あなた優しいのね。」
そんな笑顔で言われると反応に困るな。
鼻先を指でかきながら、ニコニコ見てくるアイネを見返した。
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「じゃあ、ジョーには一応私に相応しい者になってもらうわ。」
なんとも言えない雰囲気が紛れた頃、アイネはそう言ってきた。
こう言ってくるってことは少しは脈アリかな?
「相応しい者って、具体的にどうするんだ?俺はもう望みの権利は失ったぞ?」
「ええ、確かにそうね。もう《この世界のモノ》は与えることはできないわ。だけど、私の伴侶候補はそんなもんじゃないわよ。」
ふむ、この世界のモノ、と来たか。
なにやら抜け道があるようだな。
流石にこのまま異世界に放り出されると、どんな環境かもわからんし、1年間生き残るのが絶望的に厳しくなるな。
「では、まず神の力である権能を与えます。」
ニッコリと微笑みながら、とんでもないことも可愛く宣ってきた。
「はっ?えっ?もう特別なスキルは得れないんじゃなかったの?まさか、アイネ自身の力を?」
「いえ、そんなことはできないわ。だってそれをすると《この世界のモノ》を与えたことになるじゃない?いくら私が主神でも、自ら課した契約を違えたら一発で他の世界の神も含め神々に討伐されるわ。」
「道理だな、けどじゃあどうするんだ?」
こればかりは神の常識というのだろうか?
まったくもって選択肢が思いつかない。
なんだ、いったいどうするっていうんだ?
すると、アイネはこれ以上ないくらい嬉しそうな顔で俺に告げてきた。
「わからないようね。答えは簡単よ、あなたを隕石で殺した神の権能を引き継ぐのよ。あれは地球の神のモノであって、この異世界のものではないもの。」
「え?けど、そんなことして許されるのか?地球の神のモノだったんだろう?少なくともそっちの世界のモノでないのか?」
「いえ、あの世界は発展しているから、同じような役割の神は多いわ。だから下級神程度の権能ならなくなっても問題にならないわ。それにあの神を懲らしめたのは私だもの。」
衝撃的事実、俺の恋人(仮)があの神をのしていたとは。
「そういう理由で、その神の権能を私は好きにできるの。私が新たな神を作って付与してもよかったのだけど、ジョーにその権能を与えるわ。」
「おお、なんか凄いの貰えるのか。いわゆるチートじゃないか。ちなみにその権能ってなに?」
「んーと、ちょっと待ってね。………【分解】とあるわ。これ強いの?」
これはなかなか好ましい結果だな。
まさか自分の特技に類するものとは…
上手く使って、アイネに相応しい者になろう。
「ねぇ、本当に大丈夫?そんなに自信に満ち溢れた顔をして。」
「ああ、任せろアイネ。お前に相応しい男になってやる。さあ、その権能を与えてくれ!」
そう言われて、アイネは半信半疑で権能を俺に付与してくれた。
一瞬痛みが走り、目の前が暗転したが、数拍後にはいつもと変わらない感じになった。
「あら、無事に馴染んだみたいね。……と、もう時間がないみたい!他のことも終わらせなくちゃ。」
何事かと見ると、自分の身体が先ほどよりも半透明になっている。
どうやらぼちぼちタイムリミットらしい。
「大丈夫だとは思うけど、一応心配だからコレをあげ…貸してあげる。基本的に万能だから、活用してみてね。ただし、1年後はキッチリ返してもらうからね。」
といってアイネは丸い水晶のようなものを渡してきた。
ふむ、ちょっと弾力があるが、かなり柔らかい。
だが、コレが何かはまったくもって分からん。
ただ役に立つアイテムであることは確かになのだろう。
それにしても、なんとも心配性な女神様だこと。
心配されて、ついつい嬉しくなってしまう。
「あ、異世界の言葉はある程度理解できるようになる《言語理解》を付与した上で、転移させるからそこは心配しなくてもいいわ。話せたり書いたり、この世界の標準語とかは理解できるようになるわよ。」
まあ、コレは大事なことであるな。
さすがに今からほぼ新しい言語形態を学ぶというのは無理がある。
基本転移特典だから、あの契約にも違反しないのであろう。
「最後に転移させる場所なんだけど、どこがいいとかある?王宮とか神殿とか転移したい場所があるならそこに送るわよ。それか、私が色々と都合の良い場所に転移させるっても手ね。」
右も左もわからない世界に行くのだ。
ここは世界を知っているアイネに頼るのが最適だな。
王宮とかに転移して勇者扱いされるのも悪くないかもしれんが、場合によっては面倒ごとに巻き込まれてしまう。
転移して利用されたり殺されたりしたら、たまったものではない。
というか人目のせいで、アイネに2人っきりで会えなくなってしまうなんてパターンが最悪だ。
「アイネに任せるよ。ただ希望を言えるなら、なるべく人目につきにくい場所にしてくれ。アイネに会う時に周りの目のせいで困ってしまう、なんてことにはなりたくない。」
「え、ええ、わかったわ。じゃあ私がしっかりと希望に沿って送り届けるわ。」
「ありがとう。助かるよ。」
いよいよ、自分の体の感覚が無になりそうだ。
これがゼロという状態なのか?
「では時間ね。また会いましょう。」
「ああ、色々とありがとな。名残惜しいが、また今度会おう。」
そして、俺の身体は光に包まれて、完全に霧散していった。
ひとり残ったアイネは、先ほどまで彼がいた場所に向けて呟いた。
「――ようこそ、私の世界ストラトラトスへ…」