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第36話 拠点案内

こちらは本日1話目です。

次話は18時の更新となります。

「……こ、これは本当にご主人様がお造りになられたのですか?」



高さ5mにもなる土壁とフバツハートチーク製の門を見上げながら、レインはそう呟いた。


朝早く移動し始めたのも幸いし、昼過ぎには到着することができた。

ほんと風魔法Lv8様々だな。

ざっと1日分時間を巻くことができるとはな。



海の方にも一応拠点らしきもの作ったし、いつまでもこちらのことを拠点拠点と言うわけにもいかなくなった。

そのため、昨夜アイネとの会話を繰り広げながら、この拠点の名称を決めた。



――〈安息の樹園〉、そう呼称することにした。



この命の幾つあっても足りない〈不抜の樹海〉の中の安息の地という意味が込められている。

少し大仰過ぎる気がしたが、女神様なアイネ曰く、これぐらいがちょうどいいらしい。

個人的にはだいぶ恥ずかしく、言われる度にもんどり打ちたいぐらいだ。

だが、レインとリメにも確認してみたところ、非常に好印象であったため、やはり異世界的には標準なのだろう。



そんないかつい名前になった拠点、もとい〈安息の樹園〉に着いたわけだが、未だレインが立ち竦んでしまっている。


「どうした?」


「いえ、話には聞いていたのですが、実際目の前にすると現実離れしている光景なもので…」


「なるほどね、けど残念ながらこれは現実なんだ。例えばだけど……ちょっと見ててね。」


そう言いながら、俺は近くに落ちていた石を拾い、掴み所がないほど滑らかな土壁に向かって放り投げた。


スパパパッ。


「という感じに、近づくものに対して、不可視の罠を放つ。効果の程は今見た通りで、俺の能力と同じく、対象を無抵抗のまま切り裂く。」


ちなみに、と言って門の方へも投石する。

すると、ぶつかると思いきや、()()()()()で扉に吸着し、一拍後下へ滑り落ちた。

《分解結界》が指向性すら無効化するため、扉にぶつかった瞬間、完全な0になるのだ。


終始顔が引き攣り気味のレインを横目に、俺は開門し中へと入った。

さあ数日ぶりの拠点だが、どうなっていることやら。

特にフバツソラヌンの生育具合が気になってしょうがない。




『お帰りなさいませ、主よ。これはまたお早いお帰りですな。大方想定外の事態があったのでしょう。』


「お察しの通りだよ。海は荒れまくって、海産物どころじゃなかった。塩は手に入れることができたから、とっとと帰ってきたというわけさ。」


真っ先にオリ爺がいるフバツソラヌン畑の方へと赴いた。

勿論、レインとリメも一緒にだ。

レインは初めてみるオリヴァントに動揺を隠せないみたいだ。


『これはまた珍しいこともあったようで……そちらの方を紹介していただけますかな?』


「ん、ああ、そうだな。こいつは鳥人族のレイン。訳ありの身で、俺が行った海岸に漂着していた子だ。レイン、こいつはオリヴァントのオリ爺。全面降伏してきた初の魔物で、今は俺の庇護下にいる。席は外すから、詳しい自己紹介は2人の間でしてくれ。」


そう言って、双方のことを掻い摘んで説明する。

俺がダラダラ話すより、偏見もなく、ありのままの人物像を伝えられるだろう。


レインの方も心の整理がついたのか、オリ爺に歩み寄り挨拶をし始めた。

一度離れておくことにするか。

リメを抱き抱え、俺はフバツソラヌンの方に歩を進めた。



だいぶ成長しているようだな。

所々花が咲いており、地中の実も太り出している頃か。


花の色は地球にあったジャガイモと違い、激しいショッキングパープルと、有毒性をこれでもかとアピールしている。

そして、地球のそれと比べ、2回りほど大きいように思える。


畑の少し外に目を向けてみると、そこには若干変色し始めた花が積み上がっていた。

どうやら、オリ爺が指示通り摘んでおいてくれたらしい。

探索に向かう前に説明しておいて良かった。

花をそのままにしておくと、栄養がそちらに奪われてしまうからな。


この量から察するに花が咲く時期の末期あたりか?

ぼちぼち茎葉が枯れ始めてくるだろう。

新じゃがの状態で収穫するのも1つの手ではあるが、保存方法も確立できてないし、リスクは負いたくない。

ちゃんと地上部が完全に枯れてから収穫にしよう。


おそらくアイネが来るかどうかのタイミングになりそうだな。



フバツソラヌンの状態を見終わり、レインとオリ爺の元へと戻る。

2人も話は終えて、待っていてくれたようだ。


「あれ?もう大丈夫なのか?」


「……い、いえ、非常に申し訳ないんですけど、わたくしとオリバー様では()()()()()()()()()のです。少なくともオリバー様の言葉をわたくしは認識できません。」


『念話が普通に当たり前になっておって、失念しておりましたな。これは上下関係があって、初めて成立するもの。レイン嬢の言葉は理解できたものの、儂からの発信はできなんだ。』


ああ、忘れてた。

俺もオリ爺と日頃から普通に会話してたから、これがデフォになってしまっていた。

普通は会話できないのね、理解したわ。


文字を教えて、筆談スタイルにでもしてもらおうかな。

いや、けど教えるのが大変か。

だって俺も、スキルがあるってだけで、きちんとこの世界の文字を理解しているわけではないからな。

元々意思疎通できない相手に教えるほど難儀なことはないか。

……《念話》のスキルオーブ見つかったらオリ爺に付与してあげよう。


そしてオリ爺は俺を介してレインと意思疎通を行った。

特に内容に問題はなかったらしく、無事に双方の確認は果たせたようだ。




その後、倉庫まで案内し、家以外の拠点の説明を終えた。

よくよく考えると、家と倉庫と畑しかないんだな。

〈安息の樹園〉のネーミングに大敗北を喫しているような気がする。

QOLをゆくゆくは上げていかなくてはな。


日も暮れてきたので、家へと案内し、ひとまず夕飯を済ませる。

野営の時は海塩を使った料理を作ったが、その中毒性が心配されることが理解できるほど美味かった。

一応夕飯は大事を取って、岩塩で仕上げた。

1日おきに使う塩を変えておけば、なんとかなるだろう。



「それでご主人様、わたくしはどちらで眠りにつけばよろしいのでしょうか?」


食後にサーモキプトバードの羽毛製ソファに座って一息ついていたら、皿洗いを終えたレインが聞いてきた。


家事作業は自分がやりたい、と進んで言ってきたので快くお願いした。

決して、その時の様子に気圧されたわけではない。

うん、そう、俺負けてない。


今作業を終えたこちらに来たレインは俺の斜め後ろに佇んでいる。


「ああ、そうだな。その問題があったな……ひとまず()()()()()寝てくれるかな?」


「…………ご主人様のお部屋ですか……わかりました、覚悟はできております。()()()()()()()()()()()が、勉学の方はしておりますのであまりご迷惑かけないで済むと思います……その、優しくしていただけると幸いです。」


あれ、勘違いされてない?

そんな意味で言ったんじゃないぞ。

だからやめてくれ、若干頬を赤らめながらあざといポーズを取るのは。

それは、俺に効く。


「ち、違う。そういう意味で言ったわけじゃない。ちゃんと近いうちにレインの家も建ててあげるから、それまでの間俺の部屋で寝泊まりしてくれ。

俺はこのままここにベッド置いて寝るか……」


「ダメです、メイドたるもの常にご主人様の傍にいるべきなのです!そして、どうぞご主人様はお部屋でお眠りください。もしそれを許可していただけないのなら、わたくしは夜営で結構でございます。」


早口で捲し立てられたな。

ただここで断ると、野営すると言ってキリがなさそうな気がするからな。

しょうがない、幸い俺の部屋は広い。

ベッドを離して、2つ置くか。


「わかった、なら俺も自分の部屋で寝るから、レインも室内で寝てくれ。とりあえず同じ部屋にベット2つ置くから、それで納得してくれ。」


「……しょうがないですね。本来であれば、同衾してまで身辺の護衛をするのが推奨されるのですが…」


え、そうなの?

異世界のメイドってそれが常識なの?



少しビクつきながら眠りについた俺であった。

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勇者?聖者?いいえ、時代は『○者』です!
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