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第31話 第一異世界人との遭遇

こちらは本日2話目です。

前話は12時の更新となります。

未読の方は是非ご覧になってください。

どこまでも澄み切った空、燦々と照りつける太陽、白く無限に広がる砂浜。

そして、エメラルドグリーンに輝く海。




なんてリゾート地みたいな海岸を期待していた俺がバカだったよ。

ものの見事に予想が外れた。


暗澹とした雲に覆われた曇天。

当然太陽のたの字も感じられない。

砂浜というよりも磯浜といった海辺。

極めつけは、大時化の青というより黒い海。


まあ昨日から天候に恵まれてるとはいえない感じだからな。

実際、川が大雨で増水してくれたおかげで、船が早く進んだというのもある。

リメが船を接岸してくれてなかったら、このまま異世界の海を漂流するハメになってだかもしれん。



ひとまず船から降りて、上陸する。

……どうやら魔物はいないようだな。

隙だらけの状態を醸し出してみたが、特に襲われるということはなかった。


リメに船を収納してもらいながら、今後のプランを建てる。


正直、今の状態の海だと海産物の確保は厳しいものがある。

天候が改善し、波が穏やかになるまで待つ必要がある。

ただ、この状態がデフォである可能性も存在する。

そうなった場合、今回の探索は撤退を余儀なくされてしまう。


……とりあえず3日間様子を見るか。



俺は拠点を建てるためのスペースを探す。

今いる場所は磯浜であるが故に、ゴツゴツとした岩が多く、安定した地盤がない。

仕方なく周囲を見回してみるも、この近辺一帯は所々に極狭の砂浜が点在するだけで、ほとんどが磯浜であった。


元々開けた土地に拠点を作ることを断念し、近くの森を《素材分解》で切り開き、小屋を建てる。

小屋は、洞窟探索の際に用いた小屋を建てたままリメが収納していたので、すぐ用意できた。

そして慣れた手つきで、《分解結界》と《認識分解》を施す。


慣れてない土地での戦闘は危険度が上がる。

そのため、戦わずに済むことに越したことはないのだ。


保険として、周囲の木々の間にミスリル糸を張り巡らし、そこにも同様の付与をする。

これである程度の脅威にも対抗できそうだな。



拠点も設営し終えたので、今日は海岸沿いの探索に乗り出す。

もしかしたら、異世界の物資が漂着しているかもしれないからだ。

あわよくば、栽培できそうなものがあるといいな。


……だいぶ風が強いな。

岩場を歩いていることもあり、時折風に煽られ転倒しそうになる。

魔物に襲撃されてもいいように準備はしたものの、コレばかりは予想してなかった。


視線を海の方へ向けると、沖合の方に渦巻く風が見えた。

おそらく竜巻だろうな。

それが自然発生のものかどうかは分からないが、進路的にこちらに来ることはなさそうだ。



ふと気づくと、前方の砂浜らしきところに蠢く人影らしきものが見えた。

音を出さないよう、慎重に動きながら、物陰へと隠れ様子を伺う。


自分の外見的特徴と一部を除き一致しているため、おそらく人種であろう。

一応念願の異世界人との初めての邂逅だ。

身体に複数の裂傷があり衰弱しているようだが、胸が動いているため生きていることを確認した。

ちなみに、胸が膨らんでいたから、女性である確率が高い。


しかし、()()()()()()()()()()()が1つある。



――あれは、翼か?



背中から大きな一対の翼が生えている。

かなり汚れているため、元の色の判別はつかないが、とても立派な者であるのは間違いない。


ふむ、異世界名物の天使というやつかな?

負傷し衰弱しているものの、どこか凛とした雰囲気を感じる。


とりあえず接触して、助けるかと動こうとした。



その時、海側から何体か影が浮かび上がった。

そのまま天使と思しき者へと襲いかかる。


「ちっ、あいつらかよ。」


思わず悪態を吐いてしまう。

そこには昨日戦闘済みの魔物、アクアスキッパーがいた。


さすがに守りながらの戦闘は厳しいか…

俺1人で戦闘することにして、リメに天使らしき者の護衛を頼む。


考えるよりも早く動き出し、奴らの注意をこちらに向ける。

物音を立てたところ、一気にこちらへ注意を向けてきやがった。

さすが、本能から他種族を嫌悪する魔物だ。


1番近い奴に《魔糸操作》が届く位置まで行き、能力を使い、一気に仕留める。

敢えて致命傷を避け、相手方が激昂するように仕向ける。


「こっちだ、カッパ野郎!」


俺は奴らが完全に俺に意識を向けたことを認めると、距離を取り始めた。

案の定、奴らは襲いかかってくる。


逃げながらも俺は、【分解】と《魔糸操作》を駆使しながら、何度も罠を仕掛ける。

不可視の必殺の罠。

1匹また1匹と罠にかかり、奴らは命を落としていく。


気づくと奴らは全て罠にかかり、壊滅していた。

俺は踵を返し、まだ息がある奴らにとどめを刺しながら、例の天使がいる砂浜まで戻る。



良かった、無事だったみたいだな。

よしよし、リメもご苦労様。


その謎の者は、やはり女性であった。

声をかけても反応がないことから、はっきりとした意識がないことがわかる。


近くに来たことで容姿がよくわかる。

白銀の長髪は汚れていながらも、淡く光っていた。

ん、前髪のあたりだけは赤い髪だ。

その綺麗な髪を退け、顔を見ると、その美しく整った顔が苦悶に歪んでいた。

どうやら傷が痛んでいるようだ。


俺は()()()()()()()()をリメに出してもらう。



[ポーショネルの果実]

  不抜の樹海にのみ存在するポーショネルという

  樹木から採取した果実。

  身体回復に優れた成分を多分に含み、上級ポー

  ションに匹敵する性能を誇る。

  ただし、この果実は数年ごとに1つしか実ら

  ず、とても希少価値が高い。

  地上では、この性能を未だ認知されていない。



洞窟探索へ向かう道中偶然見つけ採取したものだ。

とてもレアなものらしいが、人命より優先すべき者はない。


この特殊な果実を絞った液体をその者の口へと流し込む。

幸いにも素直に飲んでもらえ、口移しする必要はなかった。

……ほんの少しだけ残念だ。



粗かった呼吸も落ち着いてきたので、俺はその身体を抱き抱え、臨時拠点へと戻る。

リメにもう1つのベッドを出してもらい、その子を横たわらせる。


覚醒した時に、見慣れない場所だからとパニックを起こされても困るので、拠点の外に出て待機する。

まあ時間はあるから、探索は明日以降にでもやろう。


その後、夕飯を済ませるも未だ目を醒さない。

だいぶ疲労感が溜まっていたのだろうか?

見ず知らずの男女が同じ室内で寝ることは憚られたので、リメに見張りを頼んで、俺は外で眠りについた。




翌日目を覚ますと、脇に見慣れないものがあった。いや、白銀の髪の平伏した人がいた。


どうやら昨日の子が回復したらしい。

…けど、なんか頭下げられるのは恥ずかしいな。

しかも、女性。


「あ、あの、頭を上げてください。」


とりあえず話をしたいと思ったので、頭を上げてもらう。

すると、綺麗に整った顔が次第に露わとなった。

昨日も思ったが、美人だな。

アイネを見たことがなかったら、速攻で堕ちてた。


「無事で何よりです。回復薬も効いたみたいで安心しました。あ、俺の名前は…」


待て、異世界ものあるあるで家名、つまり苗字は貴族など地位の高い者しか持ってないパターンが多い。

ここは()()()()()()()()()()()()()


「――丈と申します。失礼ですが、あなたのことを教えていただきますか?」


すると、その子は口を開いた。

見た目に反せず、澄み渡るような凛とした声色であった。




「――はい、わたくしは〈レンテンド王国〉ジェンナー公爵家筆頭メイド、レイン=クラリオネスと申します。いえ、失礼致しました。()()()()()()です。」

次回更新日は明日です。お見逃しなく…


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勇者?聖者?いいえ、時代は『○者』です!
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