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第30話 処女航海

こちらは本日1話目です。

次話は18時の更新となります。

サァー。


水の流れる音がする。

それは当たり前か、船の上にいれば聞こえてきてもなんら不思議ではない。


俺は今、川下りの真っ最中だ。

ただ基本的に気を抜いて、ボーッとしてるだけ。


こんなに気が抜けてるのは、暇なのもあるが別の理由もある。

それは昨夜アイネとの帰り際の会話中に飛び出た発言が原因だ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


昨夜の密会にて



「--ああ、私、6ヶ月後に地上に来るから!」


「え?まじ?で、でも確か最初会った時、1年はお試し期間って言ってた気が…」


「な、なによ嫌なの?」


「いや、そんなことはまったくもって、これっぽっちもない。で、でも、あ、あれ?」


「……だってもう()()()()()()()()()もの。早く一緒に暮らしたいわ。あくまでも1年というのはお試し期間で、その期間が早まらないとは一言も言ってないわよ。」


「そ、そうなのか?けど、地上に降りるには1年は時間がかかるとか言ってた気がするんだが…」


「あ、あれは、そう言えばあ、諦めてくれると思ったのよ。確かに時間はかかるけど、実は頑張れば半年もあれば十分なの。」


「そ、そうだったのか…まあ何にせよ、俺も早く一緒に生活したいよ。」


「ふふ、最初から素直に喜んでればいいのに。じゃあそういうことだからよろしくね!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ほんと突然だったな。

しかし、何で最後に言うのかね。

まあだいぶ嬉しそうだったから、全然構わないんだけどな。

俺も1年のお試し期間とか生殺しもいいところだったし。


ちなみに昨日は、前回と同じようなスケジュールで過ごした。

手料理も満足して食べてくれた。

ああ、あと()()()()でしたよ。


そんないいニュースを聞けたので、ただ今全力で緩んでいる。

なるべく顔には出さないように頑張っているんだけど、どうしてもにやけ面を晒してしまう。

一緒にいるリメがなんか呆れた感じを醸し出しているが、それは無視だ。



……ボチボチやる気を出すかな。

帆を張り、リメに風魔法で推進力を生み出してもらう。

水面を滑走するように進んでいく。


それにしても思った以上に魔物とかの襲撃を受けないな。

いや、全く無いというわけではなく、何度か襲われている。

その度全力で緩んでいて役立たずな俺を尻目に、リメが魔法で撃退してくれていた。

だか、それでも想定していたよりも少ない。


どうやら、南方面の海へと流れ出ているこの川沿いは、魔物が比較的少ないエリアのようだ。

もしかしたらその分一体当たりの強さが、洞窟のあった西の山方面に比べ高いのかもしれない。

しかし、竜種に匹敵すると言われたリメからしてみれば有象無象となんら変わらんのだろうな。

……リメを怒らせないよう気をつけよう。


結局その日は何事もなく過ぎていった。




翌日、前日と打って変わって、かなり強い雨に見舞われた。

時折、雷鳴が鳴り響く。

……これは船室内にいた方が良さそうだな。


昨日から使っているが、船室内は結構過ごしやすい。

立ったりすることはできないものの、横になるには十分な広さを持っている。

しかも、床や壁から聞こえて来る流水音が絶妙で深い眠りに誘われ……



どうやら寝てしまっていたようだ。

どのくらい時間が経過したのであろう、すっかり雨音は聞こえなくなっていた。

船室から出て甲板に上がろうとすーー!


甲板に気配を感じたため、一度船室に戻る。

チラッとしか確認していないため断言はできないが、5、6匹ほどの魔物は見えた。

それ以上いるかもしれない。


俺は細心の注意を払いながら、船室から甲板に出るための板を少しだけ持ち上げながら状況を確認する。

あれは……若干既視感があるが、初めて見る魔物だな。

すぐさま《情報分解》を使用する。



[アクアスキッパー]

  河川に生息し、河川に寄ってきた生物を集団で

  囲み襲うカッパ型の魔物。

  《流体移動》のスキルにより、水の中であれば

  一瞬で移動することが可能であり、対水中にお

  いて無類の機動力を誇る。

  知能も低くなく、独自の言語体制も持つ。

  しかし、他種族に対して排他的であり、本能レ

  ベルで嫌悪し襲撃する。

  頭部についている皿が、高級品として貴族に愛

  用されている。



……カッパかよ!

一瞬友好関係築けるかもと期待したが、どうやら望み薄のようだ。

自衛のために殲滅するしか無い。


奴らは合わせて7匹いて、どうやらこちらに気付いないようだ。

バレないように1匹ずつ()()していくか…


まず1番船の後方にいた奴をターゲットにした。

他の奴らの目線が離れた瞬間、そいつの首を《魔糸操作》を使い、刈り取る。

声を出させないように声帯があるでろう位置を狙う。


スパッ。バシャン。


……上手くいった。

首を刈り取られたカッパもどきは、あえなく絶命した。

ついでに事態を残さないように、川へ落とすのも忘れない。

何かが飛び込む音がしても、元々泳ぐ種族なら水中へ戻っただけだと勘違いしてくれるだろう。


その調子で同じ手法を用いて、2体ほど倒した。

しかし、奴らも異常に気づいたのか、皆で固まり背中を預け合い始めた。

……()()()


ここまでくれば隠れる必要はない。

すかさず俺は密集した奴らに対してミスリル糸の波状攻撃をしかける。

《分解結界》と《認識分解》が付与された攻撃になす術なく奴らは細切れになった。


ふぅ、()()()()()

予め相手がいることを認識できた良かった。

万が一気づかずに甲板に出ても、リメもいることだし、なんとかなったのかもしれない。

しかし、絶対大丈夫だったとは明言できない。

それこそ、俺の戦闘技術なんてまだまだひよっこだからな。



その後、報復なのか、幾度となく複数のアクアスキッパーに襲撃されたが、しっかりと待ち構えることで対応することができた。


戦闘による疲労が蓄積したのか、その日は泥のように眠りについた。




翌日、目が覚めると、船が止まっているようだった。

どうやら、リメが浅瀬に上陸させたらしい。


外に出ると、目の前には大海が広がっていた。

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