第28話 拠点の防壁
こちらは本日1話目です。
次話は18時の更新となります。
畑も作ったことだし、もう少し拠点の保護に力を入れようと思った。
たまにだか、木々を抜けて拠点のある土地に迷い込む魔物が現れる。
それが敵対しないでくれればいいのだが、今のところ100%殺意を向けて敵視してくる。
素材になるのはいいのだが、正直敷地内に侵入されるのは気分的によろしくない。
とりあえず拠点を何かで囲ってしまおう。
一番良いのはいわゆる城壁のような登り降りできるような壁だ。
万が一魔物の大群が襲ってきたとしても、多少は持ち堪えることができる。
しかし、そんな大層なものを作る余裕はない。
リメの《生み出すモノ》が現在であればあっという間に済む話であったが、それはもう過去のこと。
自力でレンガなりを作ってそれを一々積み重ねていく必要がある。
……考えただけでも恐ろしい。
いったい何年計画になるんだ?
同じ理屈で木の柵で囲うという案も厳しいか。
城壁を建設するよりもよほど手間はかからんだろう。
ただそれでも早急に解決したいという思いとは裏腹に、時間がかかってしまう。
一応加工済みの素材もなくはないが、おそらく囲う距離的に足りなくなるだろう。
木の板も縛る為のミスリルの糸もだ。
ミスリルの糸はまたどこかにいるクモ型の魔物でも倒せば、素材として類似品が手に入るだろう。
しかし木材に関しては、一から加工する必要が出てくる。
とてもじゃないが状況的には好ましくない。
そうなると消去法で土壁になる。
最もシンプルな防衛システムの1つだ。
ただただ土を盛り上げ高くするだけ、単純作業だけでできる。
地球上でイメージしやすいのは河川の堤防である。
現状を鑑みるに、これ以上ない方法だろう。
しかし、弱点もやはり存在する。
強度によっては簡単に突破されたり崩壊させられる恐れもある。
また水などに浸食されると、安易に綻びが生まれ始める。
コンクリートなどで護岸工事されていない川が鉄砲水に襲われたら、どうなるか想像に難くない。
まあここは異世界である。
地球上にはない技術が使えるので、土壁の抱える問題は問題になり得ない。
ほんとファンタジー様々だわ。
さっそく建設していくことにする。
まずリメに土魔法を使ってもらい、拠点を土壁で覆ってもらう。
オリ爺にも頼んでもいいんだが、生憎畑から自力で動けない為、リメだけにやってもらうことにした。
囲う際に、真南の場所を1箇所だけ開けてもらった。
壁の高さは自由にできるらしいので、およそ5mの長さにしてもらう。
この高さになれば、よほどのことがない限りは越えられることはないだろう。
……フラグにならないといいな。
地球で同じことをやれば、重力の問題で傾斜をつけなければならず、防衛の意味をなさなかったであろう。
しかし、さすがは魔法というべきか。
垂直に立っているはずなのに、そのままでも崩れる心配はなさそうだ。
だいぶ大掛かりであったからか、リメも流石に疲弊してる。
お疲れ様、ありがとな。
俺はリメを両手で抱き抱えながら次の作業に移る。
俺は例の如く、耐久度を跳ね上げるために《分解結界》を土壁に付与していく。
この作業は慣れたものである。
外側からの攻撃の想定は勿論、今回は内側にも気を使う。
中の土が万が一でも崩れないように《分解結界》の弾く力で壁の状態を維持するためだ。
だいぶ精神的に疲労したが万遍なく施し終わった。
最低限の備えを1日で終えることができた。
しかし、まだ未完成だ。
残りは明日以降にしよう。
次の日、俺はフバツハートチークを使って、両開き式の門作りを始めた。
場所は昨日壁を建てなかった南の一画だ。
リメに魔法で補助をしてもらいながら、組み立てていく。
そう言えば、《生み出すモノ》が使えなくなってから、初めての物作りな気がする。
尤も前々から門を作ることは考えていたので、パーツだけは出来上がっている。
アイネが来る日に慌てて準備だけはしておいた。
それを《魔糸操作》を使いながら、ミスリル糸で固定し、補強する。
ミスリル糸って細くて見え辛いから、側からだと木々が組み合わさっただけのように見える。
無事に完成したので、リメの魔法を用いながら、土壁へと設置していく。
支柱と完成していた土壁の間の隙間も、土魔法でしっかりと埋める。
……土がグネグネ動いていて、なんか気持ち悪いと思ってしまった。
無事門を建設し終えた。
ここまで努力して建てた感がするのは、異世界に来てから初めてだ。
心の奥底から込み上げてくるものを感じた。
最後に【分解】の権能を使うことも忘れない。
土壁以上にしっかりと幾重にも《分解結界》を施す。
これで安全。
……けどなんか物足りない。
罠とか防衛機能の1つでも仕掛けておいた方が良さそうだな。
土壁の外側の地面に、均等にフバツハートチークで作った3mぐらいの杭を打ち込んでいく。
しっかりと地面に埋めたので、高さは2mぐらいになった。
そこへミスリル糸を引っ掛けるようにして、ぐるっと土壁の外を1周する。
同じことを何度か繰り返し、10本ほどになった。
そう、今作ろうとしているのは、なんちゃって鉄条網だ。
いや、ミスリル糸で作るからミスリル条網か。
壁に接近してきたり飛び越えようとした魔物などをこれで仕留める。
ピン、と貼り終わったミスリル糸と杭に全力で俺の能力を付与していく。
《分解結界》は勿論のこと、今回は視認困難な罠にするため《認識分解》も施す。
付与し終えると、普通の視界では何も存在していないようになった。
まあ《情報分解》で見れば一発で何かあると分かるんだがな。
普通の《鑑定》とかでは察知できんだろう。
試しに近くに落ちていた木の棒を土壁に向かって投げてみた。
スパパパッ。
ものの見事に切断されて、地面に落ちた。
……ははっ、我ながら恐ろしいと思う。
視認困難で回避不能な必殺の罠、か。
侵入者にはこの上なく厄介で、非常に頼もしいな。
…………
今気づいたが、壁とか建てずこれだけで良かったんじゃないか?
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