第18話 単純作業と死闘
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こちらは本日1話目です。
次話は18時の更新となります。
移動中は、リメに強化魔法を付与してもらった。
のんびり行くとどれだけ時間がかかるか分からないからだ。
洞窟までの道中は様々な種類の魔物と遭遇した。
しかし、そこまで強い魔物は生息していないのか、俺とリメは特に苦戦することはなかった。
具体的にはこんな奴らがいた。
[セイバーマンティス]
前脚が異常に発達し、カットラスのように鋭利
になったカマキリ型の魔物。
複眼であるため、基本的に死角はなく、不意打
ちを狙うことは困難を極める。
さらには、飛行することはできないものの、油
断すると《縮地》というスキルで一瞬で近接戦
闘範囲に侵入される。
前脚はそのまま武器にされることもあり、無加
工のままでも武器ランクC+となる。
[ハガネノサル]
体毛が鋼の針金によって構成されていて、高い
防御力を持つサル型の魔物。
知能レベルは他の魔物よりも高く、集団での戦
闘に加え、簡易的な罠を作成することもある。
一時的であるが《頑強》というスキルで耐久性
を何倍にも高めることができる。
体毛は戦闘後に強度が落ちるため、素材目的で
狩ることはお勧めされていない。
[ホウテンチョウ]
飛行時に自身の周辺に空気層を何層も展開し、
外敵から身を守るチョウ型の魔物。
意図的に各層間を真空状態にすることも可能
で、それによる窒息で狩りをすることも多々あ
る。
また《毒粉》のスキルによる鱗粉を上空からば
ら撒き、無差別に地上の生物を弱体化させる。
線が細い身体をしているため、鱗粉ぐらいしか
素材にできるものはない。
[スライミーテン]
スライムのような膜で流線型のボディを覆って
いるイタチ型の魔物。
主食であるスライムが膜に影響を及ぼし、能力
持ちのスライムを捕食した場合、膜にその能力
が宿ることがある。
死亡すると、身体を覆ってる膜がそのままスラ
イムになり栄養として吸収されてしまうという
残念な一面を持つ。
そのため、素材は残らない。
[ウォタールリザード]
身体から一定時間離れるとトリモチのように変
質する粘膜で全身を覆ったトカゲ型の魔物。
《粘化》のスキルにより、粘膜の性質を自由に
操作できるため、戦闘リズムを保つのが困難で
ある。
また、時間が経てば経つほど、粘膜は周囲に巻
かれていくため、状況が悪化していき継戦能力
を維持できなくなる。
変質した粘膜は罠として重宝され、ハガネノサ
ルも利用することがある。
[グーニーフロッグ]
甘い香りのする麻痺毒が全身の皮膚から染み出
してくるカエル型の魔物。
毒により簡単に他の魔物を捕食できるため、体
重が増加し普段の移動速度は極めて遅い。
しかし戦闘時は、潤滑油のような麻痺毒と、自
身の持つ《跳躍》というスキルにより、弾丸の
ような体当たりをしてくる。
だいたいが物理的に硬い魔物もしくは滑って斬りにくい魔物であった。
それを俺は無抵抗の木刀で両断し、リメは魔法でワンパンしていた。
まあ時折俺は斬りつける場所をミスって何度か真っ二つになっている魔物に攻撃されたけたけど。
そして洞窟に着く直前に、出会いたかった魔物と遭遇することができた。
そう、クモ型の魔物である。
[ミスリルウィップスパイダー]
ミスリルでできた糸を拠点近くに張り巡らせ、
獲物を狩りまくるクモ型の魔物。
開かずの門番という別名を持つほど、その巣に
入り込んで生存できる確率は低い。
場合によっては、その糸を用いて、遠距離から
斬撃もしくは捕縛しようとするほど好戦的。
採取できた魔法伝導率の高いミスリル糸は希少
価値が高く、およそ10mの長さで金貨数十枚は
くだらないとされている。
さすが異名持ちというか、それまで討伐してきた魔物とは一線を画す強さであった。
それ故に、苦戦を余儀なくされた。
まず様子見をかねて、リメに魔法で攻撃してもらった。
どれだけ継戦能力があるか測る狙いがあった。
しかし、リメの放った魔法は突然霧散した。
その後同様に何度か魔法を放つも、結果は全て同じく途中で魔法が掻き消えた。
いったいなんなんだ?
その原因探ると、特殊な糸であった。
魔力伝導率の高いミスリルの糸によって、遠距離から魔法を斬り、無効化していたのだ。
やばい、とその瞬間判断した。
リメが初めて戦闘に参加できないことが分かったからだ。
ひとまずリメに離れていてもらうように指示する。
そして、深呼吸をして気持ちを入れ替える。
先ほどまでの調子に乗っていた自分はもういない。
ただ眼前と敵を屠るのみ、と敵に向き合う。
身体に改めて《分解結界》を発動していく。
持っている木刀も忘れずに隙間なく覆い尽くす。
これで負傷することはないだろう。
そして、可能な限り素早く相手に接近し、木刀を叩き込もうとした。
しかし、相手は巣の中を縦横無尽に駆け回る。
こちらから近づくことは叶わず、防戦一方に陥る。
「……何かないのか?」
思わず言葉が口から溢れる。
必死に戦いながら、頭をフル回転させ策を練ろうとする。
しかし、無情にも時間だけが過ぎていく。
《分解結界》のおかげでダメージを負うことはない。
しかし、一方的に攻撃されているため、疲労感が蓄積していく。
……このままだとジリ貧だ。
思わずヤケクソ気味に木刀を振るった。
すると、ブツッと大きめの千切れると音が聞こえた。
手元を見ると、明らかに他のものより太い糸が切断され、絡まっていた。
そして足元にはかなりの量の細い糸が散乱していた。
もしや、と思い周辺を見渡す。
所々に同様に周囲より太い糸があった。
これが敵の機動力の源ではないのか?
明らかに先ほどよりこちらに接近して来なくなっている。
そこで勝ち筋が見えた。
太い糸を切断していくだけの簡単な作業だ。
あれほどまでに苦戦していた割にタネがわかると拍子抜けである。
全ての太い糸を斬り、動きが緩慢になった相手を一思いに一刀両断する。
スパッと心地よい音と共に相手の身体が真っ二つに分かれる。
そして、念願の糸を手に入れるべく《素材分解》を発動する。
すると、目の前に現れたのは魔石と目的の糸だけではなかった。
明らかに自然物ではなさそうな結晶が1つ落ちていた。
――後に知ることになる、初めてのスキルオーブであった。
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