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Different Sides(7)

バレンタインネタで番外編書こうかと思いましたが、登場キャラがまだまだ少ないので断念。

普通のDifferent Sidesの更新にしました。


来年はきっと書きます。

◇幼馴染み・めぐりの様子



やっとここまで来たと思うと感慨深い。

自分の目の前に聳え立つ山脈を見上げる。



つい先日、設けられていた入山規制が完全に解除された。


ギルドで聞いた話によると、敵対している隣国のスパイが壊滅状態に陥ったため、だとか。

しかも、それがここ〈ウラフヴォスト〉のすぐ側であったことだって言うから驚き。

戦闘跡地に行ったけど、かなりの激戦が繰り広げられたってことが目に見えてわかる具合だった。


ちなみに街の側で戦いが起きたってことは、当初から知っていた。

当事者がパーティーメンバーの1人だったからだ。


その日、知り合いに会えず一度戻ってきた彼女は、諦めきれずに再び飛び出して行った。

探すと言っても、この街の規模だ。

何万とまでは言わないものの、何千人も暮らしている。

彼女を除いたパーティーメンバーとの話では、他人の空似だったんだろうという結論に至った。


そして、しばらくすると地を這うような重低音が聞こえてきた。

地面が揺れているような揺れていないような不思議な感じ。

だが、街の眼前に広がる〈クロージャーゼン山脈〉に住むドラゴン種の唸り声と考えてられている、似たような現象に度々見舞われている。

そのため、その時は何かが起きているとは全く思わなかった。


それから暫くして、彼女は戻ってきた。

その姿は行きの清潔な感じから打って変わっていた。

砂埃で汚れ、所々裂傷が見られる、明らかに戦闘後のような格好で戻ってきた。


当然そのような状態をスルーできるわけがない。

私はすぐさま回復魔法を使って治療して、事情を聞いた。


詳しいことははぐらかされたものの、どうやら探し人と会うことはできたようだ。

ただ残念ながら短時間の間しか一緒にいることができず、もうその人はこの街を発ったらしい。

慰めようかと思ったが、それが口に出ることはなかった。


「……〈不抜の樹海〉にいるって言ってた。だから早く行かなきゃ…」


彼女のこの一言。

この一言で私の心が大きく揺れた。


〈不抜の樹海〉は生きることさえ難しいと言われる、私が行きたくてしょうがない場所。

そんな場所にいるという、クラリーの探し人。

直感的に丈とその探し人は何かしらの繋がりがある気がした。


さらに驚くべきは、探し人の同伴者の存在。

彼女が言うことには、探し人は本人含めて3人でいたらしい。

それで、そのうちの1人が男性。

しかも、成人して少ししか経っていなさそうな顔立ちで、黒髪。

丈である気がしてならなかった。



今は既に11月の末。

一応まだ時分で言うならば、夏である。


だが、これから入るは山脈地帯。

可能な限り標高の低い地を選びながら進むとしても、富士山ぐらいの高さは平気での登る可能性があるみたい。

直線距離でも最短100kmとか言っていたから、高低差や戦闘を考慮するとどれだけ時間がかかるか分からない。

早めに踏破しきらないと平地より一足早い冬を迎えてしまってもおかしくはない。


神様からもらったアクセサリーのおかげで、私は余程のことがない限りは安全が担保されている。

だが、他の皆はそんな保障などない。

今まで以上に命という物が重くのしかかってくる。


来年まで待って余裕を持たせた方がいいかな、なんて何度も考えた。

自分のエゴが醜く思えたこともある。



けど、それ以上に丈に会いたいの。



地球で事故に巻き込まれたことで、いつ別れを迎えてしまってもおかしくないことを知った。

このままずっと続けばいいなんて考えが幻想なのだと思い知らされた。


だから、もう私は後悔したくない。

伝えたいことは伝えられるうちに伝えたいんだ。



――丈、待っててね。きっと伝えるから。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


◇〈レンテンド王国〉王城の執務室の様子



「ーー首尾はどうだ?」


「はっ、と、滞りなく作業に移っております。」



俺の偉大なる王の一歩となる、〈不抜の樹海〉への進出。

その先駆けとなる、山脈開通工事を開始したのだ。


無論、山脈のど真ん中に道を作ろうなどするなど愚かなことだと理解している。

そんなことをすれば、山脈中の魔物に襲撃されること間違いなしだ。

当然、作業云々など言えるわけがなくなる。


だから、俺は海岸沿いに街道を作るように指示を出したのだ。

海岸沿いにすれば、海側も注意はしないといけないものの、基本的に魔物の警戒は片側の山脈側のみで済む。

また、資材等の派遣も陸路と海路の2つの手段が確保できる。

順調に作業が進むこと間違いなしだ。


……それにしても、フィアナの確保が上手くいかなかったことが腹立たしくてしょうがないな。


まさか、エルグランドのやつが失敗るとは思わなんだ。

彼奴曰く、少なくとも手こずった相手はSランク冒険者程度のレベルはあるらしい。

そこに"ならざる王女"ときたもんだ。

厳しい状況であったと言われたら納得せざるを得ないな。


まあ良い。

山脈を切り開いた暁には、樹海に潜伏しているフィアナを捕らえ、配下の者の前で慰み者にでもしてやろう。

その後は、俺の奴隷にするなり、兵士の性処理をさせるなりいくらでも使い道はある。

くっくっくっ、今から楽しみでしょうがない。



「……た、ただ一点だけ…」


俺の愉快な気分をぶち壊すように、口を挟んでくる役人。

先ほどからビクビク震えて正直目障りだ。

俺を恐れているのだろうか?

不敬にも程があろう。


まあ聞くだけ話は聞いてやるか。

俺は偉大な王になるのだからな。


「赦す、申せ。」


「……はっ、作業に従事する者が不足しているようで、人員不足が否めない、どの報告が上がっております。」


馬鹿らしい嘆願に思わず目眩がした。

態々俺に言うまでもないことだろう。

やることなど既に決まっているのだから。


「国中から一定以上の罪人を全て現地に送れ。工事完了の暁には恩赦を与えるとでも言ってな。あとは奴隷商から一定人数の成人男性奴隷を徴収しろ。どうせ売り残りやすい部類だろう。我が王国の為に貢献してもらうとしよう。」


「……お、恐れながら、罪人はともかく、奴隷商から非難を受けると思われますが?」


「ちっ、差し出さない場合は己を奴隷として前線に送るとでも言って脅せ。それぐらい自分で考えろ。」


「は、はいー!」


使えないな此奴は。

何故このような奴が役人などやっているのだ。

話すだけ、いや、同じ部屋にいるのだけでも不快に思える。


一種のスキル持ちとかの才能なのではないかと思えてくる。

言うなれば《イラつき誘発》と言ったところか。


「話はこれで終わりか?」


「はっ、こ、これで終わりでございます。」


なら、何故ここにいるのだ。

無能にも程があろう。


「用がないのなら、さっさと去れ。時間の無駄だ。」


「は、はいー!」


まるで命の危機であったところで見逃されたかのように、執務室から飛び出ていった。

彼奴のせいで埃が待ってしまったではないか。

百害あって一利なし、最早迷うまでもないな。



役人が完全に去ったことを見計り、俺は背後で直立不動で佇む書記官に指示を出す。


「おい、彼奴も前線に作業員として送ってくれ。そのまま送ると煩そうだから、適当な罪を被せて奴隷にでもしておけ。」


「御意。」


これでいいんだよ。

俺は偉大な王で、全てが正しいのだから。

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勇者?聖者?いいえ、時代は『○者』です!
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