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第113話 地下空洞の問題

地下空洞とは、かなりロマンあふれる展開だな。


地球には、地下空洞を題材として書かれている作品が存在している。

ジュール=ヴェルヌの『地底旅行』なんてまさにそれだ。

当然そう言った作品を読んだこともあるし、憧れを抱いたこともあった。


そんな憧れを抱いた事物を体験することができる。

そう考えると、自然とテンションが高くなってしまう。


俺は報告に来たゴブリン達を置き去りにせんばかりに急いでトンネル建設地へと足を向けた。


地下道も既に2桁kmに到達しているため、己が足で向かうとなるとかなり時間がかかる。

また、移動時の事故等を避けるために、トンネル内での魔法を使った移動は禁止している。

そのため、移動手段は《ゴブリニア》で騎獣として使われているシックスレッグスだ。


逸る気持ちが抑えきれない。

俺は遠足の前日に眠れなくて、当日の移動中に爆睡してしまうタイプだ。


そんなテンションが上がっている俺を見てなのか、一緒にいるレインやゴブリン達の俺を見る目が若干生暖かった。

俺はその視線に耐えながら、目的地へと向かった。



しばらくすると、トンネル内でゴブリン達の集団と行き止まりが見えてきた。

よくよく見ると側面の方にポッカリと開いた穴が見える。

なるほど、ここがどうやら目的地らしい。


話を聞いた感じだと進行方向にちょうど地下空洞があると解釈していた。

しかし、どうやら側面で偶然発見できた形のようだ。


もしこれが進行方向と完全に一致していた展開だと困ったことになっていた。

トンネルの底面と地下空洞の底面が同じ高さで開通していたらいいものの、もし高さに違いがあったらその高さを補う分の調整が必要になっていた。

また、周囲からの危険を排除するために、壁面や天井部をわざわざ新設する必要まで出ていた。

側面で接触したことは、運が良かったと言っていいだろう。


俺はシックスレッグスから降りて、地下空洞に通ずる穴の前に移動する。


穴の中は暗く、光源になるような物質は存在していないようだ。

そして、穴の中は特にこれといった音も聞こえてこない。

ということは、この地下空洞は他に何処かへ通じるような道はなく、完全に隔離された空間である可能性が高い。

もし何処かへと通じていたら、風とかで音が聞こえてくるはずだからな。


俺は中を見てみたいという欲に駆られた。

かと言ってトンネル工事を止めるわけにもいかない。

そのため、少人数での探索に乗り出すことにした。


俺、レイン、存在は隠したままのリメ。

そして、地下空間内ということである程度の《土魔法》スキル持ちのハイゴブリン達3人だ。

ハイゴブリン達はなるべくグループごとの戦力に違いが出ないように考慮した上で選別した。

背が高い順に、ヴィーリ、ヴェー、ヴォーダンという名前だ。



リメに指示を出して、光源を火魔法で確保する。

本来密室空間で火魔法を使うのは、酸素濃度の問題で避けるべき行為に該当する。

しかし、高レベルの火魔法になると、酸素関係なく火を起こせるという物理を超越した現象を起こせるようになるのだ。


その分集中力が求められ、いかに《コア魔術大全・上級》というスキルを持つリメでさえ、同時並行で魔法を使うことは難しくなる。

そのため、今回のリメは基本光源担当だ。


明るさが確保できたというとで視界が広がった。

必然的に目の前の景色が見えてきたのだ。


底面はどうやら少しトンネルより低いらしく、3m弱降りることになった。

天井も思ったよりも高く、20mはありそうだ。


そして……


「ここは……いったい…」


『『『…………』』』


レインの口から溢した疑問が聞こえてくる。

ハイゴブリン達は呆気に取られてなにも言えないみたいだ。


しかし、俺もまた声が出なかった。

だが、それは見たこともないものを見たから、驚きで声が出なかったのではなかった。

見慣れたようなもの、それをここで見たことによる驚きのあまりに声が出てこなくなった。


「……鉄筋コンクリート製のビルだと?」


思ってしまったことが遅れて口から出てきた。


そう、明らかに地球で見たことのあるビルが並び立っているのだ。

しかも、ビルだけではない。

大きな倉庫らしき建造物や天井近くまでそびえ立つパラボラアンテナらしきものまである。


俺は近くにあった鉄筋コンクリート製のビルらしき建造物に近寄る。

その後ろを警戒する足取りでレインが、さらにその後ろをびくびくと震えながらハイゴブリン達が追ってくる。


「何かの建造物のようですね。それもなかなか強固な建材が使われているように思えます。」


「ああ、そうだな。少なくともこの世界の文明レベルからしたら数段階上だろうな。」


「……なるほど、そういうことですか。入り口はどちらの方になりますか?」


どうやらレインは俺の言い方で目の前にある物体がどのような存在であるか気付いたようだ。

俺が理解していそうなことを理解したのだろう。

闇雲に入り口を探そうとせずに、俺の知識に委ねてきた。

正しい判断だな。


「おそらくこちらだろう。」


違う面に行くと予想通りに入り口があった。

今更ながら気づいたのだが、床はアスファルトであろうか、きっちりと整地されていた。

その地面情報と建造物の造形から入り口を探すのは容易いことであった。


そんな入り口は扉などがなく剥き出しの状態であった。

正しくは、剥き出しの状態になってしまっていた。

自動扉であったのか、足元には何かガラスのようなものが結晶が見て取れる。

思い出してみれば、窓もあったが塞いでいたものはなかったな。


もし、誰かしらの知的生命体がいるのなら何かしらの措置は行っているだろう。

しかし、何もなされていない。

そのことから導かれることは……


「誰かいますか?」


俺の問いかけに帰ってくることはない。

レインに目配せするも、首を横に振るだけ。

《領域感知》をしても何の反応もないということだ。


そのまま、足を進め建造物の中に入っていく。


ヒタヒタヒタ…


反響音だけが聞こえてくる屋内。


近くにある部屋は扉越しに見るだけに留める。

なぜなら、基本的に先ほどから同じ内観の部屋しかないからだ。

中はビジネスホテルの一室のような様子だった。

木製のベッドフレームに机や椅子、簡易的なチェストといった没個性的な品揃えだ。


勿論そのような部屋だけではなかった。

その建造物は4階建てであった。

1階の奥には浴場らしき場所や食堂らしき場所、3階には広めの談話室らしき部屋もあった。


どうやらここは何かしらの宿泊施設らしい。

そして、今まで見たものから察するに、ビジネスホテルのようなホテルではなく、宿舎、寮のようなものであることが分かった。

ホテルという割にはあまりにも質素であったからだ。



結局、これといった成果はなく、今日の探索を終えた。

呼び出された時間が昼過ぎと、既に今は日も沈み夜になっているだろうからだ。

無闇に動くことは避けなければならぬ。


それにしても気になったのは、あっておかしくない物が何もなかったということだ。


地下空洞にあった建造物は明らかに地球の2000年代に匹敵するレベルに到達していた。

舗装された地面、鉄筋コンクリート、状況証拠に基づいた推測になるがガラス製の入り口などがいい例だ。


しかし、そのレベルに見合った道具などが一切見られなかったのだ。


個室にあったチェストは2段程度の高さで明らかに何か上において利用するための物に見えた。

個人的には、テレビ台であるように感じた。

だが、肝心のテレビらしき物の残骸はこれっぽっちも見当たらなかった。


食堂らしき場所もそうだ。

カセットコンロが置かれていたであろう場所もあったのだが、そのスペースだけ綺麗に何もなかった。

炊飯器や冷蔵庫といったような物を当然なかった。


ここまで来るとあまりにも意図的に見えてきてしまう。

偶然にしては出来すぎている気がしてならない。

まさにミステリーだ。



何とも不思議な空間である。

だが、まだまだ見れる場所は多い。


明日は本腰を入れて、探索してみないとな。

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