第11話 拠点作成③〜どうする?基礎工事〜
こちらは本日1話目です。
次話は18時の更新となります。
整地し終えた大地に俺は立っている。
見事なまでに切り株や雑草1本も残ってはいない。
その様子を丘の上から見下ろしていると、考えごとが口から漏れた。
「さて、どんなものにしようかな…」
言うまでもないが、住居についてである。
俺はこの地がどのような場所か断片の断片しか知らない。
そんな場所で野宿するなどいくら金を積まれたとしてもやりたくない。
それに今は晴れているもののいつ天気が崩れるか知らない。
そもそもどんな天気があるかも知らない。
なんてったってここは世にも恐ろしき〈不抜の樹海〉なのだ。
考えただけでもいくつか思いついた。
降るスピードが音速を超えているのかもしれない…
雨粒が自分の身長以上かもしれない…
人体にのみ有効な猛毒の雨が降るのかもしれない…
剣などの武器が降り注ぐのかもしれない…
…考えるだけ恐ろしい。
早く気休めでいいから住居を建ててしまいたい。
「しかし、基礎が問題なんだよな。」
そう、作ろうにも基礎を作れる見通しが立たないのだ。
今すぐ用意できる素材は、残念なことに植物関連とあと普通の土ぐらいしかない。
勿論一縷の望みをその植物にかけて《情報分解》し直した。
しかし、案の定基礎を作れそうなものがなかった。
異世界植物頑張ってくれよ…
やはりコンクリートが欲しい。
しかし、コンクリートを作ろうにもセメントが作れない。
石灰石がどこにあるかわからないからな。
やはり山の方まで行かないと厳しいか?
いや、山でも採取できる保証はない。
ここでご都合主義主人公なら、地面を掘り返せば出てくるパターンなんだろうな。
とりあえずワンチャン信じて、やってみたよ。
出るわけないだろ、ごくごく普通の地面だったよ。
くっ、このままだと地面に直接建てるしかないのか。
しかしそんなことをすれば、早いうちに湿気により腐敗してしまってすぐに建て直す必要が出てくる。
なにかいい方法はないか…
基礎工事しなくても湿気を軽減する方法がなにかあるはずだ。
思い出せ、コンクリートによる基礎という技術が広まる前に使われていた方法を。
……………ダメだ、思いつかねない。
現代ではほとんど基礎工事が前提条件である。
うちの家も木造住宅とはいえ、建ててからまだ20年経ってないって言ってたからな。
ノーマルな現代建築だった。
ん、待てよ。
そういえば昔亡くなった祖父母の家に行った時、床下で何かが柱を支えているのを見たな。
あの家はだいぶ古くからあって、長いことを維持されてきたって言ってたっけ?
じゃあ、あれで支えればいいのか。
えーと、名前は確か……束石、そう束石だ!
現代ではコンクリートで作られてるらしいが、昔は石で作られてたって聞いたことがあるぞ。
よし、その線で行こう。
そして、俺はリメと急いで川の方へ向かった。
幸いにも河原で良さげの岩を見つけた。
もうこれ以上ないぴったりなものを。
ご都合主義万歳!
《情報分解》を使った時に若干の抵抗がかかったけど、その結果を見たら納得できた。
[アンチディスダイト]
クロージャーゼン山脈を構成する地層の一部か
ら剥離して流れてきた岩。
別名不壊石とも呼ばれ、物理攻撃は勿論、通常
魔法はおろか固有スキルの能力ですら弾き飛ば
すほどの高い耐久性を誇る。
その実、地上には本来存在しない物質で構成さ
れており、星外から飛来した隕石である。
もはや束石にするにはもったいないレベルだ。
スキルを弾くとかどんな鉱物だよ。
……しっかりコンクリート作れたら、絶対に回収して別なものに利用しよう。
あと、他人にバレないようにしなければな。
説明文的に《鑑定》レベルなら弾いてくれそうだし大丈夫だと信じよう。
そして今、夕日が大地を赤く染めている。
目の前には必死になって作った束石が用意されている。
大分時間がかかってしまった。
この事態を招いたことには理由がある。
まず、岩をリメの《ストッカー》で貯蔵してもらおうと考えた。
しかし、ものの見事にその能力が弾かれ、回収することは叶わなかった。
想像以上の性能に面食らった。
固有スキルすら効かないとなるとこの岩に使えそうな能力は2つしかない。
1つは確実に通用するであろう俺の【分解】である。
権能であるし、岩の正体がアンチディスダイトだとわかったのはこれのおかげだ。
そして、問題なのがリメの《生み出すモノ》であった。
分類的には固有スキルに過ぎないが、これは借り受けているとはいえアイネの権能の一部なのだ。
通用する可能性があったのだ。
俺の能力でなら確かに小分けにするぐらいなら可能であろう。
しかし今求められていることは、この岩を束石の形に加工することである。
したがってリメの能力が使えないと意味がないのだ。
結果から述べると、《生み出すモノ》は通用した。
目の前にドンドンと束石ができていく。
形も全て均一で現代の大量生産システムの商品に負けないレベルで一緒だ。
それが両手両足の指じゃあ数えられないほどに。
……これ丘まで持って行かないとだよな。
そう思いリメと協力して何度も行き来して束石を運搬したのだ。
その結果が目の前にある奴らだ。
そして、素材として使えるものは木材。
これらで何を建てるのか?
決まっている、ログハウスだ。
束石の運搬中になにを建てるのか考えていたが、これが最も理想的な建築となった。
高床式倉庫みたいな感じでもいいかなと思ったが、いろいろ考えてた結果ログハウスの方に軍配が上がった。
……別に憧れとかあったわけではない。
某北欧系の雑貨店に絶対行ってやろうとか考えてなかったし。
ちょっと将来的に自分の家をその工法で建てようとかこっそりノートに落書きとかしてないし。
あわよくば北欧に移住してしまおうと税金とかについて調べてなかったし。
まあ時間もないし、急いで建ててしまおう。
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