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第112話 地中の問題

日曜日の投稿、少し遅れてしまいました。

想像通りに掘り進めやすい土質であった。

所謂石で構成されている礫層がちょうどトンネルの上部にあるだけで、大きな岩石などが出てくることもなかった。


掘り方は分業制を用いていて、分担は土魔法の有無によって仕分けた。

土魔法を使える者を、進行方向の壁を崩す担当とその際に出た土を圧縮加工する者、壁面が崩れないように強化する者に分けた。

一方の土魔法を使えない者は、圧縮された土をトンネル外に運び出す係、作業場や入口を警備する者、他の担当をフォローする者で分けた。


さらに、それらを4グループずつに分けて、1日あたりに3グループが8時間交代で作業を行うようにした。

余った1グループは休息日にしてもらっている。

十分な休息を取らされることで労働の質を維持するためにその形を取った。


一見すると順調に思えるが、それは間違いであることが分かった。

実際始めてみると、いくつかの問題点が浮かび上がってきた。



1つ目が、トンネル内の酸素濃度の問題だ。


この問題は正直掘り始める前に気付くべきであったと反省している。


俺は当初作業する側にいたため、なかなか気づかなかった。

まあ今こそ思い返してみれば、息苦しかったと感じなくもないが、その時は作業による熱気によるものかと誤認していた。

魔法で作業しているはずなのに、派手な動きがついていて無駄に動いていたからな。


で、加工した土を搬出する班の1人が息苦しいことに気づいて進言してきたのだ。

そこでようやく俺はその問題に思い至ったのだ。


開削予定の地下道の長さは200km。

仮に両端の外から新鮮な空気が流入したとしても、中間地点の100km付近まで届くとは到底考えられなかった。

掘っている最中に無事でも、実際使う時に必ず弊害になってしまうだろう。


現実的にこの問題を解決しようとした時に、最も現実的なのはおそらく空気穴を随所に掘ることだろう。

何もせずともというのは言い過ぎになるが、最も容易に新鮮な空気でトンネル内を満たせるだろう。

しかし、この方法を用いると、地下道の安全性が心配になってくる。

強度云々の問題ではなく、単純に空気穴を通して地下道に侵入してくる魔物が現れる可能性がある。

トンネル内は安全であること、これは何よりも優先すべきのことだ。


そうなってくると、不用意な穴は開けられなくなり、トンネル内のみで解決する必要が出てくる。

効率的に一定の酸素をトンネル内に満たすとなると、今取れる方法は1つしかなかった。


俺の持っている権能の能力の1つ、《素材分解》だ。


厳密には差異があるが、呼吸すると、生物は酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する。

酸素と二酸化炭素の違いは何かとなると、炭素原子が含まれているか否かの違いがある。

つまり、二酸化炭素に含まれる炭素原子だけ消してしまえば、酸素になるのだ。

その効果で指定できる除外対象に空気中の炭素を


俺の《素材分解》は要らないものを除外して消し去るという副次的効果がある。

だから、その対象に空気中に含まれる炭素原子を指定することによって酸素を生み出せるのだ。

本来は化学反応を用いたりしないといけないだろうが、そこはファンタジーな能力なため、無問題。


一応他にも、同じ効果を持つ物を魔道具なりで作るという手もあるが、リソース不足な現状でその手は選べない。


対策は思いついたが、これを実行するにも問題はある。

この作業は俺にしかできないということだ。

このままだと俺は四六時中勤務に当たらないといけなくなってしまう。

それは是非とも断りたい。


ということで、脳内議論を重ねた末に結論を出した。

数kmごとに少し広めの空間を設けるという方法だ。

俺はその空間の天井部辺りを中心に《素材分解》を付与する。

そして、その空気を風魔法が使えるゴブリン達にふいごのように作業場に流入してもらうという手法だ。


こうすることで、俺は常に前線に滞在する必要はなくなる。

また、広めの空間も避難時等に一休みする際に活用できるため、デッドスペースにはならずに済む。

割と有効な手立てとなった。



他の問題としてあげられたのは、地中に既に存在している土砂以外の存在だ。

具体的に言うと、木の根が該当する。


幸運なことに俺達が掘り進めている地層に地下水は存在していなかった。

これは水魔法持ちのゴブリンに確認してもらっている。

だが、俺達よりも深い場所に地下水は存在しているようだ。


そのため、樹木を中心とする植物は水分を求め、地中深くまで根を伸ばしている。

その結果である根が天井部から床まで貫き、俺達の行手を阻んでいるのだ。


植物も好きでここに生えているわけではなく、先代までが行った生存競争の結果でそこに存在しているに過ぎない。

根が生えていることは罪ではないのだ。

そのため、焼き切ったりして傷つけると言う方法は憚られた。


しかし、この件に関して、予め用意だけはしておいた。

いつか使う可能性があるとは考えていたが、その登場が序盤から来てしまっただけだ。


俺はリメに合図を出して、《ストッカー》から()()()()を出してもらった。

しなびた向日葵の種のような形だ。

俺の側にいた、監督役を務めるスールト達は、その種を見て首を傾げていた。


思わず苦笑してしまう。

まあ、一見するとただの植物の種だからな。


俺は近くにあった進行を阻む根の1本に近寄り、その種を密着させた。

追加でそこに少量の水をかける。


すると、どうだろうか。

その種からいくつもの蔓が伸びて、根の周囲に巻きつき始め、直径5cmほどの球体ができた。

そして、さらに少しの時間が経つと、その物体がついた根と同じ樹木のものであろう根がブルブルと震えたかと思うと、壁面の方へとめり込んでいった。

謎の球体は壁面に半分だけ表面に出たままであるが、他の根は完全に埋まって見えなくなった。


その一部始終を見ていた俺以外のギャラリーは口をポカンと開けて驚愕していた。

一応仕組みを教えたはずのレインでさえ、目を見開いていた。


俺はそのリアクションに満足して、ネタバラシをし始めた。


俺が取り出した種は、オリ爺の能力の1つにあった《宿木》の種、その進化版だ。

《宿木》を通して、樹木の支配権を一時的に奪取して、無理矢理《宿木》の種の持っていた魔力を使って動かしたのだ。


これまでのオリ爺の種だと、所謂生モノに近く、寄生前は持って3日の代物であった。

しかし、俺とオリ爺のトライアンドエラーの末に、ドライシードのような状態にすることにより、その使用期間を長期化することに成功した。

始めてからまだ1ヶ月も経っていない研究だが、《情報分解》で得られる情報によると、今の段階でも半年程度は持つと書かれていた。


ちなみに植物に取り憑いてしまえば、依代の植物が枯れない限りほぼ半永久的に《宿木》は使える。

そのため、地下道内の監視カメラ的な役割も期待できるのだ。


これは使い方さえ覚えれば誰にでもできるので、他のゴブリン達にも支給していく。

渡す対象はレベルはともかく《アイテムボックス》などの収納系スキル持ちだ。

元々長期遠征する軍ということもあり、レベルは低いが《アイテムボックス》持ちは両手の指以上いた。




その後、小さな問題は起こったりしたものの、順調に作業は進んでいった。

俺も最初こそは寝る時以外ほとんど常に作業している最前線の方に出張っていたが、ある程度経つと、次第に滞在時間を減らしていった。


トンネル作業にいない時は《ゴブリニア》の中で鍛錬したり農業指導したりと割と精力的に活動した。

ゴブリン達とも打ち解け、《ゴブリニア》滞在をエンジョイしていた。


そんなある日、イベントが発生した。



『ボス、進行先ニナニカ空洞ガ見ツカリマシタ!』

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