第111話 施工の問題
お久しぶりです!
ここ最近新作の方が書いていて楽しく力を入れてしまい、こちらの投稿が遅れてしまっていました。
今後、毎週日曜日の週一の更新は守っていきたいので、是非とも本作もよろしくお願い致します。
新作の方もどうかよろしくお願いします!
勇者?聖者?いいえ、時代は『◯者』です!
https://ncode.syosetu.com/n5294gq/
『『『ボス、オハヨウゴザイマス!』』』
「「「グ、グギャー!」」」
「お、おはよう。」
一晩開けて、俺はゴブリニア南方面軍の駐屯場所に足を踏み入れた。
あちこちから競わんばかりに挨拶が飛んでくる。
その勢いに押され、思わず挨拶を返してしまう。
どうしてこうなった…
昨日入ってしまうと危惧した戦闘パートは呆気なく終わった。
ディオーンから聞いていた話以上に彼らは弱かったのだ。
軍団メンバーの多くが土魔法を使うのだが、《土魔法》のスキルレベル関係なしに足元を崩すか土の塊を投げつけてくるのパターンでしか使ってこなかった。
そして、土魔法を使った後は何も考えていないのか、ひたすら突撃を繰り返してきた。
想像以上の脳筋集団だ。
戦っている俺が思わず相手のことを心配してしまった。
こんなので本当に南方面で戦えたのかと。
でも考えてみれば、南方面軍ということでその数は多い。
眷属として召喚されている通常ゴブリン種達を含めると万単位だ。
数の暴力で買ってきたんだろうな…
あと、ゴブリニアから見て南となると、いつも俺が海に出る時に使う川がある。
そこで戦って大変だと感じたのは、アクアスキッパーキングと遭遇した時の戦いだけだ。
他は人数的に大丈夫か、という不安を抱いた程度だ。
本当に南は〈不抜の樹海〉としては弱いんだろうな。
そんなわけで俺は襲ってきたゴブリン達をボコボコにした。
それはもうものの見事に、こっちが申し訳なさを感じるレベルで。
総大将であるスールトに至っては最初に飛び込んできて早々にリタイヤしやがった。
大将って最後までドンと構えているもんじゃないのか?
痛めつける程度に抑えたので、復活するのに時間はそこまでかからなかった。
……と思っている。
いや、ちょっと長いなとか思ったり思わなかったりもしたが。
とにかく彼らは復活するや否や、こちらに頭を下げて許しを乞うてきた。
そこには計算したものなどなく、真っ直ぐな感情が宿っていた。
調子がいいというか単純というか、まあ純粋な奴らなんだろうな。
純粋であるが故に強さはともかく魔物に負けなしだった自分達に酔ってたんだろうな。
そんな彼らは自分達に勝った俺の意思を無碍にすることはなく、俺の提案ににべもなく賛同してきた。
ボスの命令は絶対とのこと。
俺は彼らのボスになった覚えはないんだけどな。
そんな物理交渉のあった翌日、俺が顔を出すと既に彼らは見事な整列をして待機していた。
脳筋であるが故のタフさなのか、昨日の戦闘がまるでなかったかのような溌剌さだ。
正直、俺は疲労感が取れきってないのだが…
何はともあれ作業開始だ。
まず入り口予定地の方へと移動する。
双方の防衛関係上、拠点から適切な距離離れているところに設置する。
近すぎると、万が一相手方が裏切った場合に、簡単に侵入経路として襲撃に利用できてしまうという問題がある。
遠すぎると、避難経路として使う時に移動時間が延び、その間に狙われてしまう可能性があり地下通路の存在価値がなくなってしまうという問題がある。
そのため、拠点外の徒歩数分以内という立地に落ち着いたのだ。
幸いにも、両拠点を結ぶ直線上に目印となりうる地形があった。
今回はそこを利用させてもらう。
〈ゴブリニア〉側の入り口となるのは、ちょっとした崖の壁面だ。
当然だが、山脈側にある我らが〈安息の樹園〉よりこちらは低地にある。
距離があるにしても、何もない平地で繋がっていて、そこで地下通路を作ろうとしようものならしばらくの間地下に潜るまで歩く必要が出てくる。
それもキロ単位でだ。
そうなると、最早目的を果たす地下通路ではなくなる。
だが、実際は〈ゴブリニア〉の手前あたりで急激に海抜が低くなっている。
おかげで最初から地下に経路を作ることができるのだ。
まあその分〈安息の樹園〉側で地上に上がるための階段をしっかり作らないといけないんだけどな。
そうこうしているうちに目的地に着いた。
下見は既に昨日物理交渉する前に済んでいる。
脆そうな地層はなく、かといってトンネル状に掘りにくいわけでもない。
適度に木々に囲まれているので、周りからは見つけられにくい。
まさに絶好の立地といったところだ。
大地を掘り進めるトンネルの工法は大きく分けて3つ存在する。
今回はその中でも昔からある最もポピュラーな方法である山岳工法を利用する。
トンネル壁面に支えをつけながら掘り進め、最終的に壁を固めるという工法だ。
これを選んだのは正直言って消去法だ。
選ばなかった1つである、金属製のシールドという筒を用いて掘り進めるというシールド工法。
これは単純にシールドを作る術がないことに尽きる。
流石に専門的分野すぎて、シールドの構造なんて知らない。
もう1つの、最初に地面を掘り返した上でトンネルを作り埋め直すという開削工法。
これもまたリソース不足が理由だ。
この作り方だと天井を別途プレートなりで用意する必要が出てくる。
トンネルは200kmの距離を作るのだ。
したがってプレートを用意すると、途方もない量が必要になってしまう。
現実的に考えて、選択肢から除外した。
ということで、基本的に山岳工法で行うという結論に至った。
途中いくつかの河川があるため、そこは別途違う工法で行う必要がある。
それはその時までに準備をしておかなくては。
俺は山岳工法をヒャッハー軍団もといゴブリニア南方面軍に説明した。
見本がないので、かなり拙い説明になってしまった気がする。
これは失敗か?
彼らの頭上に浮かぶははてなマークの嵐か、と思ったが現実は違った。
なんと俺の言わんとしたことを理解している者が多数派であった。
中には左右と確認し合う者や、理解が追いついていない者に説明してあげたりしている者までいた。
いい意味での純粋がどうやら理解力にも現れているようで、まるでスポンジの如く吸収していた。
その吸収スピード実に羨ましい。
『ボス、皆ガ理解デキヤシタゼ!』
南方面軍総大将であったスールトが皆の認識を確認した上で報告してきた。
なんか本当に従順になったよな…
もし尻尾でも生えてようものならブンブンと音が聞こえてきそうだ。
善は急げ、早速作業に移るとしよう。
最初は景気付けに派手に行こう!
(リメ、頼む。)
リメに指示を出しながら、俺は右手を前に出す。
リメは魔法で俺の前に大きな火の玉を形成させていく。
側から見ると俺が火魔法を使っているように見えるだろうな。
そう言えば、アイツらは俺のことをボスとか呼んでたな。
せっかくだからその流れに乗ってやろう。
「さあ野郎共、トンネル掘りスタートだ!」
俺は掛け声と共に、リメと動きをシンクロさせて崖の壁面に火の玉を放った。
ドォォォォォーン!
火球が壁にぶつかると同時にゴブリン軍団から歓声が上がる。
『『『『ウォォォォー!』』』』
「「「「グギャー!」」」」
ドキドキワクワクのトンネル掘りが今始まる。
次回更新日は1/24(日)です。
良かったら評価の方よろしくお願い致します。
ブックマーク、感想、レビュー等頂けたら励みになりますので、併せてよろしくお願い致します。




