第110話 説得の問題
すみません、雪かきしてたら更新するの遅れてしまいました…
新作の方も是非読んでみてください!
勇者?聖者?いいえ、時代は『勝者』です!
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早速工事に取り掛かろう、と思ったが、中旬に入っていたことを思い出して考え直した。
勿論、アイネとのお家デートに備えるためだ。
私的理由すぎると言われても構わない。
アイネとの時間は何よりも優先する事項なのだから。
その間、来てもらった〈ゴブリニア〉の使節団には滞在し続けてもらうことになった。
帰国してもらうの手ではあったが、南方面軍の説得のため俺も赴く必要があり、共に行くのがベターであると判断した。
また、その道程で、地下道建設する地上部を確認するのもいいなと思い至ったこともある。
ただただ待っていてもらうのは申し訳なく思ったため、いくらかの技術伝授を行うことになった。
まあ元より技術支援はするつもりだったから、ちょうど良い。
1つが、建築技術。
〈ゴブリニア〉の街中で見たが、彼らの家は竪穴式住居だったからな。
気温変化への対応力に乏しく、毎年冬に少なくない凍死者を出しているらしい。
ログハウス調の住居に変わるだけで、劇的に住環境を改善できることになるだろう。
使節団の高官レベルにはいなかったものの、兵士の中に《建築》スキル持ちが何人かいた。
今まで自分達がスキルを持っていることを知らなかったのか、皆がLv1という有様だった。
同じく《建築》スキル持ちで、我らが拠点の誇る建築家であるケングに指導を任せた。
次に、農業技術。
そもそも農耕文化が花開いてすらいないレベルだ。
身分制といったように社会レベルが高い割に、明らかに文明レベルが低すぎる。
毎秋前半から中盤である、13月から15月にかけて冬支度と称し、大量の魔物の狩猟を行うらしい。
しかし、満足な量を確保することは難しいようで、毎冬に凍死者以上の餓死者が生じてしまっているのが現状のようだ。
さらに、総じてエネルギー摂取量が減ってしまうため、春先に魔物との戦闘で満足に戦えなくなり、死傷してしまうケースが多くなるらしい。
農業に関しては、時期的な問題があり、手取り足取り実際に経験させるということが厳しい。
そのため、大まかなフバツソラヌンの育て方と日々の管理方法だけ学んでもらうことにした。
指導担当は、騎士達の妻である女性陣が主体になるのだが、どうしてもゴブリン相手という心理的忌避感があるようなので、騎士達にも同行してもらうことにした。
最後が、魔道具技術だ。
これは教える予定はなかったものの、魔道具を実際に見た高官クラスのハイゴブリン達が強い興味を示したため、急遽行うことになった。
この分野に関しては、技術の高さが他2人の比にならないため、短期間で教え込むことは、最初から断念している。
魔板に回路を書き込む作業は、最低でも数ヶ月は要するんだとか。
そのため、《魔道具作成》のスキル持ちをはじめとする高官クラス数人が使節団の帰国に同行せずに、数ヶ月間〈安息の樹園〉に滞在することになった。
指導役は、ファナや双子妻の魔道具作成班が担当する。
こちらの女性陣は、相手がゴブリン種であっても問題ないらしく、スムーズに講義に移行して行った。
それから約1週間弱、拠点で過ごす時間が続いた。
使節団は精力的に知識を学び、どんどんと理解を深めて行った。
また、両者間での技術関連以外のコミュニケーションも活発になり、仲を深めることにも成功した。
中には、家の食事に招くといったことをしている所もあったらしい。
かくいう俺もディオーンをはじめ、日頃の鍛錬を共にしたり、模擬戦をしたりした。
久しぶりに平穏な日々を送ることができた。
気づけば、アイネが地上に降りてくるまで残り1ヶ月。
どうかこの安寧の日々が続きますように…
『オウオウオウオウ!テメエ、ドコノモンダ?オレ達最強ノ南方面軍ダゾ!』
『ソンナヒョロツイタ身体デ何ガデキンダ?』
『兄チャン、悪イコト言ワネエカラ、家帰ッテママノミルクデモ吸ッテナ。』
……訂正、早速無理そうです。
俺は満面の笑みを浮かべながら、手元にある異刀:不抗に手をかけた。
〈安息の樹園〉を発った使節団に俺とレイン、そしてリメが随行した。
元からの計画通り、地下道の地上部になりそうな場所を確認しながら進んだ。
その結果、割と生えてる木々が少ないラインが見つかった。
そうこうしているうちに〈ゴブリニア〉についた。
最初にレーアと対面し、再開を祝して軽い歓待を受けた。
いくらか話しをして、本人から無事に統治できていることを直接聞けて安心した。
そして、善は急げということで、幸いにも〈ゴブリニア〉に留まっているという南方面軍に説得するために赴いた。
その結果がご覧の有り様だ。
せめてもの救いは俺がヒューマン種で、協力関係にある立場だと最低限の理解は示してくれたことか。
厄介者と聞いていた南方面軍とやらが想像以上にヒャッハーな……面倒そうな輩であった。
ゴブリン種の癖に、頭髪がリーゼントで整えられてやがる。
服も毛皮なのだが、裾が地面につきそうなぐらい長い。
果ては、ヤンキーの代名詞であるう○こ座りまでしている。
タバコ吸ったり、バイクに乗りはじめたら、役満だぞこれ
おい、俺は地球に戻ってきて、さらにタイムスリップしてしまったのか?
そう錯覚すら覚える、現状であった。
それにしても、ママのミルク飲んでな、ってこの世界でも言われる定型分なのね。
『オイオイオイオイ、ビビッテンノカ?』
『サッキカラ、ウントモスントモ言ワネエゾ。』
『ドウチタンデスカー?怖インデチュカー?』
おい、ここに転移者なり転生者いるんじゃねえの?
見事な煽り文句だ。
俺は言われても、別になんとも思わないが。
だがしかし、このままだと何も始まらないのも事実。
こういう時はトップとお話しすれば、なんとかなるか。
まあ冷静に、冷静にいこう。
なるべく融和的な態度で、っと……
「御託はいい。さっさとトップを連れて来い。」
あれ、なんか言葉遣いミスったぞ。
『ハ?頭ダト?イッタイ何ノヨウダ!』
『会ワセルワケネエダロ、コノボケ!』
『ドウシテモト言ウナラ、オレ達倒シテカラ行キナ!』
はあ、戦闘パートに入るのか。
短かったな、オレの平穏な日常パート。
しかし、そこで事態を終息させる、野太い声が響いた。
『ウルセェゾ、テメエラ!俺ガトップ張ッテル、ゴ=スールトダ。イッタイ何ノ用ダ、ガキガ!』
現れたのは、声の主。
言語疎通できたからハイゴブリンであるはずなのだが、その体躯はゴブリンロードにも劣らない巨大なものだった。
その肉体は決して無駄な贅肉などでなく、引き締まった筋肉であった。
この時点で俺は直感が働いた。
ああ、完全なる脳筋なのだと。
念のため、《情報分解》しておくか…
名前:ゴ=スールト
種族:ハイゴブリン
立場:[敵]ゴブリニア南方面総大将
能力:《鑑定》《繁殖》
《眷属召喚:ロード以外ゴブリン種》
《統率者:ロード以下ゴブリン種》
《領域感知》Lv3《身体操作》Lv6
《格闘術》Lv6《土魔法》Lv3
間違いなく、脳筋だな。
己の肉体に過分なまでの自信を持っている系の。
はあ、果たして言葉が通じるかな。
「仕事の依頼です。目的はここと我らの〈安息の樹園〉の間を繋ぐ地下道の建設。女王より許可及び勅命を貰っていいます。」
『ブハハハハハ、我ラハ弱者ノ言ウコトナゾ聞カン!タトエ女王デアッタトシテモナ!』
こいつ、何をドヤ顔で言ってるんだ?
偉そうに威張って言うようなことではないと思うんだが?
『ダガ、ドウシテモト言うのなら聞イテヤランコトモナイ。』
おっ、意外と話が通じるタイプなのか?
『我ヲ倒スコトガデキタノナラナ!ブハハハハハ!』
やはり戦闘パートは避けられないらしい。
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