第109話 道の問題
新作の本格的な投稿が始まりました!
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勇者?聖者?いいえ、時代は『勝者』です!
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「鉄の車を走らせるだと?」
『ナント面妖ナ…」
「本当に大丈夫なんでしょうか?」
『信ジラレマセン。』
「うーん、それは厳しいんじゃないかな〜?」
「……ああ、そうだな。」
やはりというか、理解してもらえないか。
時代でいえば1つ2つ先の文明レベルの話だからな。
それにしても、ファナやバンダーまで渋い顔をするとは思わなかったな。
新しい発明する時に毎回テンション上がってたのに。
「意外だな、そんな反応示すなんて。」
「……鉄の車自体はかなり魅力的なんだがな。なにせ場所が場所だからな。」
「道を作るのも大変だし、作れたとしても実際使えるかとなると疑問が残るからね〜。」
失念していたな!
そうか、道を作ること自体も難しいのか。
鉄道ともなると、空間を切り開いた上でレールを置いていかないといけない。
それに野晒しになるから、魔物が線路上に居座ったり、巣を作ったりする可能性すらありうる。
とても安全に使える代物とは言えなくなるな。
辿り着くまでに犠牲がたくさん出てしまう。
うーむ、そうなるとどうしたものか…
両者を結ぶ道は欲しい。
ただし、その道は安全に使用できて、不必要な犠牲を生むことがないものにしなければ意味がない。
俺は言葉を発することを躊躇うようになってきた。
2人の疑問に言い返すことができない。
周りも何をはしたらいいのか分からないようで、話し始める者もいない。
話し合いが煮詰まってきたな。
このままだと、停滞したままだな。
空気を切り替えることにしよう。
「……一回小休止しようか。レイン、皆に飲み物を用意してくれるか?」
「はい、かしこまりました。」
レインはそう言って、部屋から出ていった。
数分後、レインは果実を絞って作った果実水を人数分持って戻ってきた。
『南方面ノ総大将ガ未ダニ、ゴネテイマシテナ。押サエ込ムノ手ヲ焼イテオリマスヨ。」
「それはまたご愁傷様だな。」
『ホッホッホッ、マタ手助ケシテ欲シイグライデスナ。』
「ハッハッハッ、今度は高くつくぞ?それとも緊急事態になるまで放置でもしてみるか?なんてな。」
『セイゼイオ世話ニナランヨウ頑張ラセテモライマスヨ。』
気分転換を兼ねて雑談会に移行した。
内容としては、専らここ最近のお互いの動向だ。
〈ゴブリニア〉ではクーデターによるゴタゴタは一応の終息がついたものの、まだまだ余念を許さない状況らしい。
特に南方面の軍部が血の気が多く、前王ロクノスよりの考え方をしているらしい。
自分達は負けなし、常勝の軍なのだ、とか。
だが実際は南方面が最も魔物レベルとして低いため、相対的に勝率が高く強く見えてしまうだけらしい。
本当に軍同士で衝突した場合、南方面が他方面全てに負けるのが現状らしい。
プライドばかり高くなって現実を受け止め切れないんだろうな。
そして、南方面軍はレーアが国の方針を支配路線から融和路線に切り替えたにも関わらず、度々暴走。
つい最近だと、アクアスキッパーの群れをひたすら殲滅させたらしい。
それでも少なくない犠牲を出したんだとか。
レーアも他方面の軍部も頭を悩ませているそうだ。
「あれからまだ数週間しか経ってないんだな。」
『ソウデスナ。前回、最後ニアッタノハ脱出用ノ通路前ト記憶シテオリマスヨ。』
「ああ、あの時か。まさか脱出用の地下道を使う、と、は――」
そうか、地下道にすればいいんだ!
道を地下に作れば、浮かび上がっていた問題点が解決する。
地下ということで侵入経路も限られるため、魔物が現れるという可能性も少ない。
俺の能力を使えば、入り口以外は全てシャットアウトできる。
作業自体も基本的に地面を掘っていくだけだから、魔物に遭遇しにくい。
仮に現れるとしても、基本的に土の中から現れるから、登場時に何かしらの音がして対処しやすそうだ。
まあその分鉄道は考え直さないとな。
諸々の問題が発生してしまう。
鉄道は……今回は諦めることにしよう。
ということで改めて提案をする。
『ナルホド…』
「まあそれなら…」
『先ホドヨリハ良イカト…』
まあ大歓迎ではないけども、地上に作る案よりは好感触だな。
この案でいけそうかな?
と言っても、はい今すぐオールオッケーですということにはならない。
道を作る。
そこには、どのみち避けられない問題ある。
その問いをOXさんがしてきた。
「作業人員はどうするというのだ?大規模なものになるぞ。」
やはりこの問題は避けては通れない。
ピラミッド然り万里の長城然り、大規模工事には必ずと言って必要になるのが、人手だ。
200kmレベルの地下道をいざ地球の同じぐらいの文化レベルの時にやろうと思えば、途方もない人数が必要になったことだろう。
何千、下手したら何万という人が。
まあけど、この世界は文明レベルが低いが現代地球の技術の代わりになるものはある。
魔法というものだ。
分野によっては、さらに未来にならないとできなさそうなことまでできる。
そして、幸いにも先の会話で使えそうな人材が提起されていた。
「問題はない。ちょうど力を持て余した団体がいるらしいから、彼らに頑張ってもらおう。」
「彼ら、だと?」
「ああ、彼ら、そう南方面軍の方々。」
彼らの暴走は、エネルギーを持て余した故の結果であると感じた。
エネルギーの行き先を魔物狩りではなく、地下道掘りに精を出してもらうことにしよう。
実際は、地中で魔物と遭遇なんてこともあり得るしな。
「こちらとしては作業人員確保の必要なし、そちらとしては暴走しがちな南方面軍が抑えられる。持ちつ持たれつって感じでしょう?」
『ナルホド、ソレハコチラトシテモ願ッテモナイコトデスナ。』
「では、そういうことで。ああ、説得は俺がしますよ。」
俺とディオーンはいい笑顔を浮かべながら握手をした。
実にいい会談となった。
次回更新日は明日です。お見逃しなく…
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