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第107話

今年1年ありがとうございました!

また来年もよろしくお願いします!!

〈レンテンド王国〉の手先との衝突は避けられないかもしれない。

そんな衝撃が走った翌日、俺は畜産農場の予定地にいた。


流石に敵が押し寄せるとしても、自由に転移できない限りはどんなに急いだとしても距離的に数ヶ月はかかるだろう。

無論〈クロージャーゼン山脈〉やあの水底に吸い込まれそうな海を突破した上でいう条件でだ。

今日明日にでも、逼迫した状況に追いやられてしまうことはないだろう。


ということで、あくまでも懸念事項程度に留め、その問題は頭の片隅に追いやることにした。


今はやるべきことは拠点の拡充である。

俺は最強目指したり、英雄伝説を作りたいのではない。

充実したスローライフを送りたいのだ。



「頼んでいた通りにできたようだな。」


「ええ、勿論。ビリーもいましたし、先日牛舎建てたばかりなので。」


俺は目の前にある建物を見ながら、隣に立つケングと会話を交わす。


それは、数日後に来るステラヤマギュウ用の牛舎の隣に建てられた建物。

ドゥードゥー用に建てられた鶏舎、いやドゥードゥー舎であった。


実物がいないのに建てられるか、という問題があったようだ。

しかし、実家で畜産を営んでいたビリーが、ドゥードゥーを実際に飼育していたらしく、作業に支障をきたすことはなかったらしい。


「……まあ、流石にケージ飼いは厳しいか…」


「?何か言いましたか?」


「いや、何でもないよ。」


地球にいた頃、養鶏している知り合いに実際に鶏舎を見せてもらったことがある。

そこは、低床ウインドレス鶏舎とかいうタイプで鶏を個々のケージに分けて飼育していた。

自然の影響を受け辛くして、管理しやすく大羽数の飼育が可能だとか言ってたな。


そもそも昨今は低床ウインドレス鶏舎のようなケージ飼いが一般的らしい。

だからまあ俺もそれを想定したわけなんだが。


やはり文明レベルが中世程度だから、ゲージ作ったりする文化はないらしい。

専ら平飼い鶏舎の所謂放し飼いがポピュラーなのか。

言われてみれば、ドゥードゥーを売ってもらった農家も放し飼いだったな。


「ドゥードゥーの飼料ってどうするんだ?」


俺は少し離れたところにいたビリーの元へ行き、質問した。

ドゥードゥー農家に聞いておけばよかったな。


「基本的に何でも食べっすね。ウチだと定番ですけどドゥウィートでやした。後は野菜の余った分とか、場合によっては肉とか自分らの食べ残しとか食べさせてきやした。」


やはりそこらへんも鶏と変わらんらしい。

ここでは、しばらくの間フバツソラヌンのマッシュしたものを飼料として与えることにしよう。


一通り見終わり、特に問題が見当たらなかったので、ドゥードゥー達を球体の保管用魔道具の中から解放していく。

出てきたドゥードゥー達の反応は大きく分けて2パターンあった。


一方は、新しい環境に興味津々といった感じで鶏舎もどきの中や放し飼い用のスペースをあっちこっちと歩き回っていた。

片やもう一方は、降り立った地面から頑なに一歩も動こうとしない。

まあ、1つだけ言えそうなのは、新しい環境に来たストレスは大きそうだなってことだ。


この感じだと、しばらくは無精卵を産んでくれなさそうだ。

仕方ないが、なるだけ早く環境に慣れて欲しいな。




ドゥードゥー舎のお披露目も終わり、その場にいたメンバーも各々の仕事へと戻っていった。

まあだってまだ昼過ぎだもんな。


そんな俺は今家の中にあるキッチンテーブルの前にいる。

テーブルの上にリメがいるだけで、他の者は誰もいない状況だ。

レインにも少し出て行ってもらっている。


何故なら、俺はこれからお菓子を作るからだ。

サプライズとまでは言わないものの、せっかくだし完成した物を皆の前で披露したいと思った。


実はドゥードゥー農家で感謝の一環で、スタンピートボアを渡した時に貰ったものは卵だけではなかったのだ。

心ばかりの少量ではあるが、バターも貰えたのだ。

まさに嬉しい誤算であった。


卵、バター、砂糖、そしてフバツソラヌン。

これを使ったスイーツを作り出すのだ。



まず、フバツソラヌンの皮を剥いていく。


地球にいた頃は時短も兼ねて、じゃがいもはお湯を使ったお手軽な手法を使っていた。

けど、こちらに来てからは刃物の扱い方に慣れるためということで、なるべく手作業で剥くことにしている。


それに野菜の皮剥きしていると、落ち着くんだよな。

余計な雑念が浮かばないから、脳内のモヤモヤとかをリセットできる。


気づくと、想像以上の量の剥かれたフバツソラヌンが目の前にあった。

しまった、これはやり過ぎた!

必要分だけ取り、後はリメの《ストッカー》で保存してもらうことにした。



次に、フバツソラヌンの身をマッシュしていく。


マッシャーなんて上等なものは今までなかったが、《鍛冶聖》スキル持ちのバンダーが来てくれたおかげで作ってもらえた。

実はバンダーに頼んで、様々な調理器具を作ってもらっている。

本人曰く、作業と作業の合間に趣味感覚で作れて悪くない、と言ってくれている。


マッシュし終わったフバツソラヌンの元に、砂糖と卵とバターを入れる。

フバツソラヌン自体に甘みはほぼないため、砂糖は多め。


それらを木べらを駆使して、よく混ぜていく。



生地を手頃な大きさに分けつつ、形を整えて金属製の板の上に並べていく。

そして、その上に卵黄を溶いたものを塗る。


本当はオーブンがあったら、そのままぶち込んでこんがりと焼いてしまいたいが、生憎とそんなものはない。

まあ近いうちにバンダーと魔道具開発班と協力して、作ることも考えているが未だ思考段階に過ぎない。


なので、今回はリメに火魔法を使って焼いてもらうことにした。


周囲が焼けないように壁などに《分解結界》を施す。

すると、金属板の少し上方に火の板のような物が浮かび上がった。

広い面で熱を加えることにより、焼きムラをなるべく減らすつもりらしい。


リメは俺の指示がなくともやって欲しいことをしてくれる。

本当にありがたい存在だ。


適度な火力で10分程度焼いて完成だ。

夜が楽しみだな。




「スイートポテトと言うのですか?」


俺の作ったお菓子――スイートポテトを食べながら、レインはそう聞いてきた。

いつもはクールな感じだってのに、いつもに比べて口元が緩んでいる。

やはり女の子は甘い物に弱いらしい。

その隣にいる姫様も一心不乱に食べている。


夕飯時になり、俺は完成したスイートポテトを各家に持っていき、お裾分けした。

女性陣の目の色の変わりようが印象的だった。


「ああ、けど若干材料が違うから、出来に納得しきれてはいない。だから、もっと甘く美味しくなるぞ。」


「「こ、これよりま甘く…美味しく…ゴクリ。」」


思わず、想像してしまったようだ。

何はともあれ満足してくれて良かった。



翌朝、女性陣皆からの高評価を得た。

中には、わざわざ家にまで来て感想を言うものまでいた。


まあ、もっと美味しくなると言った時は総じて期待感で唾を飲み込んでいたよ。

次回更新日は明日です。お見逃しなく…


良かったら評価の方よろしくお願い致します。

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勇者?聖者?いいえ、時代は『○者』です!
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