第103話 "赤雷"の問題③
本日から1月3日(日)まで毎日更新します。
新作投稿しました!
勇者?聖者?いいえ、時代は『勝者』です!
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※本格的な投稿開始は来年からですので、予めご了承下さい。
名前:黄道 丈
能力:《言語理解》《魔糸操作》Lv4
《居合術》Lv1
【分解】LvⅡー《情報分解》
《素材分解》
《分解結界》
《認識分解》
エルグランドから目を逸らすことなく、自分に対して《情報分解》を行使する。
久しぶりに見たが、多少の成長が見て取れた。
《魔糸操作》のレベルが1つ上がっていた。
日頃の鍛錬のお陰か、《居合術》のスキルを獲得していた。
それにしても、スキルの獲得や成長が早い気がする。
転移者ボーナスってやつなのか?
アイネは特に言及していなかったから、そんなものもらっていなかったと思ったんだが。
それともただ単に諸々の才能を元々持っていたのか?
けど、《魔糸操作》とか才能もクソもないと思うんだが。
いかんいかん、思考がまた明後日の方向へと飛んでしまった。
今は目の前の敵に集中しなくては。
ここさえ乗り切れば、後でいくらでも考察を立てられる。
ふぅ、状況を整理しよう。
今回は、姫様を巡った争い。
敵方サイドの目的は、姫様の捕縛。
おそらく姫様は生きた状態で確保する必要がありそうだが、俺とファナのことは生死問わず無力化すればいいだけ。
俺達サイドは、姫様を守り抜き〈安息の樹園〉まで転移しなくてはならない。
勿論皆生きた状態なおかつ無事な状態で。
敵の軍勢はほとんど無力化済み。
今動けそうなのは、エルグランドを除いて数人のみ。
だが、少なからず負傷している。
もう満足に動くことはないだろう。
ということで、一応の注意は払うが、敵は先ほどまで様子見していたエルグランドのみと言っても過言ではないだろう。
一方のこちらはほとんど無傷。
だが、少なからず疲弊している。
お互いのフォローをしつつ、全方位からの波状攻撃を耐え忍んだのだ。
特に姫様の疲れは目に見えて明らかだ。
肩で息をしているし、膝が若干だがプルプルと震えている。
これ以上の抵抗は出来なさそうだから、敵の手に落ちたらジ・エンドだ。
結論として、現状こちらが不利だ。
これは単純な戦闘などではなく、防衛戦だ。
ほとんど万全の状態の強敵を迎え撃ち、撃退しなくてはならない。
ここ最近戦ったばかりな気がする。
くっ、なんでこうも厄介な戦闘に巻き込まれるんだ。
俺はただスローライフを送りたいだけなのに。
「じゃあ行きまスよ!」
ピカッ、バシーン!
雷鳴と共に目の前にいたエルグランドの姿が掻き消える。
またなんちゃって瞬間移動か!
「はい、チェックメ――」
「「しまっ!」」
一瞬で姫様の後ろに転移したエルグランドが、姫様を確保しようと手を伸ばす。
俺とファナの手に持った武器がちょうど届かない位置だ。
万事休すの状況だ。
しかし、何を思ったのか、エルグランドはその手を引っ込め、また雷鳴と共に移動した。
一体どうしたというのだろうか?
ピカッ、バシーン!
俺達から少し離れたところへと移動したようだ。
右腕を何かで切ったのか、血が出ていた。
そして、こちらを見てくる。
その顔に浮かべた表情は、どこか怪訝で、しかしどこか面白そうといった感情を孕んでいた。
「やってくれまスね。」
まるで意味が分からない、といった考えを皆頭の中に持った。
エルグランドの言葉の意味を理解したのは、エルグランド本人――そして、俺だった。
「何のことだろうか?」
「いやいや、惚けなくていいでスよ。僕ちんは分かってまスから。まさか、目に見えない罠を仕掛けた場所に誘導するとは。」
「…………」
「見事な位置どりでしたよ。完全に死角であった空間は、あくまでも意図して作った空間。してやったつもりが、まさかしてやられるとは思わなかったっスよ。あと少し踏み込んでいたら、しばらく右手とバイバイでしたね。」
「…………」
言葉を返したりはしない。
しかし、エルグランドもそれは分かっているのか、それ以上言葉を発することなく、再び臨戦態勢へと移行した。
「――フレイム・ランス。」
槍の形をした炎が幾つも俺達に降り注ぐ。
どうやら近接で直接姫様を捕らえることを放棄し、遠距離攻撃で俺達の無力化を狙い始めた。
「――エア・スプレッド・ウォール。」
すぐさまファナが風魔法を使い、見えない壁を展開して魔法を防ぐ。
どうやら、上級魔法らしい。
リメにも同じ魔法を使うように頼み、より万全の防御態勢を作り上げる。
それにしても、いやはや流石S級ランク冒険者と言ったところか。
《認識分解》と《分解結界》を施したミスリル糸に気付くなんてな。
わざわざ自分達の想定を上回られた、と思ったと誤認させるようなリアクションを取ったってのに。
こっちだってチェックメイトだと思ったさ。
だが、幸いにも相手は完全には気付いていない。
俺はわざわざ思考誘導してエルグランドをさっきの空間に行くように促したわけではない。
あくまでもアレは仕掛けを施した故の結果に過ぎない。
だから、まだやりようがある。
俺は異刀:不抗を収納して、殴打するためのフバツハートチーク製の棒を出すようにリメに合図を出す。
流石に刀を使うと殺めてしまう可能性が出てくる。
「じれったいっスね。近接は智略でお兄さんが、遠距離は魔法で"ならざる王女"が守る。いやー、まさに鉄壁といった感じでスね。」
絶え間ない炎の弾幕が続く中、痺れを切らしたかのようにエルグランドがこちらに語りかけてきた。
話しかけてきただけで、弾幕が止む気配はない。
なんだったら、段々と炎の槍の数が増えてきていた気がする。
途中からフレイム・ランス・バリスタとか言っていたから、火力を上げてきているようだ。
「このまま続けてても僕ちんは構わないんスけど、さっきから念話で上から催促が飛んできてるんスよ。なので申し訳ないでスけど――」
その瞬間、確かに空気が変わった。
「――本気出させてもらいまスね?」
この言葉が出るや否や、炎の槍がより一層明るくなった。
いや、正しくはそれぞれの炎の槍が赤い光を帯び始めた。
その赤くなった炎の槍はそれまで防いでいたはずの風魔法の壁を貫き、こちらに降り注ぐことになった。
間違いない、これは固有スキルだ。
本格的にこちらを倒さんと、《ブレイキングスター》を発動したのだろう。
俺は急いで、《分解結界》を付与したミスリル糸をあらん限り展開して、炎の槍を斬っていく。
どうやら【分解】の権能の能力を無効化することはできないようだ。
他の2人になるべく俺の側に固まるように指示を飛ばす。
しかし、全てを落とすことはできず、地面に到達する炎の槍も増えてきた。
今は誰かに直撃することはないが、いつ直撃してもおかしくない。
正直このままだとジリ貧だ。
相手が近接に切り替えてくれれば、いくらでもやりようがあるのだが。
なんとか打開しなくてはならない。
しかし、どうやって?
俺は炎の槍を防ぐので手一杯。
姫様は未だ疲労感満載で動けない。
ファナは魔法を放てるようだが、エルグランドに到達する前に炎の槍の弾幕で掻き消えてしまうだろう。
いったいどうしたらいいのだろうか?
「――ぁ!」
遠くから声が聞こえた気がした。
もしかしたら無力化したはずの敵の軍勢が復活しつつあるのかもしれない。
「――ぇさま!」
この声は……女性か?
見た感じ敵の中に女性らしき者は見て取れなかったのだが。
「ひぃめぇさま!」
すると、何かが集束していくような音がした。
魔法発動の兆候だろうか?
「姫様に手を出すなー!」
「うおっ、危ないっスね!」
ピカッ、バシーン!
その瞬間目の前の迫りつつあった弾幕が止んだ。
エルグランドも先ほどまでいた場所から離脱したらしく、右斜め前方向に現れた。
どうやらエルグランドが突然現れた女性に攻撃されたらしい。
「姫様!ご無事で何よりです。今、害虫を排除しますね!」
そしね、姫様の知り合いらしい。
俺は姫様に目を向ける。
しかし、姫様ことフィアナはまるで心当たりがないと言わんばかりに首を横に振る。
え、じゃあ?
すると、予想だにしない人物から驚きの言葉が飛び出した。
「え?クラリー、アンタなの?」
……どうやらファナの知り合いらしい。
次回更新日は明日です。お見逃しなく…
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