第101話 "赤雷"の問題①
本日はこの1話のみの更新となります。
新作投稿しました!
勇者?聖者?いいえ、時代は『勝者』です!
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※本格的な投稿開始は来年からですので、予めご了承下さい。
「おろ?僕ちんの雷が当たったはずなんスけどね?」
慌てて辺りを見渡すと、赤い閃光が飛んできたと思しき方向から声が聞こえた。
今周囲は先ほどの攻撃によるものか、土煙が立っており視界は良いとは言えない。
ただ幸いにも、常時《分解結界》を発動していたので何かしら負傷することもなかった。
「ふーん、お兄さん強いっスね。」
土煙が晴れた先に立っていたのは、赤髪の小学生ぐらいの男の子であった。
その表情は非常ににこやかであり、明らかにここにいるのは場違い感がある。
だが、今見当たるのは彼しかいない。
「な、何者だ?先の攻撃は君によるものか?」
動揺を示さないようになるべく声のトーンを落として話しかける。
だが、残念ながら、完全に動揺を消すことはできなかった。
少年から目を逸らさないようにしつつ、姫様とファナを視界に入れる。
2人の表情は固かった。
そこには相手の正体が分からないことによる困惑ではなく、目の前にいる存在に対する驚愕といった感情が見て取れた。
まさか、知り合いなのか?
「……まさか"赤雷"が出てくるとはね〜…」
「……知り合いなのか?」
ファナの口から聞き慣れないワードが聞こえてきたので、即座に質問を繰り出す。
この間も少年から目を逸らさず、緊張状態を維持し続ける。
「……いえ、違うわ。アタシも直接見たのは初めてよ。ただ外見とさっきの赤い煌きから察するに間違いなく"赤雷"ね〜。」
「……有名な人物ってことか?」
「……そうね、〈レンテンド王国〉お抱えのSランク冒険者よ。子供のような容姿に似合わず戦闘狂で、その実力は折り紙付き。アタシも戦って無事でいれる自身はないわね〜。そして残念なことに、王家所属ではなく王国所属だから、フィアナちゃんの味方とは限らないってことね。」
ファナにここまで言わせるとは!
とんでもないバッドイベントのお出ましだ。
くそ、引きこもることやめた途端、この有様かよ。
「内緒話はもういいスか?一応自己紹介しときまスね。僕ちんは"赤雷"、しがない冒険者っス。今日はそこにいる姫様を迎えに来たんスよ。大人しく従ってもらえまスかね?」
ちっ、狙いはやはり姫様か。
まさか隣国まで手を回しているとは思わなかった。
誤魔化すだけ誤魔化してみるか…
「姫様?すみません、人違いじゃないですかね?自分達は見ての通りただの旅人なもので。姫様なんていう高貴な身分の方がいるわけないじゃないですか?」
「いやー、お兄さん。それは冗談キツいっスね。確証もなく、姫様だなんて言うわけないじゃないスか。ちゃんとスキルで鑑定済みスよ。」
ダメか。
流石に高レベルな冒険者なだけあって鑑定系スキルも標準装備ってところか。
逃走の機会を得ないといけなくなったな。
王家の魔道具は何度か使ってもらったが、発動までに時間がかかる。
その時間の間、相手が野放しにしてくれるとは到底思えない。
現に、変な挙動でもしようものなら、強襲されそうだぞ。
ひとまず《情報分解》を…
名前:エルグラント=サンロワール
種族:ヒューマン
立場:[敵対(警戒)]レンテンド王国所属Sランク
冒険者
能力:《ブレイキングスター》
《上位鑑定》《上位隠蔽》
《気配遮断》Lv7《領域感知》Lv7
《身体操作》Lv7《短剣術》Lv8
《雷魔法》Lv7《火魔法》Lv9
《ブレイキングスター》
固有スキル。
自身の攻撃は《光魔法》による結界および《結
界術》による結界を無効化し、貫通する。
また自身の攻撃は相手の防具の耐久値を無視し
て、防具を破壊する。
半径100m以内の耐久値を上昇させるスキルの
効果を最大値の10%まで減少させる。
これはまた…チート野郎かよ!
レベル制スキルの最低が7とか今までにない相手だぞ。
あと、一縷の望みをかけた立場の項目だったが、残念ながらばっちり敵対だよ。
こういう相手って上からのミッションに乗り気じゃないパターンが多いと思うんだが、律儀に守りやがって。
「ん?まさか僕ちんのことを鑑定してるんスか?」
どうやら《情報分解》してることがバレたようだ。
黙っていたら、そう思われても不思議ではないか。
「ああ、そうだ。それがどうかしたのか?」
「それはまたすごいっスね。《上位隠蔽》持ちを物ともせず鑑定するとは。
そう言うと、少年――エルグラントは表情を一変させ、獰猛な笑みを浮かべた。
直感的に分かった、やはり戦闘狂であると。
「それに、さっきからやってるんスけど、僕ちんの《上位鑑定》も弾いちゃってますよね?様子見程度あったとはいえ、最初の雷も効かなかったし、一体お兄さん何者っスか?」
やばいな、どうやら相手を煽る結果になってしまっていたようだ。
闘争心剥き出しだな。
一歩でも動いたら、戦闘が始まってしまう。
そして、不用意に動こうものなら、制圧されかねない。
エルグラントとの間に長い沈黙が訪れた。
「あーあ、残念ながら時間みたいスね。部隊が到着したいました。」
「部隊だと?」
しかし事態は、さらに厄介な状況に移行されることになってしまった。
「そう、部隊っスよ。グライフさんからの指令が先ほど出てましてね。周辺にいた工作員達をここに総動員したってわけっス。」
言われてみると、視界の先に人影らしきものが見え始めた。
しかも、それは一方向からではなかった。
後方までは確認できていないが、視認できる範囲全ての方向に人影が見られる。
この調子だと、囲まれていてもおかしくはない。
それにしても、気になるのは…
「……あまりにも用意が良すぎる。」
ここ〈ウラフヴォスト〉に着いてから、まだ数時間程度しか経っていない。
それなのに、これだけの人員を差し向けることができている。
着いた瞬間、工作員を動員したとしか考えられない。
そもそも何故ここに姫様がいることが露見しているのだ?
明らかに不自然だ。
「用意が良すぎるスか…割と簡単な話なんでスけどね。」
「なんだと?」
「王家所有の魔道具は王族なら誰でも使えるという便利なものっス。ただ誰でも使える分、魔力の使用効率が著しく悪いんスよ。使用すると、発動地点とその作用地点に大量の魔素をばら撒くことになってしまうんス。その急激な魔素の高まりを感知すれば、魔道具がどこで使われたか簡単に割り出せちゃうんでスよ。」
本当にそんなことが可能なのか?
無言で姫様とファナに視線を向ける。
それに対して、2人は首を縦に振り肯定してきた。
便利すぎる魔法の弊害ってやつか。
何のデメリットもなく、使えるわけではないのか。
さあ場所が割り出されたトリックは分かった。
となると、さらに敵が増えてもおかしくはない。
短時間で行動を起こして、〈安息の樹園〉に転移しなくてはな。
「……ファナ、周囲を迎撃しながら、姫様を任せるか?俺は"赤雷"とかいうやつを抑える。」
「ええ、大丈夫よ。そっちこそ大丈夫?」
「いや、やるしかない。フィアナも様子を見て、なるべく早めに魔道具を使用してくれ。」
「わ、分かりました。私も可能な限り自衛します。」
「ああ、頼んだぞ。」
俺はリメに合図を出して、異刀:不抗を手にした。
次回更新日は12/20(日)です。
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