第100話 ドゥードゥーの問題
本日はこの1話のみの更新となります。
新作投稿しました!
勇者?聖者?いいえ、時代は『勝者』です!
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※本格的な投稿開始は来年からですので、予めご了承下さい。
「フィアナはこの街に一度訪れたことあるんだよね?」
「ええ、そうですね。訪れたかどうかで言うと、一度だけ訪れました。けど、その時は所謂旅の道中でしかなかったため、宿屋ぐらいでしか降り立ちませんでした。」
「じゃあほとんど初見ということか。」
「だいぶ幼い頃の話ですからね、記憶も定かではありません。それに商売の栄枯盛衰もありますから、馬車の窓から見た景色も一致しないでしょう。」
町外れの農場に向かう道中は会話に勤しむ。
複数人が無言で歩くとか、不審に思われる可能性があるからな。
それにしてもこの街はかなり広いと感じる。
少なくとも日本トップクラスのアミューズメントパーク以上の規模があるんじゃないかと思う。
未だ到着する気配がない。
「ファナの方はどうなんだ?やっぱり〈スウィーセファンド〉からは動いてないか?」
「そうね〜、〈スウィーセファンド〉から東側来たのは今回が初めてね。噂には聞いてたけど、かなり大きな街ね〜。」
「ん?母国と言っていいのか分からないが、出身国にはこの規模はなかったのか?」
「流石になかったわね〜、そもそも〈エリルリエ宗主国〉はエルフ種による国ということで自然を尊ぶの。ここまで大規模な開拓は国柄できなかったわ〜。」
「ふーん、じゃあこんな冒険者のための街みたいなのもなかった感じか?」
「いいえ〜、確かにあったわ。〈ドルルーフ国〉との国境付近にこの大陸最大規模のダンジョンがあってね〜。それの近くにここのような冒険者の街があったわ〜。」
「大陸最大規模のダンジョン?」
「〈無常の欲望〉ですね?」
「なんだ、フィアナ知ってるのか?」
「はい、冒険者やダンジョンに潜ろうとする者にとっては常識と言われるレベルですので。現在、最前線が60層近くまで到達しているものの、最深部は100層に及ぶのではと言われております。〈クロージャーゼン山脈〉と並ぶ、危険でありながらも高利益が望める地と認識されています。」
「へえ、そんなダンジョンがあるのか。知らなかったな。」
「結構常識ですよ?」
「……まあ、色々あるんだよ。」
話の雲行きが怪しくなってきたところで農場らしき所へ着いた。
ファナはまあ《分析眼》なりで俺の正体を粗方察している。
しかし、姫様は違う。
一応アイネを見てはいるが、俺の匂い付き布団をオーバードーズさせたおかげでその記憶は飛んでいる。
俺が転移者であり、この世の世俗に疎いことをあまり認知していない。
このまま会話が続いていたらボロが出ていたかもな。
「すみませーん。誰かいらっしゃいますか?」
「おーう、ちょっと待ってなー。」
少し離れた牛舎らしきところから声が聞こえ、その後ドスンドスンと何かが近づく音がした。
牛舎のドアが開くとそこには大きな二足歩行の牛がいた。
そのまま向かってくる牛。
まさか声の主だったのか?
「すまんな、作業中だったもんでな。おっと、まずは挨拶しとこうか。俺は獣人のブルースだ。ここの農場の主人をしている。」
どうやら、ただの怪異的な牛ではなく、獣人種だったようだ。
身長が3mぐらいあるから、ついつい勘違いしてしまった。
威圧感が半端じゃない、それこそテンペストグリズリーを彷彿とさせる。
「初めまして、私はジョーと申します。こちらでドゥードゥーの飼育をしているとお聞きまして、お伺いさせていただきました。」
「ほう、ドゥードゥーかい。なんだ、卵でも直接買いに来たのかい?」
「いえ、卵というよりドゥードゥー自体を購入させていただこうかと思いまして…肉屋の主人に聞いてみたところ、ここが良いと案内されたので来ました。」
「……なるほどな、ここ案内するってことはあいつのか。よくもまあ教えてもらえたもんだ。」
「たまたま持ち込んだスタンピートボアの品質が良かっただけですよ。」
「まあいい、あいつが案内したんだ。別にドゥードゥーの数が足りないってわけじゃないし、売る分には構わんよ。どれくらい欲しいんだ?」
「参考までに価格は幾らぐらいになりそうですか?そんな馬鹿みたいに買うつもりはないんですけど。」
「そうだな…番で金貨2枚ってところだな。番が3つごとに、おまけして金貨5枚でいいだろう。あいつの紹介なんだ、サービス価格ってやつさ。」
相場は分からんか、かなり太っ腹な気がする。
金貨10枚も払えば、番が6つも手に入るのか。
よくある設定だと、ここで値切り交渉を図ったりする。
だが、明朗会計ばかりの地球で育った俺に、そんな値切り交渉するための技術なんて生憎持ち合わせていない。
多く払ったとしても、勉強代ということにしておこう。
尤もスタンピートボアの売却で稼いだあぶく銭でしかないのだ。
「ありがたい申し出です。即決払いで番を6ついただきましょう。これがその金貨10枚です。」
「おおう、毎度!ケチな客じゃなくて良かったよ。だが、まだ金は受け取れねえ。ちゃんと実物を見てからにしてくんな。俺が言うもんじゃねえが、信頼のし過ぎは不運を招くぜ?」
「おお、そうですか。これまた勉強になりました。」
俺達はそう言ってドゥードゥーのいるエリアを目指す。
よくよく考えれば、この世界にはPL法もクーリング制度も消費者を守るためのような法律は存在しない。
詐欺られてもおかしくないから、気をつけなければ。
少し歩いたところには鶏を一回りほど大きくしたような鳥がたくさんいた。
おそらくこいつらがドゥードゥーだろう。
[ドゥードゥー]
無精卵を産むことのできる、飼育可能なニワト
リ型の魔物。
戦闘能力は皆無に等しい。
無精卵は2日に1回複数個ずつ産む。
飼育環境の魔素が多いほど、無精卵は濃厚な味
になる。
「なかなか元気な奴等だろう?」
「はい、問題なさそうですね。」
「どれがいい、って聞いても分からんだろうから適当に選んでやるよ。どうやって持ち帰る?」
「それはこちらを使わせていただきます。」
そう言って俺はすっと装飾のなされた球体を出した。
「試しに1匹選んでいただけますか?」
「お、おう、じゃあ元気のいいこいつな。」
俺は差し出された1匹のドゥードゥーに向けて、球体の両脇に付いているボタンを押す。
すると、あっという間にドゥードゥーは光の粒子となり、球体の中へと吸い込まれていった。
「こ、こりゃーいったい?お、おい、ドゥードゥーは無事なんだろうな!」
「ええ、大丈夫ですよ。」
俺は球体の上部に付いているボタンを押す。
その途端、先ほど吸い込まれた光の粒子が球体から外に飛び出す。
その粒子は次第にドゥードゥーの姿を形作り、最終的にドゥードゥーそのものへとなった。
「ご覧の通りです。ご確認下さい。」
ブルースは恐る恐るドゥードゥーを持ち上げて、状態を確認する。
勿論異常なんかあるはずがない。
この球体の魔道具の実証実験は何度も行なっているからだ。
「……ほんとだ、すげえなその魔道具は。も、もしかして、貴族様だったりするのか?」
「いいえ、そんなことはありません。ただのしがない人民ですよ。」
「うーむ、どうもそうは思えないんだけどな…まあ隠したいと言うならその意思を尊重しよう。残りのドゥードゥーも選んでいくぞ。」
「はい、お願いします。」
その後はトントン拍子で進んでいった。
金もしっかりと払い、応対態度に満足したためスタンピートボアを1匹プレゼントした。
それのお返しとばかりに、いくつかの卵も分けてもらえた。
うーむ、満足満足。
「無事に卵が手に入りましたね!」
姫様はとても嬉しいそうにしている。
ファナも口には出さないものの、ホクホク顔だ。
卵を何に使うのか説明しているから、その料理が楽しみで仕方ないみたいだ。
やはり女性は好きなんだなと思う。
「よし、じゃあ次はーー」
「危ない、ジョー君!」
「え?」
その瞬間、俺の胸を赤い煌きが貫いた。
只今、新作の執筆に力を入れているため、大変申し訳ございませんが、年末年始の連続更新期間まで投稿を毎週日曜日だけにさせていただきます。
更新を楽しみにしていただいていは読者の皆様には深く謝罪申し上げます。
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