第95話 クーデターの問題⑤
こちらは本日1話目です。
本日はプロローグ及び第1部の人物紹介を18時に更新します。
第1部の終わりに挿入するため、更新通知が来ないかもしれませんが、是非ご覧になってください。
また、記載して欲しい項目がありましたら、コメントなどで頂けると幸いです。
『それにしても…お前はヒューマン種のようだな?』
「はっ、それがどうした?」
まさか相手の方から話を振ってくるとは思わなかった。
こちらに探りを入れているのか?
何にせよ、今の聞き分けのない頭悪そうなタイプを演じ続けることには変わりない。
『いや、なに、生まれてこの方生きているヒューマン種なぞ見たことなかったからな。』
少し引っかかるワードが聞こえた。
不必要な修飾語が気になる。
「生きているだと?」
『ああ、生きているな。ここから東へ行くと海があってな、極稀にだがそこへヒューマン種の水死体が流れ着くことがあった。勿論水を吸って状態は酷いが、特徴は掴めるからな。』
なるほどな、よく見ていやがる。
『ただな、確証を得るために《鑑定》を使おうにもどうも弾かれてしまってな。』
ぐっ、触れられたくない所に触れられてしまった。
《鑑定》を弾くには大きく分けて2パターン存在する。
1つが《上位隠蔽》以上の隠蔽系統のスキルもしくはそれに類するスキルを持つこと。
もう1つが《隠蔽》のスキル持ちかつ相手より実力が相当高いこと。
どちらの条件もそこらへんの一般人が満たせることができるものではない。
それこそ人口比で表すといくつになるか分からないが、1%を下回っていてもおかしくはない。
そのため、《鑑定》できない、すなわち実力もしくは能力が高いことが繋がってしまう。
今俺の前にいるロクノスも俺という存在の認識を油断ならない者と断じたはずだ。
「は、だからどうしたってんだ?怖気付いたか?」
バレているとしても、虚勢は張り続ける。
下手に出た瞬間相手にペースを委ねることになってしまう。
ただでさえ敵地なのだ、そんな愚行は繰り広げたくない。
『そう囀るな、所詮はヒューマン種。そもそもが最弱の種族と言っても過言ではない。しかも、たかだかレーアごときに遅れを取るようなレベルのな。お前ごときになに言われようが何とも思わん。』
「…………」
『ふん、何も言い返さないか…まあ良い。そのお前がいた拠点には他にもヒューマン種がいるのだろう。拠点がある以上、番いになる存在がいて当然のこと。まあ、我の覇道のために有効活用してやろう。』
ブチッ!
残念だな、煽り耐性には自信がある。
両親が事故で亡くなった時に、一時期学校の不良に散々煽られたからな。
その程度で喚き始めると思ったら大間違いだ。
ただ煽られた以上は許さない。
煽る、すなわち宣戦布告なのだ。
そこまで行かれたら、俺は許さないと決めている。
両親の死を弄った奴等にはもれなく潰している。
時には暴力で、時には社会的な死を。
俺は身内の平穏を守るためなら、悪魔にだって邪神にだって魂を売ってやる。
俺はロクノスの言葉を聞いて、作戦の執行を辞めないことを決めた。
一応共存する意思が認められたら、考え直すことも選択肢に入れていたのだ。
しかし、相手は俺の禁忌に踏み入った。
もう許すことはしない。
激情に駆られたと言っても、俺のやることは変わりない。
あと少しで終わるんだ。
『どのみちお前の仲間の命運も決まったのだ。黙り続けることもないだろう。その拠点とやらの情報を全て述べよ。』
「は?誰がお前の言う通りにするかよ。つべこべ言ってないでさっさと落とせば良いだろ?それとも何か、情報がなければ拠点なんて落とせないのか?」
『結果はもう決まったのだ。それならその運命を早めても支障はないだろう。無駄な労力を減らすために聞いてにすぎん。』
「まあ運命とやらも決まっているのかもしれないな。お前らの負けってな。第一、お前はこんな所に閉じ籠っているだけだ。口だけの奴なんかに教えるわけないだろう。」
『よく言いおるわ。我が出るまでもないだけだ。』
「いーや、お前は口だけだ。悔しかったら手ずから戦えばいいだろ!まあ、お前には無理な話だったかな?俺を捕らえたそのレーアとやらの方が優秀なんじゃないか?はっはっは!」
その一言を言った瞬間、場の雰囲気が一変した。
どうやらロクノスの逆鱗に触れることができたらしい。
案の定、権力の地位に固執しているようだ。
レーアの方が優秀と言う意味の言葉が良く効いたな。
だが、基本的には優秀な奴だ。
この場で殺そうとされることもないだろう。
ひとまず目の前から下げて、自身の昂りを収めようとするはずだ。
『……お前覚悟しておれよ。せっかく温情を掛けて、優しく事情を聞いてやろうと思ったのに、もう許さんぞ。レーア、こやつを牢にぶち込むのだ。そして、情報を搾りとれ。そのためには何をしても構わん。』
『ハッ!』
ほらな?
創造通りのパターンだ。
仕込みも終わったし、このまま退場させて頂こう。
ついでにロクノスにもこの世から退場してもらおう。
『連れて行け!』
「くっ、覚えていろよ!」
となると次の動きが欲しいところだな。
彼女らは作戦通り動いてくれているだろうか?
その時、開いていた扉の方から1人のハイゴブリンが駆け込んできた。
格好から察するに近衛兵のようなポジションのようだ。
『タ、大変デス!』
『ナンダ、貴様?王ノ御前デアルゾ。』
『シ、失礼シマシタ!ナ、何分緊急事態デシテ。』
『扉ヲ守ッテイタゴブリンロードガ何者カニ殺サレテイマシタ。死因ハ急所ヘノ一撃。賊ノ正体ハ掴メズ、城内ヘ忍ビ込ンダ恐レガアリマス。』
『なんだと?ちっ!我の《領域感知》に引っ掛かったな。このタイミングでとなると、この者の仲間であろうな。至急捕らえるのだ。』
『ハ、ハッ!』
報告に来たハイゴブリンはすぐさま部屋を出て行った。
これで城内は混乱状態だ。
能力を知ってはいたが、やはり双子妻は暗殺のプロらしい。
おかげで城外への脱出も容易になるだろう。
『何をしている!早くこやつも牢へ連れて行くのだ。』
おっとっと、お声掛けされてしまったな。
ではでは退場させてもらおうか。
そして、俺はレーアとディオーンに引き起こされ、部屋の外へと連れ出された。
アーレスは王の身辺警護ということで部屋に残るらしい。
申し訳ないが、ロクノスに対する忠誠心が高そうだから、アーレスにも退場してもらおう。
俺は部屋を出てから、閉まった扉に手を触れて、最後の仕掛けを施す。
これで準備は万端。
『オイ、コレデ大丈夫ナンダロウナ?』
「ああ、大丈夫だ。少なくとも明日の朝には片がついている。それまで部屋に誰も寄らせなければいい。」
『ワカッタ、信ジルゾ。モシ作戦ガ成功シ私ガ王位ニツイタラ、オ前ヘノ所へ挨拶ニ訪レヨウ。』
「ああ、楽しみに待ってるよ。」
俺はそのまま牢へ連れて行かれ…
……るのではなく、王族だけが知るという脱出口へと連れて行かれた。
地下道で〈ゴブリニア〉の外へと続いているらしい。
幸い辺りには誰もいない。
少しすると、混乱を引き起こしてくれた双子妻がやってきた。
2人には、オリ爺の宿木を持たせている。
それとディオーンに持たせた同じ物を使って、連絡を取ったのだ。
宿木は枯れるまでの間はオリ爺の支配下にある。
携帯することも不可能ではないのだ。
「「どう無事に終わりそう?」」
見事なハモリだな。
「ああ、これで帰れるよ。」
「終わったー!やったーねウェス?」
「うん、これでオー君に会えるよ。」
『デハ世話ニナッタナ、マタ会オウ。』
「ああ、またな。」
「「またねー!」」
そして、俺と双子妻はリメの風魔法のアシストの下、猛スピードで〈安息の樹園〉へと向かった。
流石に当日中は無理だったが、夜中を全力で飛ばしたので、翌日の昼には着いた。
リメには最後の最後で迷惑をかけたな、労わないと。
そして、この日〈ゴブリニア〉では王であるロクノスと護衛であったアーレスの死亡が確認された。
王の執務室の中での出来事であった。
死因に関しては、特定できる技術はなかった。
そのため、呪いであったという解釈がなされ、王の蛮行を断罪するものであったと国中に広められた。
そして、ロクノスに代わり、王位継承権を持っていたレーアが王位につき、女王となった。
これにより、外部に対する進出を止め、国内の安定に注力し始めた。
いずれは外部の勢力とのコミュニケーションを図ってくつもりらしい。
「ねえ、どうやったの?」
側にいたアイネが聞いてきた。
無事にアイネとの逢瀬に間に合ったのだ。
「ん、簡単だよ。この前堀の中に使ったのと一緒さ。」
「堀の?ああ、あれね。窒素だけにするって奴?」
「そう、それ。今回の場合は、まず扉を除く部屋の中に《分解結界》を張って扉以外の脱出口手段を奪った。その上に窒素以外を分解対象とする《素材分解》を付与。で部屋を出たら、最後の脱出口だった扉に《分解結界》を張ってそこも封じたっていう流れ。」
「何気に残酷なことするのね。」
「仕方ないだろう、俺とアイネの愛の巣を守るためだ。アイネが言ったんだろ?この世界は弱肉強食だって。」
「ふふふふ、そうね。それにしても無事で良かったわ。」
「ああ、心配してくれてありがとよ。」
次回更新日は11/25(水)です。
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