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KallistoDreamProject  作者: LOV
その3:共鳴しない娘、やがてすべてが一点に
68/150

Happy IO Xmas Edition

クリスマス用の特別篇です。

現在進行している本篇とは直接の関わりはありません。

「し、しまったぁ……もうこんな時間……!」

 年末も差し迫り「人間の社員」の多くがクリスマスホリデーに突入してしまったから、その穴埋めを会社に残ってる私らロボットがすることになる。もちろん私も明日からクリスマスホリデーはもらってるし、バイオロイドじゃない一般のアンドロイドたちがクリスマスだろうが年末年始だろうが関係ナシに無休で働き続けることを考えれば、私は文句を言えるような立場じゃない。

「……とは言え、何で私が普段やらないこんな事務処理だのメール対応だのしなきゃダメなのよっ!?」

 今日は12月の24日、時間はもう19時を回ってる。私は慣れない事務作業に手間取り、つい熱くなって時間を忘れて没入してしまっていた。でも、熱かろうが冷たかろうが、何にせよ今ある事務作業は今日のウチに終わらせないとダメなのだ。終わらせない限り私にクリスマスはやってこない。

「と、とにかく、カリストに連絡入れないと……」

 私は急いで個人端末を起動して、カリストに繋ぐ。

「カリスト? いる……わよね?」

『えへへ~♪ なあに~?』

 いつも通り気の抜けたような物言いをしながらモニタに姿を見せたカリストは、どこで手に入れた(たぶん近所のスーパーマーケットだろうけど)のか、白いモコモコの付いた赤いサンタ服を着て、アタマにはサンタ帽まで被っていた。やたらと顔をテラテラさせている。

「かっ、ヵヮィィ……」

『ふぇ?』

「い、いや!? べべべ別に何でもないわよっ!?」

 しどろもどろになった私に、カリストは不思議そうな顔をしながらも笑って応えてくれる。

『どしたのかっ?』

「あ、あのねえ……ちょっと仕事に手間取っちゃって……もう終わりそうなんだけど、もっと早くに連絡すれば良かったかも……ゴメンね」

 こんなことでカリストが文句を言ったり不機嫌になったりしないことは判っているけれども、ちゃんと謝らないと。カリストは案の定というか、特に問題があるような素振りも見せずに、てれてれ笑う。

『えへへ~♪ だいじょぶだよ~♪ 今日はいっつもよりも長くお昼寝したし、ぜんっぜん眠くならないから、イオが来るまでずうっと起きて待ってるよ~♪』

「そ、そう。ありがとう。なるべく急いで向かうから待っててね……って、あんた、普段より長く昼寝って、それ、今日はほとんど寝てたってことじゃないっ!?」

『あはは~♪』


 どうにか仕事を片付けて、プレゼントの包みを両手に抱きかかえながら、人混みを掻き分け掻き分けベルリンからポツダムに向かうシャトルに私が乗り込んだのは20時頃だった。カリストへのプレゼントはお菓子の詰め合わせと、会社が発給している共通商品券の束……私は使う必要がないから貯め込んでいたんだけど、結構な額になっていると思う。これでカリストも少しの間はゆとりのある生活ができるかな。直接的にお金クレジットを渡すのもアレだしね。

 ベルリンからポツダムまでの高速シャトルは30分くらい。車内は混んでいたけども、若いカップルや家族連れ、手にプレゼントを持ったスーツ姿の中年男性やOLさん、みんな幸せそうだった。中には仏頂面の独り身の若い男の人なんかもいたけど、まぁ、仕方ないわよね。来年はどうなってるか判らないし。


 ポツダムの駅を出て、タクシーを拾おうと思ったけど、混んでてなかなか捉まりそうになかったから、仕方なく私はカリストのマンションまで走ることにした。そんなに寒くない夜だったけど、雪がパラつき始める。私は雪を舞い上がらせ、白い息を吐きながら懸命に走った。

 カリストの待つマンションの下まで辿り着き、いざ中へ入ろうとした時、どこからともなく突然にカリストの声が聞こえてくる。

「イ~オ~♪」

「?」

 周囲を見回し、それからハッとして上を見ると、カリストは自室のベランダから手を振っていた。私が気付いたことを確認したカリストは長い筒状の何かを取り出して肩に担ぐ。

「……あんた、まさかそれって……」

「イ~オ~♪ メリ~クリスマ~ス♪」

 次の瞬間、凄まじい閃光と破裂音と共にカリストの担いだ筒から色とりどりのリボンと紙吹雪が発射された。キラキラと光を反射する綺麗な七色の紙吹雪がカリストを見上げる私に舞い降ってくる。

「もう……バカぁ……」

 カリストは巨大クラッカーを片付けると、再び笑顔で手を振る。

「イ~オ~♪ はやく来るとイイよ~♪」

 どこかから「うるせえぞバカヤロー!」なんて悪態が聞こえたような気がしたけど、まぁイイわよね、今日くらいは。

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