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KallistoDreamProject  作者: LOV
その3:共鳴しない娘、やがてすべてが一点に
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第8話

「どうして私やガニメデが立て続けに姿を見せたのか……?」

「うんうん♪」

 カリストは自分が不思議に思うことを素直にエウロパに問い質す。

「だって、わたしってば、ずっとイオとしかオハナシしたことなかったし、なのに2日続けてガニメデとエウロパと逢ったよっ? なんかちょと不思議すぎるかなあ……って」

 物心付いてから……と言っても、ここ数ヶ月程度ではあったが、これまでカリストにとって確実に「身内」と呼べるのはイオだけであった。正体不明ながら優しく接してくれたヴァレンタインや、まるで養父のように気をかけてくれる喫茶店のオーナーは、確かに非常に近しい存在ではあったが「身内」と呼べるかとなると微妙である。カリストは彼らを身内同然に考えてはいたが、あくまで彼らは人間であり、バイオロイドではない。

 また先に襲撃してきたリリケラなども厳密には「身内」ではあるのかもしれなかったが、とてもではないがトモダチと呼べるような存在ではない(それでも例によってカリストはまったく嫌うことはできないでいたが)。ただイオだけがカリストと会社を繋ぎ、カリスト自身が会社に帰属する者だということを自覚する唯一無二の証左として、それを知らしめる存在であったのだ。またイオもそれを密かに誇りにしているのだ。

 それだけに、さすがのカリストも立て続けのガニメデとエウロパの来訪には違和感を覚えずにはいられない。そんなカリストのもっともな疑問にエウロパは少しの間だけ沈黙し、やがてクチを開いた。

「それは……きっと単なる偶然」

「んえ~!?」

「私があなたに逢いに来たのは、純粋にあなたに興味を覚えたから。血を分けた同胞として、姉妹として、友人として、そんなに重大な理由はないけど、ただあなたに逢いに来た……それがそんなに不自然?」

 こういう言い方をされてしまうと、オヒトヨシなカリストは何も言えなくなる。正直なところ釈然とはしないのだが、ムリヤリに自分を納得させてしまうより仕方なかった。

「そ、そだよねぇ♪ なあんにもヘンじゃないよっ♪ えへへ~♪」

「私にはガニメデの真意は判らないけど、もしかするとガニメデも同じような気持ちであなたに逢いに来たのかもしれない。それに、あなたは、あなたが自分で考えているよりもずっと、みんなから愛されているのだと思う」

「え、えへへ~♪」

 エウロパから唐突に褒められて恥ずかしそうにモゾモゾと身じろぎして照れ笑いするカリスト。例えばイオからは深い愛情と友情を感じている。だがイオに限らず「みんなから愛されてる」それが真実だとすれば、それはカリストにとって何よりも喜ばしいことだった。

「えへへ……えへへ~♪」

「そう、愛されている。あなたが望むと望まざるとに関わらず、誰からも、必要以上に……」



『え? それで終わり? それだけ言って帰っちゃったわけ!?』

「うん♪ エウロパってば、とってもとってもカワイイ女のコだったよ~♪」

 ホエホエと笑うカリストに対してイオの表情は渋い。

『う~ん……連日のガニメデとエウロパの来訪……今まで何の気配も見せてなかったのに、どう考えても何だか不自然よねえ……』

「だから~。エウロパが言ってたとおり、きっと偶然なんだってば~♪」

『まったく……あんたは気楽でイイわよねえ……』

 イオは呆れ顔でカリストを窘めるばかりだったが、今度はカリストの表情が曇る。

「んう~? エウロパは血の繋がった姉妹なんだよっ? わたしともイオとも血の繋がった同胞なんだよっ? ぜったいぜったいヘンなコトとかしないと思うし、だから疑ったりするのイヤだなぁ……イオだってわたしにウソついたり騙したりしたコトなかったよねっ?」

 真剣に論じるカリストであったが、その底抜けなオヒトヨシさ加減にイオは苦笑せざるを得ない。

『……私が言うのもアレだけど、あんたのこと思いっきり騙してたじゃない、私……』

「あ……そだったっけ……えへへ~♪」

 笑って取り繕うカリストではあったが、そのヒトの良さは最大の長所であると同時に最大の欠点でもある。それを知っているイオは危なっかしくて気が気ではなかった。

『こ、こんなこと言いたくもないんだけど……その、何というか、そ、その、わ、私だけは絶対にあんたを裏切ったり騙したりしないけど、いくら会社の同胞だからといって、わ、私以外のバイオロイドをあんまり信用しない方がイイと思う。わ、私も、あ、あんた以外のバイオロイドのことをココロの底から信用する気にならない……あんただけが私にとって、そ、その、とととと特別だからっ!?』

「うん♪ うんうん♪」

 嬉しそうに頷くカリストに気持ちが和むイオであったが、そんなカリストの想いに反して、ガニメデやエウロパが会社からどのような任務を与えられているのか、いよいよ本腰を入れて調査する必要が出てきたため少しだけ憂鬱な気分になるのだった。

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