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KallistoDreamProject  作者: LOV
その3:共鳴しない娘、やがてすべてが一点に
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第5話

 カリストとガニメデはベンチに並んで座り、ひたすらモグモグとクチを動かしている。

「美味しいねぇ♪」

「ん、うん、まあまあかな」

 ガニメデは一向に警戒心を抱く様子のないカリストに辟易としつつも、カエルグミを食べるのに黙って付き合っていたが、ついに耐えかねて訊かれるのを待たずに話し始めた。

「あの、さ、僕が何しに来たとか、そういうこと気にならない?」

 クチに入っているカエルグミを飲み下しながらカリストは笑顔で応える。

「んう~? あんまし気になんないかなぁ?」

「同じ会社で創られた同胞バイオロイドだから無条件で仲間で、何も危害を加えられないとか思ってるワケじゃないよね?」

「思ってるよ~♪ だって兄妹だも~♪ ガニメデもイオとおんなし、会社のヒトなんだよねぇ?」

 カリストは脳天気なものだ。もっとも、コレはカリストならずとも普通に至る考えではある。素性の知れない社外の第三者ならともかく、ガニメデは明らかに会社から遣わされたバイオロイドであり、あまつさえ(そのようなシリーズ展開が為されているかどうかは不明だが)カリストやイオと同じく「ガリレオ衛星に因んだ名前」が与えられているのだ、特に近親の同胞という予測ができる。

「衛星の順番から言ったらイオが1番目で、ガニメデが3番目で、わたしが4番目だけど……ガニメデのが先に創られたのかなっ?」

「うん、そうらしいよ」

「そだ~! ねぇねぇ♪ そいじゃきっと2番目に創られたエウロパって名前のバイオロイドもいるんだよねぇ?」

「ん、たぶんいると思うよ。そういう説明を受けたし……逢ったことはないけど……」

「やっぱしそなんだ~♪ えへへ♪ 早く逢ってみたいなぁ♪」

 カリストは気分よさげに笑っているが、ガニメデの表情は渋い。ひとつ咳払いしてカリストの注意を促す。

「ええと……ハナシを戻すけど……だからさ、僕が君に危害を加えないなんて確証は無いのに、どうして平然としていられるわけ?」

「ふぇ? えと、だから……おんなし会社で創られた兄妹だから……」

 それを聞いたガニメデはいよいよ肩を竦めてウンザリしたような顔をする。もっとも、普段からイオから「お小言」ばかりもらっているカリストにとって、他人が自分に呆れたような態度を取ったところで今さら気にもならないのだが……。

 しかし、ガニメデのソレは呆れるというよりも嘆きのソレであった。

「はあ……ハナシには聞いていたけど、まさかここまでゆるんでるとはね……」

「んう~?」

 戸惑いの表情を見せるカリストに、ガニメデは少し冷たい視線を向けながら詰るように言う。

「だいたい……僕が会社のバイオロイドだっていう裏付けはあるの? もしかしたらクチから出任せを言ってるだけかもしれないんだよ? 君を誘拐したり破壊するために敵対勢力が差し向けた刺客かもしれないよ?」

「んう……」

「まあ、君だけを責めても仕方がないか……元をただせば、これは明らかにイオの職務怠慢、君を甘やかしすぎたことが原因だからね……これだから変に色気づいたバイオロイドは足手まといだって言ってたんだ」

 それを聞いたカリストは動揺した。と言うか、珍しく気分が悪くなった。今まで、こういう気持ちになることが基本的に皆無だったため最初は何なのか判らなかったのだが、どうやらカリストは少しばかりカチンと来たのだ。

「どして~? イオはわたしのことサポートをしてくれてるけど、わたしのママでも先生でもないよっ? わたしが悪いのはわたしのせいだから、イオのこと、悪く言ったらイヤだよっ!」

「そんな言い分が出るなんて、ますますタチが悪いよ。イオのことが好きで悪く言われたくないって気持ちは判らなくもないけど、そんなこと言ったって、君は自分ひとりで自分の責任を取れるのかな? 君も僕もイオも会社の備品みたいなものなんだよ? 僕らの責任は会社に帰属して、僕ら全員が等しく負うべきものなんだよ……いわば“バイオロイド”という巨大な集合システムの中の部品ユニットでしかない。各個が互いを補完する集合体……」

「むつかしいこと判んないけど、そんなの少しヘンだよっ?」

 居たたまれなくなって思わずガニメデを遮るカリスト。そういえば以前、イオにも同じようなことを言われたのを思い出した。何か意見しようと思っていたが、もしかしたら自分の考えは本当は間違っているのではないかという気になり、それ以上は言葉を継げなかった。

 だが、ガニメデはイオほどは優しくはない。どのような意図があってかは判らないが、カリストを徹底的にヘコませる腹積もりらしい。

「だいたい、君は何のために“こんな生活”をしているのか考えたことはある? 最初に言っておくけど、何も僕は君が妬ましくてこんなことを言いわけじゃないよ? 君が何もせずブラブラしている……手持ち僅かな生活費全部をカエルグミに注ぎ込んだり、見ず知らずの他人に声を掛けられて気易く応じたり、そんな益体のない生活をしている間、僕らはずっと会社で働いてるんだよ? そこに何か違和感を覚えないかな?」

「んう……」

 僅かばかりのアルバイトをしているとは言え、ほぼ若年無業者ニートのカリストは、まったく返す言葉がない。もちろんカリストの「益体のない暮らし」は会社の指示によるモノではある。それはイオからハッキリと告げられている。カリストは人間社会で思うように好き勝手に生活するというのが仕事なのだ。

 しかし、いかに厚顔無恥なカリストでも、それでもやはり後ろめたさというか、漠然とした罪悪感はあった。いつもイオに迷惑を掛けては世話を焼いてもらうという生活(と言うか自分自身)に、薄ら寒い不甲斐なさを感じてはいたのだ。

「んう……」

「いや、いいよ。それが君の仕事であり任務だってことは重々承知してるから。それに元から気の利いた回答なんか期待していないしね。ただ、やっぱりイオは適任じゃなかったかもしれない……」


『ホントは“エウロパ”の発音はドイツ語的には“オイロパ”になるのよね』

「そだねぇ♪ 通貨のユーロもドイツ語だと“オイロ”って発音するねぇ♪」

『“Eu”の部分がドイツ語だと“オイ”になるのよね。日本語や英語に馴染んでるヒトにしたら少し気持ち悪いかもしれないわね』

「でも、わたしたちの名前ってばギリシア語やラテン語に準拠するから、普通に“エウロパ”とかって発音して問題ないんだって~♪」

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