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KallistoDreamProject  作者: LOV
КаллистоМечтаПроект:Другая точка зрения
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Другая точка зрения:тридцать седьмой

 あたしの愛する同胞であり姉妹であり同僚(実質的には上司みたいなもんだけど)のテティスに怒鳴られながら、あたしは何人かのアンドロイドがすでに乗り込んで待機していた作業用のバンに押し込まれた。事前に少しの説明はあったけど、どこへ行くのかも具体的に何をするのかも聞かされていない。

「ちょ! ちょっと!? あたしはテティスと一緒に行くんじゃないの?」

 気の抜けたようなあたしの文句にテティスは普段通りに厳しい態度と口調だ。

「目的地はほぼ同じだが、今回は対応しなきゃならない対象が多いから、隊を二手に分けて、それぞれを私とお前で指揮することになった。だから今回の任務ではお前の権限は普段より一段階上がっている……もちろん今回に限っての臨時措置だ。任務の詳細は道すがら彼女らに聞いて、現場でどうすべきか自分で考え、判断してくれ。たまにはリーダーとして仕事をしてみろ!」

「は? リーダー? あたしが? あたし、テティスの指示がないと何やればいいのか全然わかんないし……」

 もちろんあたしだってこう見えても「片付け屋エンゾーガー」の端くれ、任務に際して何をすべきかはちゃんと判ってる(「判っている」イコール「やれる」ってわけじゃないけどね)。こういうとき、どうしてもテティスにワガママ言いたくなっちゃうんだよね。甘えてるのかな? 怒るテティスの顔を見たいだけなのかな? あたし自身、何でなのかはよく判らないけど、こうやって突っかかるのが恒例だし、そんなあたしにテティスが生真面目に激昂するのも恒例。もうほとんどコントみたいに思えてくる。あたしたちのやりとりを黙って聞いている周りのアンドロイドたちも心なしかニヤニヤしてるし。

「ふざけるな! お前だって一端のバイオロイドだろう!? いいかげんバイオロイドとしての責任感や矜恃を持て! いいか!? いつもヘラヘラふざけたことを言ってるお前ですら、そこいらへんの秀才だ天才だ持て囃されているような人間なんかよりも遙かに……」

「リーダー手当って出るのかな?」

 ニンマリと笑いながら話の腰を折るあたしに、ついにテティスは怒りを通り越したのか急に冷静になる。

「会社の規定にちゃんと書いてあるから、たぶん、ちゃんと出る。そうなるように私が申請しておく」

「あ、それなら嬉しい。少しヤル気でた」

「ならよし! 行け!」

 テティスはすぐに厳しい口調に戻ってバンのドアを強引に閉じかかる。

「あ、あと危険手当……」

「よしいいぞ! クルマを出せ! 行け行け行け!!」


 どこに向かってるのかも知らないまま、あたしはバンの車窓で頬杖を突いて外の景色を眺めていた。アンドロイドたちはあたしから何の指示を受けるまでもなく、女王蜂に甲斐甲斐しく尽くす働き蜂のように、理路整然と規律正しく、最も効率の良いやり方で自分に課せられた職務を果たしていく。そう、あたしなんかがいる必要はない。あたしがヘタにクチを出したり手を貸したりすればかえって迷惑、彼女たちだけで充分に問題なくやれる仕事なのだ。

 あたしは普段から軽薄で皮肉っぽくて怠け者だけど、こう見えてもちっぽけな自尊心くらいある。テティスが望んでいるような意識の高さかどうかは判らないけど、バイオロイドとしての矜恃だってあるにはある。それにあたしは自分のことを無能だとか、役立たずだなんて思ったこともない。バイオロイドとして創り出されて、いまこうして仕事を与えられて生きているんだから、これはもうそれだけで有能の証みたいなモノ。生まれながらの天才児。スタイルだってイイし、おっぱいだってお尻だっておっきい。なによりバイオロイドにしては少し品が無いってとこが自分でも凄く好き(これってあたし的には他のバイオロイドと一線を画す最大のアピールポイントだと思ってる)。

 そんなあたしは、だから逆に彼女たちだけでやれるような仕事に駆り出されること自体にはプライドが傷ついたりはしない。あたしはバイオロイドで、彼女たちの責任者なんだから、同行するのは当たり前のこと。あたしが言いたいのはそういうことじゃなくって、あたしみたいにブーブー文句ばっかり言ってるような効率の悪いバイオロイドが何のためにいるのかってこと。どうせ創るならバイオロイド全員をテティスみたいな真面目で仕事熱心で、でも実は凄く優しくて思いやりがあるような性格に創れば良かったはずなのにね。

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