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KallistoDreamProject  作者: LOV
КаллистоМечтаПроект:Другая точка зрения
149/150

Другая точка зрения:тридцать шестой

 赤と黒だけで構成された視野の中、今までレールガンの弾丸にだけ向けられていた真っ赤な円環と、その弾丸にジリジリと砕かれている左の手のひらと手首に関するアラートとは別に、背後からの致命的痛打を示すアラートが突然に発現する。ほんの僅かだけ遅れて、左腕の付け根と肩甲骨の間に強烈な激痛。どうやら私はレールガンの弾丸によるものとは違う何かに左上腕から左肩にかけて、外部から相当に酷いダメージを与えられたものらしかった。


 LA8567からLA9876ストリング……破断[致命的]

 LA7655からLA8152ストリング……損傷

 LA10587からLA12587ストリング……損傷

 LARm854からLARm859リールモータ……損傷

 LSL51リールモータ……損傷

 LSL53リールモータ……全壊[致命的]

 LSL48から54リールモータ……自壊

 LBrU31リールモータ……損傷

 LBkU15リールモータ……自壊

 LSJ1(m)関節……損傷

 LSJ1(f)関節……損傷

 LPJ関節……全壊[致命的]

 左腕機能……完不全[致命的]


 人間の筋肉や腱と同じように絶妙な均衡の上で成り立っている左腕の駆動系のバランスが崩れ、過負荷や無負荷に耐えられなくなったリールモータが次々と悲鳴を上げながら機能を停めていく。絵に描いたような負の連鎖。


 *左腕機能の80パーセント以上90パーセント未満が喪失しました*

 *余過剰電力の供給を遮断します*


 **左腕機能の全停止を要求します**

 **左腕機能の全停止を承認されました**

 **左腕機能の全停止を確認しました**


 これはもう、私の左腕は肩から指先までまったく役に立たない廃品になったということ。だけどそんなことよりも私を驚かせたのは、アラートの文字色が敵対色である赤ではなくて、味方の行為による結果であることを示す青だったことだ。左腕がまったく使い物にならなくなったのは、誰でもない、愛する同胞、ネレイドの仕業だったという事実。でも特に憤慨するとか、そういう気持ちにはならない。なぜネレイドが私の左肩を破壊したのか、その理由は明白だったから。


 ***左腕の全制御を解放します***

 ***左腕を物理的にパージします***


 「物理的にパージ」するというのは、読んで字の如く、物理的に切り離すということ。そのまんまの意味。私たちの肩や股関節には「四肢がまったく役に立たなく」なってしまって「それが邪魔にしかならない」と判断された場合に、それぞれを即座に切り離せるように小型の指向性炸薬が仕込まれている。そんなことを思い出すよりも先に、私の左肩は瞬間的に破裂して真っ赤な疑似血液の霧が散り、次いで噴き出した液化窒素や液化ヘリウムが疑似血液を微細な氷の結晶に変えて、それが魔法のように空中をキラキラと漂うのが見えた。

 そして今となっては私の持ち物ではなくなった私の左腕は、レールガンの弾丸を手のひらに握りしめたまま、物凄いイキオイで小屋の壁を突き破り、そのまま戸外へと吹き飛んでいくらしかった。だけれども、無くなってしまった左腕のことを考えても今は仕方がない。左腕をもぎ取られた私は大きく体勢を崩してはいたけれども、レールガンの弾丸にされながら耐えているよりはずっとマシな状態だった。あのままの状態が続けば、左腕どころか間違いなくカラダごと持っていかれたはずだろうから、ネレイドが下した判断と行動は正しかったし、ただただ私は感謝しかない。

 ただ、左腕をパージしたことによって私が戦力外になることは明らかだった。もうすぐにやってくる激痛とショックは気合いで押さえ込めるかもしれないけれども、左腕の駆動用に送出されていた電力の余過剰分のカットオフのために対消滅炉の出力を一時的に下げざるを得ないし、冷却用の液化ガスもかなりムダにしてしまっている。私はもうオーバーヒート寸前だった。

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