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KallistoDreamProject  作者: LOV
КаллистоМечтаПроект:Другая точка зрения
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Другая точка зрения:тридцать первый

 飛翔してくるレールガンの弾丸から狙撃手スナイパーを護るために腰を浮かせかかっていた私だったけれども、その時、誰かが躊躇いもなく部屋に飛び込んできたのを察した。上から下まで真っ黒な戦闘制服を身に纏い、ロングのストロベリーブロンドを流星の尾のように靡かせながら一直線に私に向かって跳躍してくる、私なんかよりもずっと大人っぽくて美しい少女。普段ならこんな考えは浮かびもしなかったのだけれども、私は直感的に彼女が同胞バイオロイドだって確信していた。その紫がかった青い瞳をチラッと覗き込むと、そこに型式XX50cz-JcIII-RMと読み取れる。名前は……デスピナ! 間違いようもない、正真正銘の私の愛すべき姉妹!

 その時まっさきに私が思ったのは、レールガンに繋がれた私の姿をデスピナに見られてしまって恥ずかしいということだった。こんな切迫した状況で、すごくどうでもいいバカバカしいことだったかもしれなかったけれども、その時の私は真剣にそのことばかりを気にしていた。せっかく会えたのに、いくら任務のためだったにしてもレールガンの一部になっているなんて殺伐とした格好ではなくって、もっと、何というか……もっと可愛らしい姿で会いたかった(私自身が可愛らしいかどうかは別にして)。少なくても真っ黒な戦闘制服なんて、女のコには似合わない。

 それでも私は闘うために創られた、会社に所属する戦闘用バイオロイドの端くれ。やるべきことをやらなくてはいけないし、それが唯一の誇り。そしてそれは彼女も同じはず。だからデスピナが何をしようとしているのか、もう私には判っていた。私が狙撃手スナイパーを護ろうとしているのと同じように、彼女も身を挺して私を護ろうとしている。

 とても哀しいことだけれども、私がそうしようとするように彼女にとってもそれは当たり前のことで、仮に言葉を交わすような時間的余裕があったとしても、押し留めることができないのは判っていた。そういった意味では私たちにとっては会社の任務なんて二の次で、何より優先すべきなのは死をも厭わず同胞を護ること……決して死にたがりなワケじゃないけれども、護るべき同胞を護れずに生きていくくらいなら死んだ方がずっとマシに思っているのかもしれない(なんだか狂信者みたいだけれども)。ああ、それにしても私たちは信じられないくらい高性能なのに、どうして意思疎通の方法が人間と同じ程度の、会話やアイコンタクトや表情を読み取るくらいでしか成立しないように創られているんだろう。短距離の高速通信機くらいなら全然余裕で搭載できるはずなのに、本当にもどかしい!


 金色に輝く矢が私たち目がけて飛翔してくる。もう目の前。デスピナは飛んでくるレールガンの弾丸の射線を遮るように私の前に躍り出た。弾丸に対して左腕を伸ばして手のひらを真っ直ぐに突き出す……まるで弾丸を受け止めようとしているみたいに見えるけれども、いくら防弾性能の高いグローブをしていても、いくら戦闘用バイオロイドだったとしても、レールガンの弾丸を手で受け止めるなんて不可能。死にはしなくても手酷いダメージを受けるのは間違いない。即座に私は悟る……デスピナは直進してくる弾丸に僅かなチカラを加えて他へ逸らすつもりなのだ。

 もちろん軽いレールガンの弾丸は質量弾と言うよりもエネルギー弾に近い振る舞いをするし、着弾の瞬間には点への貫通力よりも面への浸透力の方が強いから、普通の弾丸のように跳弾させることはできない。要は壁に叩き付けた水風船のように破裂する。飛び散った弾丸の、その破片(?)の質量はほぼゼロと見なしても差し支えないし、破片と言うよりは金属蒸気のようなものだから狙撃手スナイパーがケガをすることもないと思う。たぶん。それよりも恐ろしいのは着弾時の衝撃。真っ正面から弾丸に当たれば、その衝撃は私たちなんか何十メートルも吹き飛ばしてしまうだろうし、こんなボロ小屋なんてバラバラになって、たぶん狙撃手スナイパーも巻き添えで大怪我をすることになるだろう。

 もう位置的な関係で、これはデスピナに一任するしかない。だけど、仮にデスピナが巧く弾丸を逸らすことができたとしても大きな衝撃とダメージを受けることは間違いない。私にできることは、多少なりとも彼女の受ける衝撃を肩代わりすること、そして私の狙撃手スナイパーが即座にカウンタースナイプしてくれることを信じる、これくらいしかなかった。

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