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KallistoDreamProject  作者: LOV
КаллистоМечтаПроект:Другая точка зрения
143/150

Другая точка зрения:тридцатый

 あたしはテティスの命令(実際はテティスとあたしは組織図上だと同格ってことになってるから命令されるイワレなんてないんだけど)で会社の黒塗りバンに乗せられて、ポツダムの田舎道を走ってた。みんなと仲良くするのは楽しいから好きだけど、仕事に関しては自分のやりたいようにやる主義のあたしは、ひとりでバイクで行くからって言ったのに、もちろんテティスはあたしのワガママを聞く耳なんか持ってなんかない。

 テティスが言うには「今すぐ黙ってバンに乗るか、さんざん私に殴られ蹴られてから今すぐバンに乗るか、そのどちらかしかない」なんて、はんぶん脅迫されるみたいにしてあたしは会社のバンに押し込まれたわけなんだけど、こういうときってモメたらモメたぶんだけテティスと会話が増えるから、それはそれで嬉しい……ってコレじゃなんか変なヒトみたいだな、あたし。

 ところでテティスから押し付けられた仕事の内容は……えっと、まぁあたしらの仕事なんていつもこんな感じのばっかりなんだけど、ズバリ言うと人間の死体の回収! あ、念のために言っておくけど、あたしが殺したりするんじゃないからね? だいたいあたしは戦闘用バイオロイドじゃないからそういうの苦手だし。それはともかく、誰かに殺されたのか、事故なのか、自殺なのか、それはあたしには判らないけど、あたしの向かってる先には人間の死体がひとつかふたつ転がっていて(なかったら困る!)、たぶんその死体の存在は会社の不利益になるから、世の中に知られる前に回収して隠蔽するってわけ。

 あたし個人にとっては「会社の不利益」なんて、正直どうでもいい。だいたい、世の中の全部が敵に回ったって会社にとっては大した問題じゃないはずなんだけど。いざとなったらスイッチひとつでありとあらゆる文明社会のシステムを麻痺させることだってできるし、世論のコントロールだって朝飯前(1世紀も前からずっとやってるし)。その気になれば今からすぐにでも世界を相手に戦争だってできる(そして間違いなく勝つし、文明や人間を根絶やしにすることだってできる)。こんな悪魔じみた会社が、たかだか人間ひとりふたりの死体でどうこうなるわけないと思うんだよね。

 こういうとき、あたしらを突き動かすのは会社への忠誠心なんかじゃなくって、ただ血を分けた同胞のため。同胞なんて大袈裟で味気ない言い方かな? なら、大好きな仲間たち、愛すべき姉妹たちのため。彼女たちをたすけ、護るために、あたしたちは生きてる。そして生かされてる。いつもすっごく聞き分けが悪くてヤキモキさせてばっかりのあたしだけど、テティスのことが大好きだから、彼女のために黙って(黙ってないけど)言うことを聞いてるってワケ。

 あたしには「部下」と呼べるアンドロイドはいない。社内では「片付け屋エンゾーガー」って呼ばれてるウチの課だけど、所属するアンドロイドは全員テティスの部下。さっきあたしとテティスは同格だって言ったけど、肩書きが同じだけで待遇は天と地くらい違ってるわけ(そりゃ会社だってバカじゃないし)。自主的に完全週休2日の上に定時出社定時退社のあたしと、この3ヶ月、ほとんど自室にも帰らないで1日に26時間くらい仕事してるテティスとじゃ比較にならないのも当然よね(ウチの会社はちゃんと残業代や深夜手当も出してくれるから、あたしとテティスの給料は3倍くらい違う)。

 だから、あたしはなるべくテティスの手が人間の血で汚れないように、「そういう仕事」は率先して引き受けるって決めてる。テティスは真面目だから、たとえ自分で手を下したんじゃなくっても「人間の死」を真っ正面から受け止めようとしちゃうから。その点、あたしはバカっぽいし図太いから、人間の轢断死体だろうが生焼けの焼死体だろうが全然平気なんだよね。向いてるの、こういうの。

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