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KallistoDreamProject  作者: LOV
КаллистоМечтаПроект:Другая точка зрения
123/150

Другая точка зрения:тринадцатый

 窓の外、すぐ目の前にライトアップされたブランデンブルク門が見える。ライトアップされているから威容があるように見えるけど、よく考えたら単なる巨大な水門のようにも見える。意外と厚みもないし。もう夜の8時も過ぎたというのにまだ観光客がウロウロしているけど、何てことはない旧世紀からの遺物、正直、世界でも有数の「ガッカリ観光スポット」だと私は思っている。そもそも、老朽化が進んだブランデンブルク門は定期的に構造体を入れ替え続けて「新陳代謝」しているから、旧世紀のブランデンブルク門とは似て非なるモノになっているのに。だけど、そういうことを言うとみんな怒り出すのでクチにすることはない。

 で、私は今、高級ホテルのアドロン・ケンピンスキーの最上階にあるプレジデンシャルスイートにいる。バラを浮かべたバスタブの中でシャンパングラスを手に。まぁ、正直、自分でもバカっぽいとは思うんだけど、せっかくだから一度やってみたかったのよね。バイオロイドの中でも高給取りの私だけど、さすがにおいそれとこんな部屋には泊まれないし。なんだかよく判らないんだけど、イオの部下のアンドロイドがやってきて、イオがケンピンスキーの部屋を取ったはいいけどキャンセルせざるを得なくなってしまったとかなんとか。だから誰かに譲りたいとかどうたらこうたら。部下の困り事は上司である私が何とかしてあげなくちゃいけない。前から泊まってみたかったし。

 ……というか、イオが何故にベルリン市内で高級ホテルを予約する必要があったのか? そっちの方が気がかりだ。私のような成熟した成人女性として創られたバイオロイドは稀少で、ほとんどのバイオロイドは世間知らずでロマンチストな思春期あたりの年齢に設定されている上に、みんな絵に描いたような美少女揃いなので、いろいろ「悪い虫」が寄ってこないとも限らない。心配だ。

 ……というか、イオはカリストとすっかり良い感じらしい。私の心配は杞憂だろうと思う。私はカリストに直接会ったことはないけど、立場上、それなりに彼女の「人となり」は知っていた。まず見た目、これはグウの音も出ないほど良好なのだ。私が言うんだから間違いないと思う。本人も自覚しているらしい。案外と図太い。次に性格だけれど、マザーグースが言うところの「お砂糖」+「スパイス」+「素敵なモノ」だけでできているという女のコの主成分のうち、カリストは「スパイス」を切らしていて、ほとんど全部が「お砂糖」と「素敵なモノ」でできているような性格だとか。なので、ちょっと私にとってカリストは甘すぎる。実の妹とだと考えれば、とっても楽しいとは思うけどね。

 そんなカリストにイオはベタ惚れ。もう見てらんないくらいベタ惚れ。見てるコッチが恥ずかしくなってくるくらい。あのコが今の部署に配属されて今の任務に就いたときに初めてカリストの存在を知ったみたいなんだけど、写真を見た瞬間に顔真っ赤なんだもん。いちおう建前上は監視者と被監視者の関係にあるバイオロイド同士は直接に逢ったらダメってことにはなってるけど、そんなのはあくまでも建前だから全然気にするコトじゃないのに、イオったら、音声通話だけで、しかも偽名まで使ってたっけ。何を考えてそんなことしてたのか判らないけど、追求したら怒っちゃった。

 私みたいに少しスレた(というか年齢相応の分別のある)性格ならいざ知らず、あのコたちはみんな可哀想なくらい愛情や友情に直向きで、本当に味も素っ気もない世界だけれども、きっとどこかに信じるべきモノがあると願って生きている。私も、そうであって欲しいと願う。

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