表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
KallistoDreamProject  作者: LOV
КаллистоМечтаПроект:Другая точка зрения
115/150

Другая точка зрения:пятый

 俺はコンスタントに仕事を請けていたが、かなり適当にやっていた。気乗りしなければヒマでも断ったし、気乗りするときは安くて危険な仕事でも請けた。思想信条などクソ喰らえだったが、依頼者の意気に感じて仕事を請けることもあったし、何かが気に障って蹴った仕事もある。相当いい加減だ。よくも無事でここまで生きてこれたものだ。

 仕事で稼いだカネの大半は武器弾薬や装備の類に消える。軍産複合体やら「死の商人」やらが消え失せて、世界は表向きは平和になったわけだが、先にも言ったように紛争や小競り合いは依然として多発しているため需要過多になってしまい、結果、武器弾薬の価格はとんでもなく跳ね上がってしまったのだ。なので、一定水準以上の装備を維持するのには、とにかくカネがかかった。それ以外のカネの使い途は、だいたい酒だの食い物だの遊興費として散財した。傭兵などやっていると刹那的になるものだ。俺は生まれてから今日まで依然としてロシア人ではあったが、個人傭兵などという非合法活動(俺は数え切れないほど人を殺しているのだ)をしている手前、法律上は単なる大量殺人者であると同時に、祖国からは棄民のような扱いとされており、もう戸籍も民権もない。この扱いは一見すると冷酷なように思えるかもしれないが、むしろ祖国は俺の行状に目を瞑ってくれているわけで、温情とさえ言えた。もちろん弊害もある。俺は死ぬまで国の保障を一切受けることができないのだ。だから同業者の中には老後に備えて貯め込んでいる連中も少なくはなかったが、俺はそんな気にはならなかった。老後と呼べる歳まで生きていられる気がしていなかったのだ。

 そんな考えだからして、俺は仕事に対して適当にやってこれたのだろう。あまり深いことを考え出すと(これには人間の生き死にも含まれる)、この商売はやっていられなくなる。俺が今までに殺した連中にも愛すべき家族や友人がいただろうし、護るべき者や殉ずるべき信条があったに違いないが、そんなことに思いを馳せたところで、引き金を引く指に迷いが生じるだけだ。俺はいつでも死ねるよう適当に生きているが、回避すべき死を進んで受け容れるほどの愚か者ではない。自分が生き延びるために、戦い続けなくてはならないのだ。

 そんな中、俺はいつもと同じように、何気なく仕事を引き受けた。普段は東欧や中央アジアを主戦場にしている俺だが、珍しく西ヨーロッパでの仕事だった。依頼主はハッキリしない。仲介屋が言うには、中近東だかそこいらからの仕事らしかったが、別にテロの片棒を担ぐというわけでもなさそうだった。その依頼の内容は、少々奇妙であった。

 取り敢えず俺はベルリンの南西、ツェーレンドルフ区に潜伏し、次の連絡を待つとのことだった。その次の連絡というのがミソで、明日になるかもしれないし、1年後になるかもしれない、というものだ。なんとも漠然とした依頼内容ではあるが、その間の雇い料はもちろん、衣食住や使用する武装も世話してくれるとのことで、さらに成功報酬は別途支払うとのこと。俺は二つ返事で諒解した。依頼の詳細は追って連絡を待てとのことだったが、ざっとした説明では、連絡を受けたら指定された場所に移動し、指定されたターゲットを長距離から狙撃するという内容だ。とは言ってもテロや暗殺の類ではないらしい。仲介屋の説明では、まず命の心配はしなくても良さそうだが、そんなものはアテにはならない……が、それを差し置いても、とにかく破格の待遇だ。俺は殊更に精密狙撃が得意というわけではないのだが、使用する狙撃銃は最新型のスナイパーライフルで、半自動追尾照準機構を備えているとのことだ。

 強大なオイルマネーを失った中東の連中だが、それでも世界で石油がまったく不要になったというわけではない。あるところにはあるものだ。俺はクライアントが用意してくれた仮の身分、ロシアから来たフリージャーナリストのウラディーミル・バシキロフなる人物として、ドイツの首都ベルリンに向かうこととなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ