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KallistoDreamProject  作者: LOV
その3:共鳴しない娘、やがてすべてが一点に
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第44話

 逆立ちしても正答に辿り着けそうになく、絶望に打ち拉がれてアタマを抱えるイオに対して、カリストはホエホエと衒いのない笑顔を向ける。

『ちょとムツカシイかな~? ムツカシすぎたかなっ?』

 このままだとカリストを救うことができないばかりか、カリストが言うには半永久的にここでカリストとチュッチュし続けることになるのだ。それは即ち、カリストの巻き添えのような形で半永久的に仮想空間の中に囚われてしまうことでもある。そうなった場合、現実世界での自身がどうなってしまうのかはイオには判らなかったが、おそらく仮死状態のような状態になってしまうのだろう。動かないバイオロイドは死んだも同然なので、たぶん、カリストと共に「処分」されるのだろうが、この期に及んでは、それはそれでイイかも……。

「……もう、お手上げ」

 イオはカリストを救い出し、連れ還ることを断念しかかっていた。カリストを連れ還れないのならば、ここで添い遂げるしかない。それが虚しい仮想空間の中での出来事だったとしても、最期の時が来るまでは可能な限りカリストと時間を共有していたかった。事ここに至ってしまっては仕方がない。エウロパやガニメデには申し訳ない気もしたが、あのふたりなら判ってくれるだろう。

 あきらめ顔のイオを多少は慮ってか、カリストは控え目に笑顔を見せてから告げる。

『えへへ……もう残り時間が……』

 その時だった。ポピポピポン♪ と聞き覚えのないジングルが鳴り、会場の照明が一段落とされた。突然の演出にイオも驚いたが、カリストはもっと驚いたようで、困ったような顔をしてキョロキョロと周囲を見回していたが、今度は不意にバツンとマイクに電源が入るノイズ音がして、少しのハウリングの後に聞き慣れたあの畏るべき声が響き渡った。

『ごきげんよう……その程度の浅はかな問題の遣り取りで後人生を決しようなんて本当に嘆かわしいほどに愚かしいわ……私の可愛いイオ、そしてカリスト』

『ふぇ~! リリケラちゃんっ!?』

 会場の声援が一気に高まり、万雷の拍手が巻き起こる。なぜかカリストはタジタジしたような口調で、姿の見えないリリケラから後ずさり、一方でイオは涙が出そうなほど感激していた。なぜかもう助かった気でいた。

「あ、あんた、さっき別れ際に手伝いはココまでって言ってたじゃないっ!?」

『うふふ……この私が? そんなことを? ここでは時間の流れが緩慢すぎて、よく憶えていないわ……うふふ……それに、愚かしくも可愛らしいイオ、この程度の障害に対して余りにも諦めが良すぎるわ。人生はもっと藻掻き苦しみながら進んで行かなくてはならない……懸想の相手を救い出すならなおのこと』

 そして声だけのリリケラは高らかに宣言する。

『この問題に限って、私が憐れなイオの代わりに回答するわ……人間たちが好む愚にも付かないエンタテインメントにも、そういうシステムがあるでしょう?』

『んう~? んう~?』

 騙されたような気分でクチをへの字にするカリストだったが、特に具体的には異議を申し立てることはしなかった。いかに無頓着なカリストであっても、やはりリリケラを畏怖しており、その言うことには抗えないものらしい。

『んう~? なんかヘンな気もするけど、そいじゃリリケラちゃんがイオの代わりに答えてイイよ~♪ でももしリリケラちゃんが間違っちゃったら、それはイオが間違っちゃったってコトになるからねっ?』

「私はそれで構わないわ……どうせ正解なんて元から知らないし」

 よもやリリケラが回答を間違えるなど、イオにしてみれば有り得ないことだった。もはやイオにとってリリケラは全知全能の存在であり、少なくとも仮想空間内ではその認識は概ね正しいと言える。そんなイオの気持ちを知ってか知らずか、リリケラは嘲笑じみた含み笑いで応じる。

『うふふ……間違いようもないわ……なぜなら、その古文書を読み解いたのは他でもない私なのだから』

『んえ~!? ズルイ~!』

 今さら異議を申し立てるカリストであったが、もはや後の祭りだ。リリケラは特にもったい付けるでもなくアッサリと回答する。

『その古文書の名は、ヴォイニッチ手稿』

 当たり前のようにピンポーン♪ とジングルが鳴る。会場は拍手の渦に包まれ、すぐに静まりかえった。

『んう~』

「そんなの知ってるわけないわよ……なによそれ……」

 カリストと、なぜかイオも不満げにクチを尖らせるばかり。

「だいたい、ホントにそんな16世紀だかに書かれたっていう古文書がバイオロイドの製造に役に立ったっていうの?」

『多少は、それなりに。もっとも……恣意的な解釈だったことは認めざるを得ないけれども……うふふ』

 リリケラは珍しく心底から気分良さそうに含み笑いする。その「何とか手稿」というのがどういったモノなのかはイオには判らなかったが、いずれにせよ正解であった。イオはカリストに向き直って、相応の剣幕でもって捲し立てる。

「いい加減にしなさいよっ! あと何問あるのよっ!?」

『今ので最後の問題だよっ♪ 全問せいか~い♪』

 リリケラの闖入によってイオと半永久的にチュッチュするという野望を打ち砕かれたにも関わらず、カリストは残念そうな表情も見せず、普段と同じようにホエホエと笑っている。

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