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「シエラか。」
「ええそうよ。」
この間に俺は右手に幻影魔法で作った偽りの殺意を土壁の中に流した。
中で抵抗されて何かされないようにするためだ。
別にこいつらを殺したくて戦ってるわけじゃないなら、威圧に近い。
「何で邪魔したんだ?」
と、聞きつつ腕を抜き『クリーン』の魔法(体を綺麗にする生活魔法)を使った。
「あなたがやり過ぎてるからよ。私達とそうたいして変わらない子達をいたぶってるじゃない。」
「いたぶってはいないぞ。これは決闘だ、負けを認めればそれで終わる。それに一撃攻撃したことがいたぶるのはちょっと違うと思うが。」
「あなたが強すぎるからそう見えてるのよ!」
「はぁ……わかった。こんなかの奴らにはもう手出ししないよ。」
俺は盾役に体を向け、構えを取った。
それに応じ、盾役も構えた。
「こ、こい!」
「ちょっと今の話聞いてた!」
「聞いてたさ、剣や打撃はしなくても魔法がある。傷つけなくても気を失わせられる。『マリオネット』」
人を操る闇属性魔法だ。
「‥‥‥」
バタ、
盾役が倒れた。
「「「‥‥‥‥‥‥」」」
辺りは静かだった。
その後、土壁の中の二人をセレナが世話をし、俺はシエラから「何であんなことしたの!」「バカじゃないの!」「手加減を知らないの!」と言われた。
「力の差があったからしょうがない。バカがどうかは知らない。手加減って言っても、はなから落とし穴にかけようとして来てたんだ。それに―――」
「つべこべいってないで話を聞く!」
「‥‥‥はい。」
「はぁ、やっと終わった。」
シエラからの説教も終わり、俺は遅めの昼食になった。
「店員、ステーキ二枚とご飯と水。」
「はいは~い。銀貨一枚と大銅貨二枚分ね。」
「ほい。」
「まいどー。」
注文を済ませて店の中を見渡す。
『視線を集めてるな。まあ、しょうがないか。‥‥‥ん?あれスティーブさん達じゃん。』
俺の目線の先には、スティーブさんとカイザーが乾杯している様子と、つぶれているリーンがいた。
『またつぶれているのかリーンさん。あとスティーブさん、早く帰ってやらなくていいのか‥‥‥』
「お待ちどー、ステーキ二枚。ご飯と水も持ってきますね。」
「どうも。」
「‥‥‥」
『やっぱちょっと不味いな。』
運ばれてきたステーキは魔物の肉を使っているようだ。
『魔物の肉は物によっちゃうまいが、今回はいいのが無かったのかな。それでもセレナは美味しくできるからすごいな。』
何も言わず淡々と食事をした。