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教え始めて三十分。
リーンさんは先に飛んでいってしまい、カイザーは少しの間待ってもらっている。
あと、リーンさんから『フォート』の魔法がどれだけすごい魔法なのか勉強した。
『フォート』の魔法は風系魔法の応用で、精密な魔力操作をしなければいけないものらしい。宮廷魔導師(国に使えている魔法使い)になれるレベルのものだそうだ。
ちなみに魔力だけで浮くことができる『フライ』という魔法があるらしいが、そっちはできなかった。
できれば天才と呼ばれるほど、それこそ宮廷魔導師の中の上の人が使えるものだから仕方ない。
俺の場合は、身体操作、魔力操作、並列思考で何とかバランスを取った。
五分ほど前にシエラが飛べるようになったが、セレナがまだ飛べていない。
「うぅぅぅ、やっぱり難しいわね。」
「そうだなー。精霊に頼んでいる分正確に操作するのが難しいのかもな。いっそのこと精霊に全部任せてみたらどうだ?」
「精霊に全部任せてみる‥‥‥そうね、やってみましょ。『――――、――――――。』」
すると、セレナの背中に翼のような風が集まった。
「で、でき――わっ!」
急にセレナの体が浮き上がり、宙を縦横無尽に飛びまわった。
「ひゃ!わ!ちょっと!きゃ!なぁーもう!『――――――!』」
セレナが空中で止まった。
「『――――――――』これでいいかしら?とと。」
「おめでとうセレナ。やっと飛べるようになったな。」
「ふっふーん。私だってやればできるわ。どうする?このままスピサまで飛んでく?」
「ちょっと待ってくれ。俺は走って行こうって言ったはずだが?」
「いやまあ、走って行くよりも魔法使って行った方が楽だから‥‥‥カイザーさん、頑張って走って来て下さい。」
「てめぇレイ。こう言うときだけ敬語を使うんじゃねえぞ。」
「じゃまそう言うことで。俺達は魔法使うんで。」
俺達はカイザーを置いてけぼりに、魔法を使ってスピサの街に向かった。
出発して一時間ほど、リーンさんを見つけた。
「リーンさん!」
「え!セレナ達、もう追い付いたの!?」
めっちゃ驚かれた。
その後、一日野宿してお昼前にはスピサに着いた。