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王都の南側は他の三方向よりも特筆する物がない所だ。
もちろん中心の貴族街に行けば、なかなかいい所もあるかもしれないが、(貴族街と言っているが普通に平民も住んでいる。そう呼ばれる理由は、貴族の家、別荘、離れ等がたくさんあるからだ。)貴族の人達は「冒険者は野蛮だ」と嫌う人が多いらしいので、やっている店何かも『冒険者お断り』な雰囲気がある。
なので必然的に平民街を散策するが‥‥‥やはり、これといって特に無いので、武器屋に行くことにした。
「金貨五枚分、これが最低だ。」
「もう一声頼む!」
「無理だ!俺達鍛冶職人も材料やら道具やらで、金がかかるんだ。払えないなら別のところに行ってくれ。」
「くっそ‥‥‥わぁかった。金貨三枚分は払う!残りは稼いだときに返す!だから俺に剣を売ってくれ!」
「なぁにバカなこと言ってんだ!払えないならくんじゃねえ!」
冒険者にとって武器は命と同じぐらい大切なものだ。
だが、相棒と呼べる武器が使えない時のためのサブウエポンはどうしても二の次になり、そういう時は今回のように値切る事がある。もちろん相棒を買うときもある程度値切るんだが、それはそれで高くとも妥協する。
しかし、値切っている青年(俺と同い年ぐらい)の態度、言動から、剣を買いたいけどお金がない新人冒険者なのだろう。
「おっと、らっしゃい。すまねーが今取り込み中なんだ、そこらの武器でも見てってくれ。」
と、スキンヘッド、黒目店主が言った時、青年が振り返った。
「なあ、あんた!武器をしてるってことは冒険者なんだろ。だったら冒険者にとって武器がどれだけ大事かわかってんだろ。なら、俺に金貨二枚でいいから恵んでくれ!いつか必ず返す!いや、倍にして返すから!」
「お前さん、悪いことは言わねー。そんな奴に金を貸すだけ無駄だ。」
俺は‥‥‥
「やるよ、金貨二枚分ぐらい。」
「本当か!ありがとう!本っ当にありがとう!!」
あげることにした。