62.5
書きたかったから書いたものなので、ほぼ勢いに乗せてます
のちのちの伏線に使うかも‥‥‥
ある日のこと。
商店街を歩く上下黒の服を着た青年がいた。
言わずもがな、レイである。
そしてふと並んでいる店の内、リンゴをたくさん売っている店の前で立ち止まった。
「おばさん、これ一個いくらだ。」
「‥‥大銅貨五枚だよ。」
嘘ついたな。俺には嘘が嘘だと分かるが、これは‥‥‥
「‥‥‥お嬢さんこのリンゴ一個いくらぐらい何ですか?」
「‥‥‥特別に大銅貨三枚だ」
『特別に大銅貨三枚‥‥‥か、嘘じゃないな。どこも栄えてるところは物価が高くなるもんだな。しょうがない。』
「じゃあ―――」
と、その時、台に置いてあるリンゴを少女が掠め取った。
「な!待ちなさい!」
店主の制止を聞かずに少女は走り去っていった。
「今度来たときはただじゃおかないからね!」
「‥‥ちょっといいか。あの子はいつも盗みにくるのか?」
「そうよ、全くこれじゃ商売上がったりよ。」
「‥‥‥」
「どうしたんだ、買うならとっとと買ってくれないか。」
「分かった、じゃあリンゴを十個くれ。」
「はいよ。」
「代金だ、つりはあの子の分に当ててくれ。」
「な!こんなに‥‥‥」
「いいさ別に。ありがとよ、おばさん。」
「な、あんた!」
「ククク」
裏路地にて、
『こな辺だな。とと、』
「ねー、おねーちゃん。お腹すいたー!」
「はい、おいしいリンゴよ。」
「昨日もリンゴだったじゃん、もうリンゴいーやーだー!」
泥棒した少女を追いかけて裏路地に来てみると、先ほど盗んだであろうリンゴを持った、銀髪、黄金の瞳、の少女と、リンゴを食べたくないと駄々をこねる、黒髪、黒目、の妹?を見つけた。
二人とも痩せこけている。
特に酷いのは盗みを働いた銀髪の方で、気になって後を追ったのだ。
レイは自分の収納魔法から買ってあった焼き鳥を取り出し、
「これでも食うか?」
「え?」
レイを見た瞬間、銀髪の少女は妹?を奥へと追いやった。
そして
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいリンゴを盗んでしまって、でも盗んだのは私です、私はどうなってもいいので妹だけ、妹だけはどうか見逃して下さい。」
と、苦虫をかみしめたようなで顔をして深く頭を下げた。
すると妹が
「おねえちゃんをいじめるなーー!」
と、棒切れを持って殴ろうとしてきたのを、レイは左手の人差し指と中指で挟み受け止めた。
「何やってるの!だめよ!そんな事しちゃ!」
少女が妹を押さえつけた。
「だ、だって、あいつは悪い奴なんでしょ!だから私がお姉ちゃんを守るの!」
「お願いだからやめて!」
少女は妹を部屋へ押し込めて、レイと向き合った。
「お姉ちゃん!おねえちゃん!開け!開けてよ!」
「お願いだから黙ってて!」
「おねえ‥‥‥ちゃん‥‥‥うあああぁぁ」
姉が絶対に開けさせないと悟った妹は泣け叫んだ。
やがて姉は瞳の奥に絶望を宿し、レイに向き直った。
『やめてくれ。はたから見たら俺が悪人じゃん。周りに気配は無いけど。あと別に取って食おうとは思ってないぞ。』
「はぁ、まあいいか。これやるよ。」
レイは手に持っていた焼き鳥を少女の右手に持たせた。
「え?」
「あと、リンゴばっか食べてるとは思わなくて悪かったな。まあ買っちまったし、これも。」
と、先ほど買った九つリンゴが入った袋(道中一個食べた。)を収納魔法から取り出して渡した。
「んっ!ど、どうして?」
『酷いな、たかがリンゴ九個。五キロにもならないのに重たそうだ。』
「気まぐれだ。ついでにこれも。」
と言い取り出したのは、大銀貨三枚が入った袋だ。
それをリンゴの入っ袋に入れた。
「こ、これは?」
「そんなかに大銀貨三枚が入ってる。」
「え、ええ!?」
「好きに使ってくれ。服買ったり、美味しいもん食べたり、盗んだ店に謝ったり。」
「ど、どうしてこんなに‥‥‥」
「だから言っただろ、気まぐれだ。じゃな」
「あ、あの―――」
ふっ、レイが目の前から消えた。
「どうし‥‥‥そんなに‥‥‥はっ、シーナ!シーナ開けて。」
「おねえ‥‥‥ちゃん‥‥‥おねえちゃん!」
「わ!シーナ。お姉ちゃんは大丈夫よ‥‥‥大丈夫よ」
「う、ひぐ‥‥‥」
「シーナ‥‥‥シーナぁ‥‥‥」
「あの子達を狙ってるの?」
「狙ってない。ただたんに貧しい子に恵んだだけだ。」
「あらそう。私が知ってる限り、両手では数えられないぐらい助けてるものね。」
「それは協会への寄付をふくめたら、だろ。」
「それでも貴方が助けたには変わりないじゃない。」
「ま、そう言うことにしておくよ。それよりセレナは?」
「今、私の人形とお買い物中よ。」
「そうか、じゃあ俺も合流しようかな。いくぞシエラ。」
「わかったわ。」
と、シエラが俺の横に来たので手を繋いだ。
「私達は優しいのは気まぐれだかしら?」
「そんなわけ無いだろ。二人にはずっと一緒にいてほしい。」
「っ、(ま、真顔で言わなくても)」
シエラは恥ずかしそうに、それで嬉しそうに尻尾をパタパタとさせた。
後でシエラと手を繋ぐ俺を見て、セレナは頬を膨らませた。
登場人物の容姿&名前(仮)
姉 リコ 銀髪 琥珀色の眼
妹 シーナ 黒髪 黒目




