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「え~こほん。また取り乱しちゃったわね。」
「そうだな。まあ、とりあえず『魔力制御』と『魔力操作』の違いについて教えてくれないか。」
「ええ、いいわ。‥あ、魔力と何なのかなんて私にもわからないからね。」
「‥‥‥さすがにそんな事は言わないぞ。」
「‥‥まあ、いいわ。それで―――」
魔力制御と魔力操作の違い
これらのスキルは魔法を行使する上で必ずと言っていいほど重要なスキルであり、違いと言えば魔力操作の方が魔法の発動速度が速いことぐらいである。
この発動速度は攻撃魔法や、離れている味方へ強化魔法を飛ばすときに違いがあるが、自分自身への強化魔法には差が無かったため、体外へでの魔力の扱いの違いである、らしい。
「と、こんな感じよ。何か聞きたいことは?」
「今のところは特には。」
「そう。じゃあ私は帰るわね。」
「?討伐には行かないのか。」
「今日はお休み。私達もそんな若くないから、ちゃんと休まなくちゃ。それにさっきから視線が痛いし。」
「今日は何故か女性冒険者が多いからな、しょうがない。」
「元凶が何を言うんだか‥‥ま、そう言うことで、じゃなねー。」
と言ってリーンさんは出ていった。
「結局カイザーとリーンさんの年っていくつだ?」
「俺が今35で‥‥‥確かあいつは三つ下だったはずだ。」
‥‥‥なかなかにいっていた。
「しっかし、職員のやつらが戻ってくるまでってなら、あいつとは会わないのか。」
「あいつ?」
「ああ、最近噂になってる『首狩り』ってやつのことだ。何でも表れた時は『ビッグロックベアー』や『ビー・ビー・ナイト』の首を狩ってきたしい。」
「『ビッグロックベアー』と『ビー・ビー・ナイト』か‥‥‥セレナ達も狩っていたな。でも、首を狩っただけだろ?普通じゃないか。」
「確かにそうだが、そいつは首以外一切傷つけづにやってんだ。猟奇的で、そのうち人の首も持ってきそうだな。」
「ふーん。」
ビッグロックベアー、ビー・ビー・ナイトとはペドロとの決闘の時、比較対象としてあげていた『ロックベアー』と『ビー・ビー』の上位種だ。俺も真っ向からでは苦戦するが暗殺なら余裕だった。
暗殺である以上一発で仕留めなくてはならないので首を跳ばしている。
「もしかしたら俺のことかもな。」
「はっ、何言ってやがる。『ビッグロックベアー』なんて俺の『大斬波』をもろにくらっても真っ二つに出来ないぐらい硬いのに。」
「――それでもガードした両腕をぶったぎって、胴体の半分を斬ってるのはすごいことよ。」
何か忘れものでもしたのだろうか、リーンさんがギルドに来ていた。
‥‥‥殺気だって。
「うお、リーンどうしたんだ。」
「何だか悪い予感がしたから来たの。」
「悪い予感てなんだ?」
「そうね、例えば乙女の秘密、とかかしら。」
「俺は何も聞いてない。さて、仕事に戻りますか。」
「お、俺も何か依頼を――」
リーンさんがカイザーの耳を引っ張った。
「いでででで、痛いってリーン。」
「さあ、宿屋で詳しく話ししましょ。それとレイくん、何も聞いていないわね?」
「はい‥‥‥。」
「俺はまだ飲み足りないでででで。」
そしてリーンさんはカイザーの耳を引っ張りながらギルドを後にした。