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「なかなかやるな。今のは面白かったぞ。」
そう言ってきたカイザーには、手から肩にかけて切り傷ができていた。
俺の返した斬擊を受けたからだ。
剣にまとわせた風で斬擊を巻き込み、ついでに風の刃を付け加えた。これで斬擊がより鋭利なものになり、防がれたとき風の刃がちりぢりになったが相手に威力はあり、傷をおわせる程度になった。
偶然ではあるが、なかなかに使えそうな技だ。
「もうやめないか?あんたとやってたら、練習場が使い物にならなくなるし。」
大斬波は飛ぶ斬擊の強化ばんみたいな攻撃だったが、これまた威力が桁違いで、真っ直ぐ振り下ろされた攻撃は延長線上の地面をえぐりながら俺のところまで飛んできたのだ。
「なんの、まだまだ序の口だ。」
「何がまだまだ序の口よ。」
ゴン!
カイザーが後ろから杖のようなものでぶっ叩かれた。
「いってぇー、何すんだリーン!」
「どうするもこうするも、あんたがギルドの練習場にいるって聞いて来てみたらDランクの子に剣をむけて、一体何してるのよ。それに私は「換金が済むまで待ってて」で言ったはずでしょ。」
「わ、悪かった。なかなか強そうなやつがいたから、つい‥‥‥」
「本っ当世話が焼けるわね、あんたわ。はぁ‥‥‥」
リーンと呼ばれた人はいかにも魔法使いですって格好をした小柄な女性にだった。
赤髪、赤目だ。
「「レイー!」」
「おっと。」
「大丈夫?どこも怪我してない?」
「まだ気持ち悪い?私なら聖魔法使えるからいつでも言って。」
「大丈夫だ。怪我はしてないし、気持ち悪くもないから。しいていえば口のなかが苦いことぐらいだから。」
と、話している間にリーンが近づいてきた。
「はじめまして、私はカイザーと組んでるリーンです。うちのカイザーが迷惑かけて、ごめんなさいね。」
「いや、あんまり気にしてないし、どっちかと言えば自分の実力を試せて良かったと思ってる。」
「そう。貴方がそれていいなら。また何かあったらよろしくね。」
そう言うと、カイザーのところに行きまた何か話あった。
「時間的に依頼できるかどうか怪しいな。」
「それよりも、何でこんな決闘を受けたのかしら~?」
「いはい。おへらっへ、うへふほあ、ひっへない。」
(痛い。俺だって、受けるとは、言ってない。)
「あら、何か言いたそうね。言い訳かしら?あ、いいこと思い付いたわ。今日は寝るまでお説教ね?」
「あぁ‥‥‥」
セレナの機嫌が真っ逆さまだ。
助けを求めシエラに目をやるが‥‥‥
ニコ(黒い笑顔)
無理そうだ。セレナ側についてる。
「‥‥‥とりあえず夕食にしよう。口のなか苦いしは何か美味しいのが食べたいな~。そうだ、二人の手料理を食べたい気分だな~。」
ピク
「しょうがないわね。決闘には勝ったし、今日は特別に夕食作ってあげるわ!」
「ありがとう。(いろんな意味で助かる。)」
「いい!特別なんだから、と、く、べ、つ、に!それと夕食作ってもお説教する時間は変わらないと思いなさい。」
「え?」
「私とシエラ。二人なら片方お説教で片方夕食を作れるから。そんなに甘くないわよ。」
「はい‥‥‥」
ああ、未来が見える‥‥‥尻にしかれる未来が‥‥‥