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「ほら、かかってこい。」
大剣を構えているカイザーがそう言ったとたん、ものすごいプレッシャーが俺を襲った。
「っ!‥‥‥ふぅぅぅぅ―――」
俺はそのプレッシャーに自分の気配を溶け込ませた。
小さい頃、外が寒くて寒くてたまらなかった時に、「自分は氷自分は氷」と、あえて寒さを受け入れて震えを止めていた事があったので、それと同じ様にあえてプレッシャーを受け入れてたのた。
『ヤバイな‥‥‥これが殺気ってやつか?‥‥‥あのままだったらちびってたかもな。ちょっと全力出すか。』
「来ないのなら俺からいくぞ!」
カイザーの攻撃。剣を使う上で最も威力が乗っているが、その分隙の大きい、まっすぐ振り下ろす攻撃。
俺はそれを逆手に構えていた二本のショートソードでいなし、そのまま反撃を加えたが、見事にかわされた。
『くっそ、めちゃめちゃ重てぇ攻撃だな。』
「今の俺の攻撃をいなして反撃。なかなかだな。本当にDランクか?」
「ああ。」
「そうか、じゃあこれならどうだ!」
カイザーが自分の剣に大量の魔力をまとわせた。
この世界には剣に魔力を流して魔武器の効果を発動させるやり方と、剣に魔力をまとわせ切れ味を上げたり、先ほどの相手がやったように、魔力で斬擊を飛ばす事ができる。
魔力をまとわせれば内側にも魔力が流れて、耐久も上がる効果もある。
もちろん俺やシエラもできる、冒険者が「まとい」って言っているものだ。
通常は「まとい」をしていてもわからないが、今回のようにまとわせているの量が多いときや斬擊を飛ばすときはわかる。
「普通のDランク冒険者なら受けきれだろうな。」
『「チッ、」めんどい事をしてくれるな。いやがおうでも、俺に本気を出させたいってわけか。』
「ハッ!」
『でかい!』
俺はショートソード(この際剣でいいか)にまといをし、さらに剣の周りに風属性魔法をまとわせた。
そして、斬擊を受け止め、
「どおぉぉぉりゃゃゃ」
一回転して返した。
「ふん、『大斬波』!」
返した斬擊を今度は打ち消して、新たな斬擊が帰ってきた。
それを俺は左によけた。
さっき一回転したときに、後ろに人がいないのは確認済み。別に回避しても問題ない。
なぜ今度は避けられたって?それは威力がさっきよりもなかったからだ。
「なかなかやるな。うん。いいぞ!」