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結局獣人の子を背負いながら森と草原の境目が見えて来たところで起きたようだ。
「ううん~」
「起きたか?」
数秒硬直、そして
「キャァァァァ!」
「暴れんな。」
俺はこの事を予想して片腕を下に、もう片腕を獣人の子の腰に当てて、離れないようにしていた。
「嫌ゃぁ!離して!離して!!」
「離したら落ち着くか?」
「離して!」
「落ち着くか?」
「わかった!わかったから!」
説明後
「さっきは取り乱してしまいごめんなさい。」
「別に。それよりも当たり障りないよううまく誤魔化してくれ。」
「それはもちろんです。」
シエラと名乗った獣人の子とイルーシオの村でどう誤魔化すかだ話し合い、俺らは村に戻った。
シエラが村に来て半年ほどたった。
村は獣人のシエラを一人を除いて受け入れており、教会でみんなと一緒に過ごしている。もちろん奴隷だと言うのは大人以外知らない。
ちなみに一人と言うのはもちろんセレナの事であり、俺といつも一緒にいるシエラにかわいい嫌がらせをしている。
ちなみに奴隷についてヴェン爺から聞いた話だと
『いいですかレイさん。奴隷と言うのはよくも悪くも主人に尽くす人のことです。ただシエラさんは主人の命令に絶対に逆らえないものです。レイさんもやりたくないことは沢山あるでしょう。特にシエラさんの首輪は高位の物なので、例えシエラさんが寝ていても、病気で動けなくても命令に従うでしょう。だから気をつけて下さい。』
と、俺が聞きたかった内容と違いギルさんに『シエラの場合、奴隷の主人は誰?』と聞くと『そんなもんシエラを見つけたお前だろ』と帰って来た。
予想はしていたので驚きもしなかったが、ちゃんと聞けてよかった。
シエラの首輪については、もう俺の干渉魔法で解除はできるが、どうなって相手を奴隷化するのか、それが別のものに応用できないか検討中なので、そのままにしている。
急に取れたら怪しまれるし。
ちなみに9才のセレナからの誕生日クッキーは、形は歪だったが美味しかった。
ちなみにシエラは狐の獣人で、尻尾が四本あった。
将来は九尾にでもなるのではなかろうか。