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『ダイナ』二十階層ボス部屋
ボス エレンインボール
ゴツゴツとした球体で宙に浮いている。球体は非常に硬く、魔法は何か障壁があるかのように寸前で消えしまう。主な攻撃方法は突進。一流の冒険者でも破壊は容易ではなく、隠し通路を渡って次の階へ行くのが無難である。
シエラが図書館で読んだ本によると、そういう説明のようで、俺たちの目の前にいるのが、そのエレインボールのようだ。
紫に近い黒色で、クレーターのような凹凸が表面にある。
「あれか。二人は待ってろ。先に俺がやる。」
ギィッッ ゴオォン
間合いを一気に詰めて切ったが、金属がぶつかったような音がなり、エレインボールは向こう側の壁へ激突した。
「流石に今のじゃ傷ひとつつかないか……」
何ともない様子を見てそう呟き、今攻撃した剣をチラリと見る。
『少し欠けている。借りたものとはいえ結構いいものだが、この剣の切れ味と身体強化でやっても無傷か。想像以上に硬いな。』
「ねえ、私もやってみていいかしら。」
「ああ。ただ、相当硬いぞ。見てみろ。」
シエラに欠けている部分を見せる。
「これ、剣が欠けてるわね。」
「正直ここまでとは思わなかった。」
「んー。剣が欠けるのはちょっとー。」
「とっ。」
突進してきたエレインボールを片手で捕まえる。
突進自体そこまで速くないため簡単にキャッチできた。こいつ自体宙に浮いてるがそこまで強い力を出せないようで容易に捕まえられた。
「どうする、やってみるか?」
「うんうん、今回はいいわ。」
「そうか、じゃあもうちょっとまっててくれ。」
俺はそういい龍化した。
30分後
今度は剣ではなく龍化、龍装状態で蹴る殴るをしたが相変わらず傷ひとつつかなかった。
エレインボールの左右から同時に殴っても、逆に指の骨がイッたぐらい、あきらかに俺の骨よりも硬い。
また、魔法についてもいろいろ試したが、どれも寸前で消えてしまった。
あいつを中心に30センチぐらいのところで、まるでそこだけ別空間に飛ばされたように消えるが、干渉魔法だけは問題なく発動した。
俺の干渉魔法の無効化は範囲内の魔法を発動すらさせないが、外からの魔法は萎むように無効化させていく。
まあ、干渉魔法ができるからと言って、この魔法は殺傷能力0だから手の打ち用がない状態に変わりない。そのため、ここで三日間泊まることにした。
ダンジョンのボス部屋は三日間中にいると入口へ強制転移させられるためだ。理由はわからん。
もっと強い魔物なら三日間逃げ続けるなんてことになるだろうが、エレインボールの強さなんてたかが知れている、交代で見張ってれば問題ないだろう。
「ねえ、レイってジラグさん剣使って貰うんでしょ。ついでにシエラのも頼んで作って貰えば?せっかくなんだし。私は弓だからあれだけど。」
「それもそうなんだけど、結構使ってるから愛着があるし、それに、これ、ミスリルでできてるらしいから、当分後にするわ。」
「ふーん。私ももっと強い弓が欲しいな。すぐ壊れちゃうし。手加減して打つのはやりにくいし。」
セレナの弓は今ので四代目。
セレナは精霊の力を借りることで矢の威力を底上げして射っている。が、それが問題で、セレナが思っている以上に精霊が勝手に手助けしてくれるお陰で、弓の耐久が持たないのだ。また、本人が非力なため、あまりに重いもの、特に金属がたくさん使われている弓だと矢が命中しにくくなる。
「なら今度街を見てみましょ。それかジラグさんに聞いてみるか。あの人、いかにも職人さんて感じだから、もしかしたらいいお店、知ってるかもしれないわよ。」
「そうね、そうしましょ。まあ、3日後だけど。」
「悪いな、テント張ってもらって。」
「これくらい全然平気よ。それで、どうだった?」
「全然ダメだな。何やっても傷つかないし、魔法も意味無かった。大人しく待ってよう。……ただ、あそこまで硬いとは思わなかった。」
「私の魔法の矢は当たる前に無効化されちゃうし、普通の矢で当てても無理だったからね。」
エレインボールを倒すのは諦めて交代でで番を過ごすのであった。