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迷路を歩いていると、よく上を攻略しているやつと会う。
その度にアギト達は地図を売っていた。
「よくなるな。」
「まあな。俺たちも何度かお世話になったことだし。今回は俺たちの番って思ってるだけさ。」
ダンジョンの中は常に死と隣り合わせの場所。だから気が張ってる冒険者同士のイザコザも多々あるが、困ったときは助け合うような変な仲があるとかなんとか。
「ま、流石に偽の地図を渡されたときはヤってやろうと思ったがな。ははは。」
「……」
「安心しろ、ちゃんと本物だ。じゃなかったらこんな早くこれてねぇだろ。」
「まあ、確かにそうだな。……そういえば、ここには罠があるって聞いたんだが、こんな堂々と歩いていて大丈夫なのか?」
「ん?罠ならあるぞ。そことそことそこに。」
そういいアギトが指を指した方には、他とはやや色味の違う部分だった。
「若干色が違うだけだが……」
「それが分かればまず引っかからないだろうな。ダンジョンの罠なんて少し注意すれば見破れるもんばっかだし、それに、ここはなぜか作動するところが端っこに固まってるから、真ん中を通れば大丈夫だ。」
「なるほど。どうしても罠を解除させたい時とかはどうするだ?」
「それは、石なんかで作動させればいい。まあ、中には対象が絞ってあるもんもあるらしいが、少なくとも俺たちは見たことねぇな。」
「ふん。アギト達は何階層まで行ったんだ?Aランクパーティだからそこそこ行ってると思うんだが。」
「78だ。」
「78……」
アギトが言った階層について少し考える。
『78……アギト達を見ると一対一でやるとしたら俺に武があると思う。セレナとシエラは……正直わからない。五分か、もしかしたら負けるか。ただここら辺はダンジョンに潜って攻略してればいい。年齢差を考えればまだまだ成長があると思う。ただ一番の違いが人数だ。向こうは四人、こっちは三人。戦略の幅が段違いだ。それ達はいわば幼馴染パーティ。新しく入れるとなると関係が……いや、一人いる。ガビルだ。入れるとしたらあいつだな。仲は、まあまあだったから少し不安はあるが、俺が歩み寄ればいいか。』
「―――おーーい。」
アギトの声で我に帰る。
「ん?」
「考え事もいいが、ちゃんと周り見ろ。」
全員が俺を見ている。
「あ、すまん。ちょっと考えごとで。で、どうかしたか?」
「ボス部屋、見つけたんですけど……」
シーニャが耳を折りながらもしわけなさそうに言った。
「……」
「んじゃまあ、俺たちはここまでだな。」
アギトが着いて早々言った。
そもそもアギトから買った地図は全体像が書かれていないものだった。つまりギルドからの依頼は正確なルートを知るために地図を作れというものらしい。
本来ならこれを受けてAランクになる予定だったとか聞くとランクを上げるには強さとギルドからの信頼が重要だと改めて感じた。
「お前たちはどうするんだ?なんなら送って行ってもいいが。」
「あ、いいっすか?じゃっ、お言葉に甘えて。」
「ロウガ達もありがとな。ちゃんと指導してやれよ。」
「もちろんっす。自分も駆け出しの頃はいろいろ教えてもらった立場っすから。……と言っても防具やら揃えるために、まだまだあそこで金策してると思うっすけど。」
「ん?金策してたのか?」
「そおっすけど……指導のついでに魔物倒してお金を稼いでたんすよ。」
「ああ、なるほど。」
この世界には魔力を流すことでさまざまな効果を使う道具、『魔道具』がある。マジックバックがその例で、他にも魔力を水にする水筒なんかもあり、非常に重宝するものだが、多少値が張るものばかり。
俺たちは小さい頃からコツコツ貯めたお金で買ったが、一体何年ぶんのお金が、今使ってるのに消えたかわからない。それを今から稼ごうとするなら、戦いながらの方がいいというのも頷ける。
なんせ、ちまちま薬草採取やらお手伝いやらで貯めるより、魔物を倒して売った方が何倍もいい。
「じゃまたどこかで。」
アギト達とロウガ達はそのままきた道を帰って行った。
「さて、俺たちは俺たちでやるか。」
「ええ。……と言いたいところだけど、本当に行くの?だって、3日は出られないって。」
「倒せなかったら倒せなかったで待つしかないだろ。まあ、これは俺の我儘に付き合わせてるだけだから、3日は俺が見張っとくから。」
「はぁ、しょうがないわね。」
「まあまあ、レイは昔から変なところで頑固だから。」
シエラ、否定はしないが、傷つく。
「じゃあ、気を取り直して行くか。」