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ドゴォォォォォ
「なんか生き生きしてない?」
「そうか?」
俺が壁を壊せるようになってからはすんなりと19階層へ行けた。壊すたびに破壊音によってよってきた魔物を倒してきたが、まあ順調だ。ちなみに普通の壁に同じことをしたら指が折れた。
「あ、いました!」
20階層に来て数分。シーニャが透見を使って地図を埋めてるとそう言った。
「いたってのはアギト達か?」
「はい。多分そうです。四人パーティで―――ニャ?!」
シーニャ突然驚きそのまま尻餅をついた。
「痛てて〜」
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます。」
ロウガがシーニャを立たせた後驚いた理由を聞いた。
どうやらアギト達を透視で見ていたとき、一人が急に振り向き目があったそうだ。それも威圧を込めて。
ただ、ロウガが言うにはAランクならあり得る話、だそうだ。誰かに狙われているのが分かればたとえ奇襲を受けても、逆に利用できるためである。
「まあ、今の俺らは完全に敵だと思われてるっすけど。」
「確かに……かといって俺たちの目的はアギト達に会うことだから、透視が必要だしな。」
「ねえ。具体的な場所がわかるなら、私の精霊で何とかならないかしら?それなら気づかれなさそじゃない?」
「それもそうだな。それに、近づいたら声をかければいいし。」
俺たちのスピードはアギト達よりも明らかに早い。向こうがどうであれすぐに追いつけるだろう。
紅狼視点
バッ
「どうしたクロウ。」
「今、見られた。」
クロウの言葉に全員に緊張がはしる。
クロウはこの中で一番感知に向いて。奇襲を仕掛けてくる魔物相手に、いち早く気づき幾度となく危機を乗り越えてきた。
そんな奴が急に後ろを向いてそんなこと言うはずがない。ましてやここは何の旨味もない場所だ。考えられるなら……
「俺たちを狙ってきたやつか。」
『紅狼』はついこの間Aランクパーティになったばかりだ。彼らは、言ってしまえば早い方だっただろう。世間から憧れるが、それと同じく嫉妬もされる。それこそ、彼らと同じぐらいのやつからは余計にだ。Bになった時は嫌味合から、殴り合いまで体験した彼らは、今度は命の駆け引きになるとふんでいる。
さらに言えば、ここは絶好の場所だ。道は狭いし、入り組んでいる。そして相手は俺たちの場所が把握できる。
「……迎え撃とう。それしかない。」
「そうですね。それが一番でしょう。」
アギトの言葉に頷いたのはパーティの魔法兼回復のティルだ。
優男のようは風貌の彼は意外にも現実的だ。場合によっては、他パーティを囮にする案を平気で言い出すぐらいには、このパーティだけを大事に思っている。
「クロウが見た方向にはちょうどここに来る階段があります。おそらくはそこでしょう。」
「じゃっ、シェパード頼んだぞ。」
コク
シェパードは全身鎧をつけた、このパーティの盾役だ。他よりも二回りほど大きい体で何度も敵の攻撃を防いできた。そんな彼を先頭に、彼らは敵へと向かった。
が、
「……おかしいですね。」
ティルがそう呟いた。なぜなら、もう敵を迎え撃とう出発して20分ほど経ったが肝心の敵と、会えないからだ。向こうが位置を把握できる以上、向こうに分があり完全に有利なはずなのに会えない。
さらに言えば、度々クロウが視線を感じたが、その方向はルート的に自分達とは関係ない方から来ている。
「まさか、迷ってるとかありませんか?彼ら。」
たしかに、敵は自分達の方へ来ようとはしている。だが、ここは時間が経過すると壁が動き、構造が変わるようになっている。彼らが通るルートはあくまで変わる前を道を進み、詰まっているように思えたのだ。
「ベテラン……ではないか。仮に新人だったら何のようで俺たちを追ってんだ?」
「理由がなんであれいいじゃないですか。私たちはこのまま入口で待機して迎え撃ちましょう。用事があるならそれでいいですし、仮に敵だったら待てばいい。」
ダンジョンには魔物がいる。そして魔物は人を襲う。
理由はわからないがダンジョンの魔物はそろってそういう習性を持っている。敵が奇襲を仕掛けようと近くで待ち伏せをしても、時間が経てば結局は魔物に襲われ、戦闘となり、自分達の位置を教えることになる。
それは相手も避けたいことだろう。
ならば入口は最適な場所だ。出会っても「隠し通路なんて知らなかった」や「順番に攻略してる」と言われたら見逃せばいい。そこで諦めたらそれでいいし、敵意が有ればそのままやりあってもいい。勝てないようなら後ろに行って逃げればいい。
両方命有るのが最適だ。
「ティルの通りだな。じゃっ、そっちの方で。」