148
「そうだ、ロウガ達はこっから先の地図いるか?といっても17階までのしかないが……」
「あ、大丈夫っす。隠し通路いくんで。……隠し通路のことは知ってるっすよね?」
「それぐらいは知ってるさ。」
「じゃあ入り口は知ってるっすか?」
「場所しかわからない……」
「じゃあ自分が教えるっすよ!」
というわけで、隠し通路がある塔へ向かっているのだが……
「「まって……ください……」」
双子がばてた。
さっきまで戦闘していたのもあるが、根本的に体力差があったのだ。
俺が、「用事があるからなるべく早くしたい。」といい、せかしたのもあれだった。
『なるべく早くしたいとはいったが、一刻を争うってわけじゃないからな……』
「少し―――」
「『獣化』!」
ロウガがそう叫ぶと、体が大きくなった。
それに伴って、今まで普通に走っていたのが四足歩行になり、より獣らしさが出てきた。
「二人とも、乗れ。」
「「はぁい……」」
ロウガは背中に二人乗ったのなんて気にしないような走りを見せる。
「すごいな、お前。」
「これぐらい大したことない。それに、このまま二人を連れてけば足手まといになる。」
さっきまでとは打って変わって、低く、そして強気な口調になっている。
ただ、足手まといと言われて二人が気落ちしてるが……
そして、隠し通路のある塔の近くの茂みまで来た。
「運が悪いな。」
ロウガは塔の周りにいる多数のコボルトを見てそういった。
「いつもは先客が倒してくれるから、すんなりと行けるんだが……やるしかないな。」
「まて、あのコボルト達を倒せばいいのか?」
「ああ。隠し通路があるのは塔の中だから、あいつらは邪魔なんだ。」
「わかった。じゃあ、魔法で―――」
一応コボルト達をよく見ておく。
もしかしたら獣人が混じってるかもしれないからな。
『よし、いないな。』
スパッ―――
コボルト達の首が一斉に飛ぶ。
魔法はイメージが重要だ。
ファイヤボールやエアカッターなんかはイメージを言葉として固定しているため、言えばその通りの魔法が打てる。
結果、極論ではあるがファイヤボールと言いながら、出てくるのは水球です。みたいなこともできる。なんせ、打ってる本人は『ファイヤボール』は『水球を生み出す』魔法だと考えているからだ。
ただ、魔法は臨機応変に扱う必要がある。
いつもより時間がかかるものの、例えば、『アイスランス』(氷柱を相手に向かって飛ばす魔法)と言いながら、数十本放つ。というようにだ。
さっきは風属性魔法をやったに過ぎない。
「「す、すごい……」」
「魔法だな。仲間なら頼もしい限りだ。それは置いといて、早く行こう。」
塔の中は、ゴーレムと戦ったところと同じよう場所だった。
あたりに瓦礫が散乱しており、壁に穴も空いている。
「こっちすね。」
いつのまにか元に戻ったロウガに案内されて着いたのは瓦礫の山だった。
「……どう見ても瓦礫の山だが……」
「そおっすね。隠し通路はこの瓦礫の山の下にあるっす。」
「まさか、これ全部どかすのか?」
「はい。」
「……わかった。魔法で吹き飛ばすから少し離れてろ。」
「あっちょっ待って欲しいっす!ここら辺、コボルト巣があるっすから、あんまり大きな音は出さない方でお願いします。」
「あ、じゃあ私達が片付けるわ。しまっちゃえば問題ないでしょ。」
と、セレナ。
たしかに、セレナとシエラは大量に物をしまうことができるため、片付けは二人に任せることになった。
「終わったよー」
「もうか、早いな。」
「次は自分の番っすね。ええーと……あった!」
ロウガがそういい立ち止まったのは、正方形のタイルの前だ。
ここの床は長方形のタイルで敷き詰められてるが、何故かここだけ正方形のタイルになっている。
というか、瓦礫をどかさないと見えないようになってるとか、これどうやって見つけたんだ?
ロウガはそのまま正方形のタイルの一辺に体重をかけ、すると反対が浮かび取っ手のような部分が出てきたので、それをつかみタイルを持ち上げた。
タイルの下は空洞になっており、体育座りすればすっぽりはまる程度だ。
ロウガはその空洞に入り、周りの長方形のタイルを剝がしていく。すると、
「ふう、これだけ広ければいいっすかね。」
トンネルのように真っ暗な下へと続く滑り台のようなものが現れた。
「本当、よくこんな隠し通路見つけたな……」
「『導きの羽』て魔道具があれば場所はわかるっすから、あとは地道に……だと思うっすよ。まあそれは置いといて、ささどうぞ。」
「は?」
「ん?」
……どうやら認識の違いがあったようだ。