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今俺たちがいる十二階層は手書きによる地図だったので、一度入り口まで戻ってから進んだ。
それはもう順調に。
「っ―――外か。」
そしてあっさり十五階層へ到達した。
『眩しいな。……今更だが、なんであそこではは明るく見えてたんだ?篝火とかはなかったはずだが……まあいいか。天井と天井がくっついてるような場所だし。』
俺たちが出てきたのはマヤ文明のピラミッドのような場所の頂上だ。
「なんだか、遺跡のような場所に出たわね。」
「ええ。ただ、ここへ出るために階段を上がらないと行けないとは思わなかったわね。」
「本当地図があってよかったな。さっさと中ボス倒して地図渡しに行くか。」
地図だと遺跡を降りた先にある一番高い塔がボス部屋だとあった。
「一番高いって言ったら、多分あれだな。」
「じゃあ行ってみましょ。」
ガラ……
「……地図の空白はこの崖を表してたのか。」
「うわ……相当深いわね、ここ。」
「それに魔物も結構いるわね。あまり空中戦はしたことないけど……」
「地図を見るに一番低いとこから回って行くべきなんだろうな。橋がかかっているみたいだし。」
いくら俺たちが飛べるからといっても、戦闘はしたことない。
剣なら踏み込みが大事だし、魔法なら、飛ぶために使っている。
「セレナ。シエラを持ったまま飛べるか?」
俺たちの中でセレナだけが精霊の力を借りて飛ぶことができる。
俺やセレナの魔力を消費せず飛ぶ『フライ』とは違い、魔力を消費はするが、飛ぶことを精霊に任せれば別のことができるし、この場合、シエラも魔法を使うことができる。
「飛べけど……普通に回って行った方が良さそうじゃない?」
「……それもそうだな。」
俺の虫殺しの魔法と同じように、ほぼ無意識に『フライ』を使えるようになること、空中での戦闘方法を考えること。
『この二つが分かっただけでも来た意味はあったかもな。とにかく、順々に攻略してくか。』
ギギギ……
「……これはこれで怖いな。」
一番小さい塔へ続く橋に来てみたが、かかっていたのは普通の木製の橋。
ただ、下からの風で揺れている。
それと、橋の近くには他の冒険者がちらほら見える。
橋の幅がギリギリ二人分ぐらいしかなく、これではあたりを飛んでいる鳥の魔物『クック』に襲われれば対応できない。
必然的にパーティは一列になり、横から襲われる。
「うわぁぁぁぁ!!!」
「危ない!―――そんな……」
セレナの助けも間に合わず、橋を渡っていたパーティの一人が底へ落ちて行った。
「落ちたら即死……これは流石に―――」
ブワァァァァ!
「っ!」
「な、何?!」
急に崖下から突風が吹き上げてきた。
そして、
「―――ぁぁぁああああ!!!」
バサバサバサバサ
先ほど落ちた冒険者が風にのり、こちら側の近くの木に突っ込んだ。
木の1.5倍ぐらいの高さまで飛ばされた見たいだが、身体強化していれば、大丈夫だろう。
ただ、今の風のせいで橋がアーチ状になり、渡っていた他のパーティメンバー全員が崖に落ちた。が、
「「「―――ぁぁぁああああ!!!」」」
バサバサバサバサ!
同じように下からの風にのって、木へ突っ込んだ。
「ちょっと、回復させてくるわね。」
「ああ、じゃっ、俺は並んでくるよ。」
シエラは木から降りてきた冒険者達を回復しに、俺は橋を渡る列に並んだ。
「行くぞ。」
「「待って」」
いざ橋を渡ろうとすると、二人から待ったをかけられた。
「やっぱり怖い。」
「はじめ考えたみたいに飛んでいきましょ。」
「や、飛んでく方が怖いだろ。とにかく、後ろがつかえてるんだ、早く始めないと。」
「「そんな〜……」」
待っている間にあったことだが、あまりに橋を渡るのを躊躇してると、他のパーティから代われと怒鳴られる。
「ほら。手、繋いでやるから。」
スッ
「二人ともにぎったな。じゃあ行くぞ。」
「「……」」
二人の手を引きながら10分ほど、やっと半分手前まで来た。
『ここまでは順調。ここからだな。』
俺の前にいたパーティ達は、時間がかかったものの半分までは行けていた。
だが、橋の半分を超えるとクック達が橋を揺らしにかかり、落ちてしまった。
「KUe〜!」
ドドン!
「e〜〜……」
橋を揺らそうとしたクックに水球が二発あたり、倒した。
『二発目は俺のだが……一発目はセレナの精霊か。』
理由はわからないが、精霊は俺を……と言うより悪魔と敵対し、龍族を敵視している。
セレナが言うに、俺のことはまだ敵視しているだけだそうだ。
『セレナを守るため、だけじゃなく俺と張り合ってるのか。俺より遅くに魔法を作って、俺より早く魔法を当てるとは。流石精霊だな。悪戯ってレベルの技術じゃないが、今はありがたい。ただ、魔物は倒して欲しくなかったがな。』
精霊魔法は本来、術者(何かしらの精霊魔法が使える者)が魔力を精霊に分け、精霊が魔法を使うことで精霊魔法となっている。
が、ごく稀に精霊自身が魔力を消費して魔法を使うことがあり、属に「精霊の悪戯」と呼ばれるもので、最速で魔法が放たれる。
ちなみに魔法の威力だが『ファイヤボール』や『ウォーターボール』など、ある程度威力がある。
「へっ。こんなもん、怖くとも何ともないぜ!」
後ろからなんとなく聞き覚えのある声がした。