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今朝は忙しく支度をしてダンジョンへ向かった。
次が迷路になっているのもあるが、昨日の夜が夜なため忙しかった。
とにかく、ダンジョンに入って早二時間。
俺たちは一向に次へ進めずにいた。
セレナが探索をして、それを俺の『メモ』に移していく。
そのため、やりやすいようセレナをお姫様抱っこしながら移動している。
右手の法則を使うよりも効率的にマッピングが出来ているはずなんだが……
「あ!あったわ!」
「本当か!よかったー。」
「これで、やっと次へ行けるわね。」
早速次の階層へ進んだが、
「もう一時間ぐらいか……」
「ちょっと休憩しましょ。セレナも疲れてるみたいだし。」
「私は大丈夫よ。歩いてないし。」
「いや、一旦休憩しよう。ちょっと早いが昼にするぞ。」
「だから、だい―――」
「だめだ。疲れが顔に出てる。休憩した方がいい。」
「……わかったわ。」
シエラが休憩を言い出して来て助かった。
精霊と繋がり、自分が見れる範囲以上の情報が頭の中に入ってくるんだ。平地や森の中から次の道を探すなら、一度知ればある程度場所がわかるため、そう何度も使わずに済むが、連続して使う場合、俺が想像したよりも負担がでかいようだ。
十一階層は運悪く全体マッピングしてしまった。
この先も同じことになるかも知れないから早めに休憩を挟みたかった。
「寝たか。」
「しかたないわ。今日と昨日の疲れが溜まってるもの。」
「疲れてるなら言ってくれればいいのに。」
「一ヶ月以内に二十一層まで行くんでしょ。」
「それはまあ、そうだが……一ヶ月なんて、まだ先だぞ。それと、シエラも疲れてるなら寝ていいぞ。見張りは俺がやるから。」
「私は大丈夫よ、だって獣人だもの。力と体力があるから。それに、三、四時間寝たら十分だし。」
『言われてみたら、俺もセレナも、シエラより早く起きた覚えがないな。短時間睡眠で大丈夫なのも獣人の特徴なのか?』
「疲れたら遠慮なく言っていいからな。セレナが起きるまで待つから。」
といい上を見上げる。
『改めて見ると異様に天井が高いな。出てくる魔物はクモやトカゲやコウモリが多いし、上にも注意しろってことかな。』
と勝手に思いふけっていると、
「きゃ!」
「「!」」
突然の悲鳴、それと同時に急に気配が現れた。
シエラは剣を構え、俺もセレナを抱えながら剣を構えた。
ちょうど通路を曲がったところ、ここからじゃ見えないが、人数は1……2、3、4、4人か。
一人龍族なせいで、その気配につられてわかりにくいな。
「いって〜。ねえ―――」
聴力を強化して聞き耳をしていたが、向こうの声が途絶えた。
おそらくこちらに気づき、魔法か何かで遮断したのだろう。
しばらくして
「あ、あの……」
出て来たのは黒髪のエルフだった。
「申し訳ないんですが、ゲートまで送っていただけませんか。」
「「……」」
「そんな警戒しないでください。危害は加えませんので!」
「……えっと、どちら様ですか?」
「セレナ?!」
セレナ急に声を出すから驚いてしまった。
とうの本人は状況が状況なため、顔を真っ赤にしながら聞いていた。
「改めてまして、私はミヨリです。」
エルフで黒髪の女
「俺は……えっと、レオだ!よろしく。」
狐の獣人の男
「メリー。」
翼や尻尾の生えた生粋の龍族の女
「カケルです。よろしくお願いします。」
珍しく魔力を持っていない人族の男
異種族の三人は強い、今の俺たちと同じぐらいに。
四人とも嘘、おそらく偽名を使っているが、とやかくは聞かないでおこう。
転移トラップにわざと引っかかって、ここに現れたらしいし。
これは本当だ。わざわざ飛んだ先がわからない転移トラップで俺たちの側にくる必要がない。
それと、ミヨリやカイトといった日本人に似た名前はこの世界では珍しい程度のものだ。孤児院でもタロウがいたし。
「何でわざと引っかかるんだ。」
「それが……ここの徘徊ボスが前からの攻撃が無効な魔物なんです。」
「無効!?そんな魔物が……」
「あ、でも方向転換するのが遅くて、左右や後ろからの攻撃に弱いのでそこをつけば大丈夫です。」
「なんだ、そうなのか。ん?でも対処法をしてってれば倒せるんじゃないか?」
「それが……一本道にいるときに襲われたもので……」
「あ―――なるほど。」
と、ここでシエラが話に入ってきた。
「確か、ここの徘徊ボスは『ウォールガイ』よね。」
「あ、はいそうです。」
「前からの飲み込まれると、身ぐるみを剥がされて、魔力をを根こそぎ奪われて、魔物を呼び寄せる。わよね。」
「はい。」
「ちょっとまて。それもそれでえげつねぇ魔物じゃねえか。」
「だから徘徊ボスって言われてるんじゃないかしら。」
「だとしても強すぎるだろ。」
「大丈夫かどうかわかりませんが、脱がされたものは近くに出てくるらしいし、ウォールガイ自体には対して殺傷能力がありませんから。」
「……」
今のところ、俺の一番の脅威認定は『ウォールガイ』になった。