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余裕とは言ったが、戦闘が余裕であって、どんどん次の階層へ行けるとは限らない。
サクサク進むために各階層の地図を買うため、ギルドへ向かったが、売り切れでいた。
印刷機がまだ無いこの世界では、地図の量産は難しい。
それと、昨日の夜、地図がたくさん売れたのも原因だ。
『俺たちも、昨日帰る前に買っとけばよかったな。うっかりしていた。まだ、前世の感覚が残っていたか。』
現在俺たち三人は図書館に来て、本を読んでいる。
始めは、「図書館になら、あまりがあるかも。なくても、元になったものはあるはず。見てくといい。」とギルドで言われたから来てみたが、あまりはなく、元も盗まれたようだった。
一日で五階層まではいけるだろうと思ったが、中にいろんな技術書やスキルについての本やら、魔物の倒し方の本などなど……目を引くものがあった。
今はスキルの本を読んでいる。
知っているような武器のスキルもあるが
『銃術?この世界に銃があるのか?それならもっと普及し……』
巨大な岩を持てるほど強くなれる身体強化、火、水、氷、風、雷、大地、光、闇……etcを操れる魔法、木を貫通するほど強い矢
『……ていなくてもおかしくはないか。普通が強いし。』
そのまま、飛ばし飛ばしで読んでいくと、
『大罪スキル』人の七つの欲がもたらす七種類のスキル。
同名のスキルであっても、効果は持ち主によって異なる。
また、七種類あるだけであり、同名のスキルを持つものが複数いることもある。
一覧
「傲慢」「嫉妬」「憤怒」「怠惰」「強欲」「暴食」「色欲」
『なかなか面白いそうな、スキルもあるんだな。それに、同じスキルでも、効果が違うなんて。』
例えば、傲慢。
ただ単に、プライドが高い人が持っていて、なんにも効果がいない場合もあれば、プライドをけなされると強くなったり、逆に他人をけなすと優位になったり、いろいろだ。
他にも、特殊スキルに分けられる魔法は希少性が重要であり、魔法の組み合わせや特性の変化で再現可能な魔法は特殊スキルに当たらない。
俺の幻影魔法や霧魔法なんかが普通のスキルになっている理由だ。
もちろん例外もあり、魔法が受け継がれる可能性がある場合、特殊スキルのようだ。
毒魔法がその例。
ただそれでも、突然毒魔法が使える人が現れたりするから、スキルの判別は奥が深いとか……
干渉魔法と擬似神眼が書かれてなかったことに疑問を感じたが、知らなかったんだろう。スキルを全て知るなんて、神じゃなきゃ分からない。
俺の残りの『魔の支配』『虚飾ノ影』は乗っており、『龍の生命力』は半龍族の人が、『龍化』『龍装』は龍族が持つ特殊スキルのようだ。
『二人と合流するか。』
「シエラ。……ん?セレナはどうした。」
「レイ……」
「……どうしたんだ。」
「ちょっと、見てもらいたいものが……」
そう見せられたのは、魔物の倒し方の本。
ページは「魔物―――悪魔系魔物の倒し方。」
「っ……ちょっといいか。」
シエラからもらった本をページを読み進めていく。
『悪魔』
異界より現れたとされ、我々とは別種の魔法を使う。
コウモリのような羽、角、細い尻尾が特徴。
通常の攻撃、魔法ではダメージが少ないが、聖魔法や銀製の武器は有効。
人に取り憑くとされ、取り憑かれたものは力が上がり凶暴になる。
ダンジョン外で悪魔系の魔物が現れた例は少ない。
『やっぱり、俺の他に悪魔いるんだな。だが……』
「ねえ、レイって……魔物なの?」
「…………」
シエラの質問に即答できなかった。
以前、シエラが言っていた。
俺を回復させるのが難しい。と、
書かれていることが本当なら、弱点である聖魔法で俺を回復するのが難しいはずだ。
俺自身、俺がなんなのかわからない。ただ、
「……俺は俺だ。生まれた時そうだ。魔物かどうかなんてわからない……」
「……ごめんなさい、変なことを聞いて。」
「いいさ。俺も、少しだけ悪魔についてしれたから。」
「あ、いた!それにレイも。二人とも何読んでるの?」
「それは、えっと、だな―――」
「魔物の倒し方を読んでいたのよ。ほら、ダンジョンに入るんだし、私たちが知らない魔物も現れるかもしれないから。」
「あ、なるほど。ねえ、それよりも見て!この本。」
セレナが見せたのはお菓子の作り方が書かれた本。
甘いもの好きな、セレナらしいものだ。
「これ、作ってみない?材料あるし。」
「いいわね。じゃあ、この本を借りましょ。」
シエラに魔物かどうかと疑われたが、悪魔について少しでもしれたから、まあ、よしとしよう。
それにダンジョンなら午後から行っても夜には五階につけるだろう。