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「すいませんでした。」
人が持てる魔力の限界は自然に回復する量+その1/2と言われている。
それを超えると魔力酔いと呼ばれる状態となり、気分が悪くなったり、態度によっては立っているのも不可能になるほど具合が悪くなる。
が、時間と共に魔力が抜けて、最終的に自然に回復分の魔力になる。1/2はあくまでなんともない量だ。
二人は、元々の酔いもあっただろうが、そこに魔力酔いが加わって吐いたのだろう。
「大丈夫だ。まあ、なんだ、さっき力が湧いてくる感覚が身体強化されている状態だ。何度も練習した方がいい。」
「じゃあ、さっそく。」
吐いたことで酔いが覚めた二人は、試しに身体強化をした。
「おお……あの、もう一度腕相撲をしていただけないでしょうか。」
「いいぞ。」
「じゃあ、行きます。」
力がついたら、それを試したくなるのは当然のこと。
「ふん!」
「!」
『身体強化して、素の俺と同じぐらいか!』
「やるな。だが!」
「っ、動か……ない……」
「いいか、身体強化ってのは、元が強ければ強いほど恩恵を受ける。頑張って体を鍛えれば、いつか勝てるかもな。はい。」
「だはぁ……はぁ、はぁ、強いんですね。……とと、」
「身体強化は魔力を消費する。消費しつづければ当然空になるし、空になれば体がだるくなる。慣れれば消費する魔力が少なくなるから、頑張れ。」
「は、はい。」
ハルクの方も、俺が勝った。
消費する魔力が少なくなると言ったが、単純に効率が良くなって少なくなるって意味だ。
と、そうこうしていると
「お!面白そうなことしてんな。」
アギトが来た。
「腕相撲か。次は俺とどうだ。」
そう言っている割には、もう構えている。
断る理由もないので、腕を組む。
「3、2、1、始め!」
グッ
『二割ぐらいか。手加減されてんのか?』
「案外やるな。じゃあ、ちょっと本気で行くぞ。」
「っ!」
ドッ!
ミシ
『五割……いや、どんどん力が上がっていく!』
ミシミシミシ……バキ!
「あ」「お」
二人の力に耐えられずテーブルが壊れてしまった。
「いやー、まさかテーブルが壊れるとは思わなかった。それにしても、お前、なかなかやるな。名前は?」
「レイだ。」
「レイか。ま、よろしくな。」
「ああ。」
いきなり始めた腕相撲だが、一つ疑問が生まれた。
『なぜ、アギトとアキラたちとでは、こんなにも力の差が出るんだ?正直いって、多少筋肉がついただけで、これだけ差が出るのおかしい。……もしかして、ゲームで言う『レベル』てのがあるのか?俺にはスキルにレベルが見えるし、他の人も、異能スキルにレベルがあることを知っているから、もしかしたら本当に……』
もし『レベル』がある。もしくはレベルに近い何かがあるのなら、強くなるために必要だ。
RPGとかなら魔物を倒すことで『経験値』や『XP』を獲得出来るんだが、いままで魔物を倒してきたが、実感がないからわからない。
『そういえば、アギトが「二十階層のボスは硬い」て言ってたな。どんなやつかはわからないが、ダンジョンに潜り始めた時と、数年後とで比較ができそうだな。一ヶ月後までに二十階層に行くのが、まずの目標とするか。』
正直言って、十階二十階の魔物は雑魚だと思っている。
一ヶ月で行くなんて、簡単だろう。
「ちょっといいかしら?」
「あ、はい。なんでしょうか。」
「そう畏まらなくていいわ。私はシエラ。あなたは?」
「あ、えの……アルスって言います。」
「そう、よろしくね、アルス。」
「あ、よ、よろしくお願いします。えっと、シエラ……さん?」
「ええ、よらしくね。」
「は、はい。」
「そういえば、アルスは聖魔法を使っていたわね。」
「はい。一応ですけど……」
「実は私も聖魔法が使えるの。よかったら教えてあげよっか。」
「!ぜひお願いします!」
「まず、アルスが聖魔法を使う時、近くにかけよって魔法を使っていたわね。あれ、近づかなくても出来るわよ。」
「え?でも、それじゃあ―――」
「普通なら効果が落ちちゃうわ。実は、聖魔法の回復は治すと同時に浄化をしているの。魔法を飛ばして回復させようとすると、空気が浄化されながら飛んでいくから、効果が落ちるのよ。」
「そ、そうだったんですか。ん?じゃあ、どうやって近づかずに魔法を打つんですか。」
「それはね、シールドを使うの。こうやって―――」
シエラが手を開くと空中に氷の球体が現れた。
通常、シールドは薄青水色の半透明をした膜のようなものが現れる。
「今は見えやすいように氷で作ってるけど、この氷がシールドだと思ってね。それで―――」
「中に聖魔法を入れるんですね!あ、す、すいません。」
「ふふ、正解よ。魔法を打っても空気に浄化されるなら、空気に触れないようにすれば良い。これなら、魔法の妨害や敵に当たっても、ある程度対策になるわ。でも、ちゃんと当たる寸前にはシールドを解除すること。解除しなかったらそのままぶつかっちゃうから。」
「あ、確かに。……もしかして……」
「初めてやった時は何度かぶつけちゃったわ。」
「っ……ごめんなさい。失敗した時考えたら、ちょっと笑えてきちゃって。」
「失敗して笑って、成功して喜んべるのが一番いいことよ。あ、そうそう。聖魔法には『プロテクト』ていう、シールドと似た魔法があるの。シールドよりも硬くて、長持ちする魔法なんだけど、これをさっき言ったシールドの代わりに使う方法があるのを。当たる直前で、プロテクトを回復させる人に移せば、一石二鳥よ。」
「あの、プロテクトってシールドと同じで、壁みたいに張るんじゃ無いんですか?」
「そうゆう風に張れるけど、人を包むようにも張れるわ。」
「そんな使い方があったんですか?!」
「ええ。もしかして、本に書いてあることしか知らないの。」
「はい。」
本とは、魔法が使えるよう作られた指導書だ。
各属性魔法と、広く知られている時空間魔法や聖魔法の本がある。
書いてあるのは『ファイヤボール』や『ファイヤウォール』など、簡単なものばかり。
聖魔法にいたってはこの魔法がどういった効果があるとしか書かれていない。
「いい、魔法はいろんな可能性があるの。たとえ攻撃ができない聖魔法でもやり方を工夫することは出来る。だから頑張って。」
「はい!」
ちなみに、世間一般の考えでは、聖魔法を塊のように固めて、勢いよく飛ばすことが普通。
凝縮した方が効果が高く、早く打ち出すことで素早く回復をかけることができるため。
戦闘前に、持続的に回復する魔法『リジェネ』をかけるのも常識。
メモ
僧侶 アルス
魔法使い メリー
シーフ サージャ
剣士 アキラ
盾 ハルク
一応名前です