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「多少アクシデントがあったが、基本はこんな感じだ。最後に二十階層のボスには挑むな。攻撃はしてこないが、硬すぎてこっちの武器が刃こぼれする。三日間はその部屋にいることになるからぞ。俺達ですら壊さねえから、ダンジョンにある抜け道を使え。抜け道を使えばボスを倒さずに次へ行ける。流石にどこにあるかは言えねぇが、忠告はしたぞ。」
「そんじゃまあ、新たな仲間を祝って、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
ミノタウロスの後、アギトの話を少し聞いたら、奢りで夕食を食べるようと言われたので、参加している。
この世界では15で成人なので全員にビールが出されたが、乾杯をするだけで、だれも口にしてない。
『前世じゃ二十歳じゃなかったが、初めて飲んだ酒は焼酎だったな。じいちゃんに、ほんのちょっぴりの焼酎を飲まされたっけ。めっちゃ不味かったな。』
「一口だけ飲むか……」
「……じゃあ私も……」
「……私も……」
三人とも一口飲んだ。
「「「苦いし不味い。」」」
「だっははははは!」
俺たちがそういったのを聞いて大笑いしたのはアギトだった。
「初めはみんなそう言うぜ。俺も同じだったしな。ま、大人の味ってことだ。ただ、酒を飲んでも飲まれるんじゃねえぞ。ほどほどに楽しめ。」
一口飲んだだけでもう十分だ。
俺たちが飲んだのをきっかけにみんなチャレンジしていく。
初めてなのに一気飲みしているバカもいる。
飲んだ後、耐性が発動した。
物理耐性や魔法耐性は別として、毒や麻痺などの耐性が発動すると体の内側から外側へ力が働くような感覚がある。
この感覚はあまり気づかないが、俺がアルコールを毒だと思っているから発動したのかもしれない。
「あいつらが気になるのか?」
「そうね。とくにあの子。聖魔法を使い慣れてないみたいだったから。」
聖魔法を使える人は珍しい。
そのため、周りに聖魔法を教えてくれる人がいなかったのだろう。
「魔法を教えたいのか?」
「いいかしら?」
「相手がいいならいいんじゃないか。」
うずうずしているシエラは可愛い。いいものを見れた。
「ちょっといいかしら?」
「あ、はい。なんでしょうか。」
シエラは僧侶と二人で話し始めた。
「あ!あなたは助けていただいたかたですよね。」
「あ、ああ。それよりお前大丈夫か?」
「大丈夫です。問題ありません。腕相撲しましょう。」
「いや酔ってるだろ。」
「はい、いつでもいいですよ。」
「聞いてねぇ……」
一戦ぐらいは別にいいか。
「ふん!……あれ?動かない。ふぬぬぬぬぬ!!!」
「俺とお前じゃ、素が違うからな。」
「ハルク。ちょっと手伝ってくれ。」
「どうした、アキラ。」
アキラというのは今まで青黒髪と呼んでいた奴で、ハルクとはパーティの盾役の名前のようだ。
金髪蒼眼、普通の見た目だ。
「腕相撲手伝ってくれ。」
「わかった。」
一対ニなのはスルーなのね。
てかお前も酔ってるだろ。二人とも顔が赤い。
「うおおおお!う、動かねえ!」
「身体強化してもいいぞ。」
「しんたい……きょうか……なんですか、それ……」
「……は?うそだろ。」
相手が身体強化しているかどうかを知るには、普段との比較か、相手に触れているかのどっちか方法がある。
知ってどうするって程度の話で、互いに手を合わせた時、身体強化していないから、そういうルールだと思っていた。
「はい俺の勝ちだ。てか、本当に身体強化を知らないのか?」
「はい。それってどういう技ですか?」
「…………」
あまりのことに目を覆った。
「お前ら、魔力って知ってる?」
「それはもちろん。魔法を使う上で必要なものです。」
「その魔力で体を強化するのを身体強化って言うんだ。」
「魔力で体を?どうやって?」
「どうやってって、それは、まあ…………なんか、こぉ、魔力を全身に行き渡らせる感じでだな。」
「「???」」
俺自身感覚で使っていたため、具体的なやり方を説明できない。
『一体どうすれば……そうだ!』
「もう一回腕相撲するぞ。」
「「はい!」」
『元気のあるいい返事だ。酔って入るがな。』
「いいか、俺の腕に意識を向けてろよ。」
「それが、身体強化という技の重要なことなんですね。わかりました。」
「……」
右腕がアキラ、左腕がハルクと組んでいる。
周りから見たら異様な光景だし、二人とも、まだ身体強化が技だと思っているようだ。
「まあいい、3、2、1……」
「「ふん!」」
二人が踏ん張っている時に、魔力を流す。
通常、他人に魔力を流したり譲渡する場合は、ものすごく魔力を消費する割には全く渡せてないが、この際いいだろう。
すると、
「なん……だ……」
「……力が……湧いてくる?……」
「今お前たちは、身体強化している状態だ。この感覚を覚えろ。」
干渉魔法により、流した魔力で二人に身体強化をさせる。
「これを使えば『『うっぷ』』やべ、やりすぎた―――」
「「オロロロロロロ〜」」
何事にもやりすぎは良くない