132
適当に昼食をすませ、集合時間まで待ったが、明らかに人が少ない。
さらに三十分ほど待たされたが、それでも数名しか集まらなかった。
「ただ遅いのか……それとも待ちきれず先は入ったか……仕方ない。入る前に、お前らに渡しておきたいものがある。」
そう言ってアギトが一人づつカードのようなものを渡していった。
「今お前らに渡したのは、今自分が何階まで行けたわかる、『ダンジョンカード』てやつだ。普通はギルドで貰うやつだが、今回は特別に渡したく。冒険者カードに重ねて魔力ながしゃ、もう自分のもんだ。ちゃんと持っておけよ。」
「ま、選別はこれぐらいだ。じゃあ、いくぞ!」
アギトに誘導されながら、ぞろぞろとダンジョンへ入っていった。
言われた通り草原が広がっていたが、入った周りは人がたくさんいた。
ところどころ家を建てようといているように見える。
「ようこそ、ダイナのダンジョンへ。といっても、一階層は比較的安全だから、それほど気を配らなくていいぜ。ここはセーフゾーンが広いから屋台とかが立つ予定の場所だ。一時期ダンジョンに入らなくなった時、ここら辺のもの全部外へ出ちまって、今再開しようとしてるところだな。ここで買い物をするのはお勧めしないがな。
と、ここにいても仕方ない、先に行くぞ。」
入り口から移動して、草原が広がっている場所まで来た。
といっても冒険者がちらほら見えるが、戦っている様子は見当たらない。
「ここいらでいいだろう。さっきからちょくちょく見かけていたが、ここにいるのはウサギだ。こっから少し見えるが、向こう側に森があって、そこにはゴブリンがいる。」
「あら、何かしら。撫でてほしいの?」
シエラの近くにウサギが数匹集まり、それを撫でた。
「そこの獣人を見た通り、ここウサギはひとなっこい魔物だ。追いかけたら当然逃げるがな。」
「「「おお〜」」」
周りの参加者もシエラ達に続いてウサギを撫でていく。
「ちょっと借りるぞ。―――よし、お前らそなへんにしておけ。」
アギトが集まっているウサギの一匹の首根っこを掴み持ち上げる。
「こいつはこんななりをしてるが一応魔物だ。倒せばアイテムをドロップする。」
「あの、いつも僕たちが見ているウサギと変わりないように見えるんですが……」
「ああ、たとえ姿形が外のやつと似ていても、中にいて倒したらドロップするから魔物だ。んで『グサ』あ、おい!」
「うわぁぁぁ!」
話の途中で参加者の一人がウサギを刺し殺すと、さっきまで戯れてた周りのウサギ達が一斉に殺した奴に襲いかかった。
「いでででで!噛むな!離れろ!」
襲われた奴はジタバタとしてウサギを振り解き、なんとかなった。
「くそ!ぶった切ってやる!」
「落ち着け。」
「はあ?!あのウサギ、俺のこと噛みやがったんだぞ!やられっぱなしじゃ―――」
「いいから落ち着け!」
「…お、おお……」
「話を戻すぞ。まあ、なんだ。さっき見た通りこのウサギは仲間意識が強く、目の前で刺し殺そうもんなら一斉に襲われる。それと、ダンジョンの中には食いもんをドロップする魔物がいる。このウサギのようにな。ただし普通に殺すと肉をドロップする確率、みんなドロップ率と呼んでるが、それが悪い。ダンジョンの魔物には特定の殺し方で目当てのアイテムをドロップさせることができる。ウサギの場合はこんな風に―――」
するとアギトが持っているウサギの首を絞め、殺した。
死んだウサギは光に包まれ、肉が残った。
「首を絞めて殺すと肉が落ちやすくなる。十回中九回は肉が落ちるな。これだと襲われずに肉が回収できるぞ。酷いかもしれないが、今からお前たちには一人一つ、このウサギ肉を持ってきてもらう。ちゃんと自分の手で取ってこいよ。じゃあ、一時解散だ。」
「「「…………」」」
『全員無言か。それも仕方ないな。目の前でさっきまで可愛がってたウサギを絞め殺されたんだから。さて、とっととウサギ肉集めるか。』
各々のがウサギを捕まえていく。
「行くぞ……3……2……1……ふん!」
掛け声に合わせてウサギを絞めている五人組は、さっき見ているのと変わらないと言っていた青みがかった黒髪の奴のグループだ。
どうやら全員成功したようだ。
「待ちやがれ!」
ウサギを追っているのはさっき襲われた奴だ。
ウサギを追い回しては、捕まえようとしていた人のウサギが逃げ出して迷惑している。
本人はウサギを捕まえ次第、絞め殺しているので、周りのウサギが逃げるわ、減るわで本当に迷惑だ。
セレナとシエラはなるべく苦しまないよう、力いっぱい絞めていた。
と、ちょうどよく近くにウサギが来た。
「悪いな。ウサギ肉は初めて食べるが、美味しくいただくよ。」
ポキ
トサ
『どうやら首を折って殺しても襲われないらしいな。もしかして外傷があると襲われるのか?まあいい、ドロップは―――』
「どう見ても肉では無いな。運がいいのやら悪いのやら。」
二回目
毛皮 二回連続?
三回目
毛皮 二度あることは三度あるってか?
「どお、取れた?」
「三回連続ダメだった。」
「え……ちゃんとやったの?」
「うんまあ、こんなふうに―――」
ポキ
「首の骨を折ってやってる。とと、やっと肉が出たか。」
「おお、やったね。でも、絞めては無いわね。」
「できる限り、苦しませて殺すことを避けたいからな。やり方はどうであれ肉は出たんだから、戻ろうか。」
月一投稿絶対なので、投稿しました。
四月十日から月ニ投稿、できれば週一投稿していきます。