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昨日は昨日でジラグさんに会えて良かったが、本当の目的はダンジョンだ。
目的といってもいろんなところを周れるためのお金と、ダンジョンがどんなものなのか見ておきたいだけだが。
「流石に人が多いわね。それにいろんな種族も。」
「人族、獣人、ドワーフ、少ないながらエルフもいるみたいだな。」
『それと気配的にだが、龍人がいるっぽいな。こことは別の所だが。』
ダイナには入り口が四つある。
入った場所によって出る所が変わるが、どこも一階層へ繋がっている。
位置的に俺らとは別のところから入るみたいだが、もしかしたらダンジョン内で出会うかもしれないな。
そんなことより俺が気になったのは魂のおかしな奴がいることだ。
魂を見ようとすると、真っ黒な空間の中に個人個人の体格を型どった白いモヤとモヤの中の核だけの世界になる。
ただし厚い壁越しでは見えないし、何人重なっているかわからないが。
核は便宜上そう言っているだけだが、人も魔物も同じように見えており、死ぬとモヤと核が上へ行きやがて消える。
魂だけで種族を判断するのは至難の業で、髪の毛や尻尾の毛なんかは当然見えず、輪郭のはっきりしていないモヤなのでエルフの長耳や獣人の尻尾を見分けなければならない。
あくまでこれが普通なのだが、入り口前にいる冒険者の中に腕のモヤが薄い人や、無い人がいるのだ。
どちらもそこの部分が義手、もしくは無いままになっている。
なんで義手があるのかはわからないが……
あくまで推測だが、腕を切られても腕の部分の魂は本体にくっついており、時間と共に抜けていくのだろう。
魂も変化するものなのだろうか。
それと、今、魂を見ているときと、スピサでやったような体から魂を抜け出した時、見ているのは違う。
スピサの時ははっきりと自分の魂が見えたし、見えているのがいつも見ている普通の景色で、壁なんかを貫通できていた。
ま、どちらも普通のことではないな。
「何見てるの?」
「ああ、いや、なんでもない。」
「はい。」
「ん?なんだこれ。」
「え?だって、さっきからあれ見てたから興味あるのかなって思ったんだけど……」
シエラに指さされた方を見るとさっきまで魂を見ていた方だった。
そしてその先に張り紙があった。
魂を見ている時は視界に入ったものしか見られないので、魂を見ていたのに、奥の張り紙を見ていると勘違いしたのだろう。
はたから見たら魂を見ているなんて分からないし、しょうがないか。
今度から気をつけよう。
シエラから貰ったものを見ると、『ダンジョン攻略のための基礎知識講習会』とあった。
場所は近くで日時は今日であと少しで始まる予定
「行く?」
「レイが行くならついてくよ。」
「私はてっきり行く気満々だとばかり思ってたわ。」
シエラ……微笑んでるけど尻尾がしょんぼりしてるぞ。
「……せっかくシエラが持ってきてくれたんだし、行こうか。」
「この集まりって参加する人達だったのね。」
「今日は講習会に来てくれて感謝する!」
俺達が来た途端、そう大きな声が響いた。
「俺はBランクパーティ『紅狼』のリーダー、アギトだ。よろしく。」
「(おお、今一番Aランクに近いと言われる『紅狼』じゃん!)」
「(本物だ……)」
聞き耳を立てるとそんな会話が聞こえた。
カイザー達に聞いた話しだが、冒険者のランクには個人個人のものと、パーティのもので分かれている。
パーティメンバー全員がBランク冒険者でも、パーティと考えるとAランクになる等。
カイザー達がその例だ。
個人でもパーティでもAランクは憧れの存在。
Sランクパーティには引けを取るが彼らも十分有名なのだろう。
個人でSランクのような人外化物よりも現実的なため、皆A、Sランクのパーティになろうとしている。
「んん゛……今日ここに集まったのはダンジョンに初めて入るもの、またはダンジョンに入ってまだ日が浅いもの達だと思う。冒険者は自己責任だ。だが、だからといってダンジョンにうとい新人をみすみす殺すのは惜しみない。今日一日、ダンジョンの基礎について付き合ってもらう。午前は話をして、午後からは実際に潜っていくぞ。」
アギトの話はヘンシム村で聞いたのとほぼ同じだったが、ダイナがどんなところかは新しい情報だった。
ダイナは一階層から十階層までが草原で、それ以降、十階層ごとに環境が変わる。
そして十階層ごとに次の階層への道を守るボスと、五階層ごとに同じく道を守る中ボスがおり、基本倒さなければ次へはいけない。
ボス、中ボスともに、その階層を探索してボスを見つけて倒すそうだ。
そして転移門はボスの階層の入り口と倒した後の次の階層の入り口、中ボスも同じようになっているらしい。
また、ボスとは違い五階層ごとにをうろちょろしている徘徊ボスがいるから気をつけるようにと言われた。
他にも、階層入り口付近やボス部屋前は魔物が寄り付かないセーフゾーンと呼ばれるようになっており、よく他の冒険者がテントを張っている。が、あくまで寄り付かないだけであってそこへ逃げれば普通に襲われることを聞いた。
そして嵐。
ダンジョンではごく稀に魔素が乱れ、数時間〜数日、異常な環境へ変貌する。
広く穏やかなものや局地的に激しいもの、様々だが近づかないことをお勧めされた。
他にも、ドロップするのが一つだけではないこと、罠は迷路になっているところ以外ほとんどないこと、通常とは違う変異種がいること、何故か宝箱がぽつんと置いてあり、中からはポーションや武器、魔物が飛び出てくることもあることを知った。
宝箱から魔物ってミ●ックかよと思ったが、実際にミミックと呼ばれるいるそうだ……
一応、魔物を倒せば中に入っていたものもゲットできるらしい。ところどころ優しいダンジョンだな。
「長々と話してしまったが次で最後だ。こっからギルドへ向かい、さらに奥へ行ったところに図書館がある。メイリーズにある図書館だ、ダンジョンに出てくる魔物のことや、様々なスキルに関する本もある。役立ててくれ。それと、もし次への道がわからないようだったら、ギルドで地図を買うといい。多少値を張るが、ギルドからのは信用できるもんだからな。以上で話は終わりだ、昼食ってまたここに集合するように。大体一時ぐらいでだ。」
うん……だいぶ話長かったな……