130
「三人とも冒険者か。それで、わしになんのようじゃ?裏から来たんじゃ、それ相応の重大な何かがあるんじゃろう。な?」
『あ、やっぱり地雷踏んでたか……』
そりゃ裏から来られちゃ誰でも頭にきますわな。
「「「……すいませんでした。」」」
「何を謝る必要がある。早く話せ。」
「……実は俺の剣が折れてしまって……新しく剣を打ってもらいたく……」
「ほお?剣を。冒険者にとって武器は命を預けているようなもんだ。それが折れたから、わしに新しく剣を打ってもらいたいと。」
「……はい。」
「おぬしの気持ちはようわかるぞ。武器が無ければ心許ないしのお。じゃが!それと、人として礼儀がなっとらんのは別だ。道を聞くのはまだしも、わしを訪ねてきたのに何故家の方へ訪ねる!」
「「「すいませんでした。」」」
「はぁ、全く何を考えちょるやら。……」
「「「………」」」
「何をしとる、早く武器を見せんか。特別に見てやる。」
「「「は、はい!」」」
俺は腰につけた片方としまっておいたもう片方を
シエラは腰につけた剣を
セレナは
「ああ、弓はええ。わしが見ても分からん。」
セレナのは別のところでいいものを見つけよう。
俺とシエラの剣を出し終え、しばらく見た後
「おぬし、この双剣どこで手に入れた。」
「それは、ヴェンじ……ヴェルンていう冒険者から、街を出るときに譲り受けたものです。」
「ヴェルンか……懐かしい名前だ。なんだ、お前はあいつの子供か!それならそうと言え。」
「いや、俺はヴェン爺の子供じゃなくて……」
「孫か!どのみち一緒じゃ。」
「いやだから……」
誤解が誤解を招いてしまった……
「すまん、懐かしい名前だったもんでつい。」
話を聞くと、ジラグさんがまだ店を構えたばかりの頃、ヴェン爺たちが店を贔屓してくれたらしい。
いくら腕がたっても店はできたばかり、剣を打ってればいいと思っていたが生活が大変になっていた時、当時注目されていたヴェン爺たちのおかげで今の地位になったらしい。
もちろん、その地位にあった実力を持ってだ。
「これをあいつに渡した武器だ。冒険者だからどっかでのたれ死んだと思っとったが……そうか、生きとったか。だが悪い、今からおぬしの剣を打つことはできん、わしにも家族がいるからの。そのかわり変えの双剣をわたす。それとこの双剣を預かってもいいか?」
「ああ、助かる。」
ヴェン爺たちに何から何まで世話をされているようだ。
ジラグさんの昔話を聞いてるとなんだかむず痒かった。
流石にずっと話をしているわけにも行かないので、次にシエラの武器を見てもらったが……
「これは……グランってドワーフが作った剣か?」
「!はい、そうです。」
ジラグさん、いろんな人と関係がありますね。
「やはりな。こんなヘンテコな、武器と呼べるかも怪しいもんを作るのはあいつぐらいしかいねぇからな。……もしや、あいつも?」
「私達が街を出たときはいました。」
「今どこにいるかは分からないと。全くどこほっつき歩いてるんだか……まあいい、おぬしはこれをちゃんと扱えるのか?」
俺に双剣をどこで手に入れたか聞いた時よりも、気迫のある質問。
それにシエラは
「はい。」
とだけ答えた。
「そうか。今日はこれぐらいで終わりじゃ。わしは明日から一週間ほど旅行に行くからの。双剣は下じゃついてこい。」
「あの!ジラグさんとグランさんの関係を聞いてもよろしいですか?」
「……あいつはわしの元弟子じゃ。腕だけは確かじゃが、ダンジョンから出る訳のわからんもんに惹かれて似たようなもんを作ろうとするバカもんだがな。」
「私はその訳の分からないものをちゃんと武器として使えています。」
「お主にとってはな。武器は使える者がいなければただの鉄屑も同然じゃ。」
「お弟子さんの打った武器を嫌っているんですか。」
「いいや。おぬしがそれを使えるならそれは武器じゃ。そしてわしら鍛治職人は武器を作ったり直したりする。ただそれだけじゃ。そいつが武器である以上わしらはわしらの仕事をする。ほれ、下に行くぞ。」
ジラグさんとグランさん……元弟子って言ってるあたり、何かあったんだろう。
下に行き変えの双剣を受け取る。
やや刀身が長いがしっくりくる感じだ。
「おぬしらダンジョンに行くんじゃろ。それなら、鉱石や強い魔物の素材を換金せずにとっといてくれ。鉱石はいくらあっても困らんから、わしが買い取る。素材も強い魔物のものならその分剣も強くできる。」
「わかった。」
「そうじゃ、言い忘れった。一ヶ月後ぐらいに、もう一度来てくれ。武器の調整する。それからさらに一週間後ぐらいにお前さんたちの武器ができるじゃろ。」
「……ギルドで聞いた時は何ヶ月も後だと……」
「手入れだけなら弟子でもできる。依頼が多いのは変わらんが……この剣に免じて早めに仕上げたる。」
「ありがとうございます。」
一ヶ月でどこまでいけるやら